新貝さん、8年ぶりの来店

2007/11/3<土>

久しぶりの御客さまがやって来た。
テーブルに着き、シングルモルトのアードベッグを注文。
ストレートで、ぐびりと美味しそうに飲む。
たしかに、見覚えがある。
えーと、誰だったかな?
プロレスラーの川田に似ている。
「マスター、憶えてますか?」

頭の中で、ぐるぐると反芻。
えーとえーと、此処まで出ているのだが。
「マスター、あれから8年ぐらい経ちますかね」
そう、それくらいは経っているはず。
「今は広島にいます。昔は福岡だったのですけど」
もうほとんど、口の中まで、名前が来ている。

「マスター、ヒントは村上」
「分った、新貝さんだ」
「よかった、思い出してくれて」
すると、一緒にきてくれた女性、マリンさん。
「マスター、此処まで、タクシーで来たの。
もし、店が閉まってたら、また引き返せばいいからって」
「もし、マスターの店、無くなってたら、どうしようかって心配しました」
「それは嬉しいな、忘れずに来てくれて。
それよか、度々来てくれないと、俺、この世から消えちゃうよ。もう還暦だから」
「還暦ですか?驚きました。でも、そんなには見えませんよ」

「村上さんはどうしてる?」
「彼は結婚して、京都で仕事をしてます。子供もいますよ」
新貝さんと村上さんとは、大学生の頃からの付き合い。
私の店には、新貝さん達、福岡の仲間が大勢集まった。
当時、新貝さんは上智大学の優秀な学生だった。
やがて、卒業。
得意な語学を生かし、いろいろな職業に就く。

現在は外国企業に就職をし、全世界を駆け巡っているようだ。
1年の6割以上は海外出張らしい。
8年以上の歳月、新貝さんも風格が出てきた。
やはり、若者、仕事で人間が磨かれてくるのだろう。
ピーポッポの仲間達との、楽しい夕べ、時間が経つのも早い。
「マスター、東京に来た時は、ちょくちょく寄りますから、よろしくお願いします」
新貝さんとマリンさんは、爽やかに、ショットバー・ピーポッポをあとにした。