バスクのリキュール・イザラと星

フランスはピレネー山脈の麓のバイヨンヌ地方に、IZARRA・JAUNE(イザラ・ジョーヌ)という黄金に輝くお酒があります。
フランスのシャルトリューズ・ジョーヌに似た、アルコール40%、エキス分21.5%のハーブリキュールです。
イザラには黄色(izarra jaune)と緑色(izarra verte)の2種類があります。

イザラ・イエローとかイザラ・グリーンと呼ばれたりします。
遡ること1835年に、バスク地方の薬剤師であるジョセフ・グラトー(Joseph Grattau)が開発し発売しました。
ピレネー地方で採れるハーブは勿論のこと、セイロンのサフランやフランスやイタリアで採取された、
エルダーベリー(スイカズラ)の花液など、32種類のハーブを豊富に含んでいます。

さらに、それらをベースにした混成酒を蒸留し、バ・アルマニャック地区のクレ・デ・デューク蒸留所産アルマニャックを添加し、
蜂蜜を加えサフランで黄金色に染め上げオーク樽で熟成します。
IZARRAとはバスク地方の言葉で星をあらわします。

このリキュールは、スペインからの独立を主張し、独立運動が盛んなバスク地方のバイヨンヌで生産されています。
かつて、フランコ大統領の独裁に抵抗し、勇敢な戦いを挑むバスクの戦士に共鳴した、アーネスト・ヘミングウェイも愛飲しました。
グラスに注がれた酒は黄金色に輝き、深いハーブの匂いが辺りに漂う。
口に含むと華やかに広がる芳香に陶然とします。
そして豊潤な味を湛える黄金色のリキュールが、明日への力を漲らせてくれます。

バスク地方は日本とも縁があります。
この地方は中世から、スペイン西部にある聖地・サンチアゴ・デ・コンポステーラへ至る巡礼の道が続きます。
その峠道は急峻で数百キロに及ぶ巡礼の道最大の難所で、これまでにたくさんの遭難者も出ました。

その地にフランシスコ・デ・ザビエル(Francisco de Xavier・1506年頃 - 1552年)が生まれ育ったザビエル城があります。
ザビエルはイエズス会を創設後、日本へ2年半滞在しキリスト教を布教しました。
さらにその厳しい峠越えを、酒を飲みながら大騒ぎをしながら、
バスでピレネーの峠越えをする一行を描いているのが、アーネスト・ヘミングウェイ「日はまた昇る」です。

第二次世界大戦後、パリに流れ着いた若者たちの奔放な生活。
理想も夢も失った自堕落な世代(ロスト・ジェネレーション)の若者たちが、パリからスペインのパンプローナへ向かう。
その灼熱の目的地では、町をあげての情熱的な祝祭(フィエスタ)が繰り広げられていた。

さらにバスクはピカソの超大作「ゲルニカ」の舞台でもある。
1937年4月26日、ドイツ空軍による無差別爆撃によりにより、バスクの小都市・ゲルニカは壊滅し、1600人以上の死者を出した。
その残虐な行為に対する怒りが、この作品を誕生させたのである。
ちなみにベレー帽もバスクが発祥の地です。