私のハイボールHIGHBALL
2010年3月18日

今から20年以上たっているだろうか。
私のお店のお客様が、大好きなハイボールを私に教えてくれた。
それは、たっぷりのシーグラムVOのソーダ割りだった。
彼はその頃、日本の若者を、世界に派遣する財団の国際部長だった。
お酒好きの彼は、現地の視察のために、開発途上国を飛び回っていた。
そして、その帰りの途上、ヨーロッパやアメリカに立ち寄り、バー巡りしていた。

その彼は、日本の赤坂に、お気に入りのバーがあった。
夕靄も漂う頃、スタンバイを終え、鏡に向かい髪に櫛を入れ、
蝶ネクタイをぴしリと決めて、バーコートに身を包む70歳にも届く老バーテンダー。
ぴかぴかに磨かれたバーカウンターの前に立つ。
まだ、開店直後、お客様は誰もいず、バーにはぴーんと張りつめた空気で静寂を増す。
彼はそんな雰囲気の中で、老バーテンダーの作るカクテルを愛していた。

ある日のこと、彼は老バーテンダーにハイボールを注文した。
そして、老バーテンダーが、自信を持って、すーっと彼の前に提供したものが、シーグラムVOで作るハイボールだった。
それは、タンブラーに、たっぷりと入れたシーグラムVOのソーダ割りだった。
私もそのハイボールを作って飲んでみた。
カナディアン・ウイスキーのライトでスムーズな飲み口の中、柔らかく微香が華やぎ、
口の中に含み味わえば、6年以上熟成したウイスキーが、ふくよかに広がる。
その時から、私も決定した。
私の店のハイボールは、60ccのシーグラムVOを、ウィルキンソンのソーダで割り、優しくステアすると。

最近は驚くほどのハイボールブーム。
私たちが若いころは、ハイボールは誰でも知っている定番だった。
しかし、このブームが来るまでは、若い人たちにとって、死語に近い存在に押しやられていた。
だが、サントリーの大キャンペーンが成功し、ハイボールは起死回生の大復活を遂げた。
私の作るハイボール、シーグラムVOのソーダ割りを、ぜひお愉しみ下さい。


シーグラムVOのハイボール¥1000

左は従価税時代の物。ボトルネックにリボンあり。  
右は現在の物。ボトルネックにリボンはなし

カナディアン・ウイスキーのシーグラムVOは、カナダの創業者ジョセフ・E・シーグラム&サンズ社
(Joseph E. Seagram & Sons Inc.)が、自信を持って、1924年に市場に出した傑作です。
それは、創業者ジョセフ・E・シーグラムの愛息トーマスの結婚を祝福して造られたものだった。
VOとは VERY OWNを意味し、シーグラム家による独自の製法により造られたウイスキーであることを示している。
(ジョセフ・E・シーグラム&サンズ社は1857年に、オンタリオ州で創業する。
その後、1928年に買収され、シーグラム社となった。
現在は、1968年に建設されたギムリ蒸留所で、シーグラム社のウイスキーは生産されている。
2000年のこと、、シーグラム社が酒類事業から撤退し、ギムリ蒸留所は、ディアジオ社がオーナーとなった)

現在のVOの原種は、カナダ国内の6蒸留所で生産され、6年以上の熟成を経て、製品化されている。
トウモロコシとライ麦を原料にして、6年熟成したシーグラムVOは、カナディアン・ウイスキーの特徴である、
ライトでスムーズな香りの中に、ふくよかな熟成感が溢れている。

かつて、イギリスの植民地でもあったカナダは、本国の伝統を受け継ぎ、競馬がとても盛んで、サラブレットの大産地でもある。
1836年にはケベック州にも、日本の天皇賞に当たるキングスプレートが創設され、1860年には、クイーンズプレートも誕生した。
シーグラム社もたくさんのサラブレットを保有し、そのソノサラブレットは、カナダの競馬場で大活躍をした。
その時の、騎手の勝負服の色が黒と黄色。
カナダのクラシックレースのキングスプレートを、20回制覇した偉業を称え、
その勝負服の色をデザインして、シーグラムVOのボトルネックのリボンにした。

カナディアン・ウイスキー
(CANADIAN WHISKY)

アメリカの独立戦争の時、独立に批判的なイギリスの農民が、アメリカの北のカナダに移住。
そこで、様々な穀物類を作ったが、生産過剰に陥った。
仕方なく苦肉の策で、余った穀物を使い、製粉所が酒の蒸留を始めた。
やがて、製粉所から、本格的にウイスキーを蒸留する工場へ、転身するところも出現した。
19世紀後半になると、連続式蒸留器が導入され、、ライム麦だけではなく、
トウモロコシも大量に使用する、現在のカナディアン・ウイスキーが誕生する。
さらに、カナダの5大湖周辺や、セントローレンス運河沿いにも工場は拡大した。

やがて、アメリカ合衆国で、天下の悪法と言われる「禁酒法」が発布されるや、
まさに、カナディアン・ウイスキーは、アメリカの酒蔵となり、国境を越えてアメリカに密輸された。
しかし、これを起爆剤に、アメリカにカナディアン・ウイスキーが認知され、確固とした地盤を築いたのだから歴史の皮肉。
「禁酒法」廃止後も、アメリカ全土に、カナディアン・ウイスキーはさらに浸透した。

☆カナディアン・ウイスキーの定義=「穀物を原料を、酵母により発酵し、カナダで蒸留し、最低3年間、小さな樽(180ℓ)で貯蔵したもの」
一般的には、トウモロコシ、ライ麦、大麦麦芽の3原料から造られるが、ライ麦が51%以上あれば、ライ・ウイスキーの表示ができる。

一般的な製法

ライ麦を主体とした、スコッチ・ウイスキーのモルトに当たるフレーバーリング・ウイスキー(Flavoring Whisky)と、
トウモロコシを主体にした、連続蒸留機で蒸留したグレーン・ウイスキーに近いベース・ウイスキー(Base Whisky)をブレンドする。
  • フレーバーリング・ウイスキー(Flavoring Whisky)とは、ライ麦を主原料にして、トウモロコシや大麦麦芽を加えて発酵し、連続蒸留機で蒸留する。
    さらに、単式蒸留機、または、1塔式の連続蒸留機で蒸留して、アルコール分84%の芳香の強いウイスキー原酒を造る。
  • ベース・ウイスキー(Base Whisky)とは、トウモロコシを主原料にして、少量の大麦麦芽で糖化し発酵させ、3塔式の連続蒸留機で蒸留して、
    グレーン・ウイスキー同様に、無味無臭に近い、アルコール分94~95%の、純粋アルコールを造る。
この2種のウイスキーを、180ℓ以下の小樽で熟成したあとブレンドすると、カナディアン・ウイスキーが出来上がる。