バッカスとアイビー


古代ギリシャでは、春と秋に大地の神であり、豊穣の神でもあるディオニソスを祭る、
大小のディオニソスの国家祭典があった。

ギリシャの丘を切り開いて造った、すり鉢型の大大劇場で、悲劇や喜劇が共演された。
エピダウロス劇場は、なんと4万人も収容できたようだ。
そこで、アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスの悲劇や、
アリストパネスの喜劇が上演されたのである。

町の辻つじでは、人々は張りぼてで造った繁殖のシンボルである、
大きな男根をかざし練り歩き、
ディオニソスを装う者は、葡萄の蔦やアイビーに巻かれた大きな杖を持ち、
淫猥な仕種をしながらを触れ回る。
ディオニソスは、その豊かなる活動力と繁殖力により
性的な象徴であるとともに、豊穣の神でもあった。

ディオニソスはバッカッスともいわれ、やがて、酒の神になった。
ディオニソスは、カドモス王の娘、セメレーに、
ゼウスが無理矢理に孕ませた、不倫の子供であった。

地上の人間セメレーを愛してしまったゼウスは稲妻となってセメレのもとに現れた。
嫉妬したゼウスの妻ヘラの策謀ににより、稲妻となって現れたゼウスを見てしまったセメレ、
無残にも焼き殺されてしまう。
しかし、バッカスはセメレの胎内にすでにやどり、亡骸から胎児ととして取り出され、
ゼウスの太腿に埋め込まれ育てられ成長する。
そんな生い立ちのせいか、バッカスはとんでもない乱暴狼藉を働く、暗黒の地底の神になる。

やがて、バッカスの杖に巻かれた蔦は、永遠の若さの象徴となる。
また、バッカスとその仲間達が頭に蔦を巻く事により、
永遠の若さをと精力を得る事ができるものと信じられるようになる。

バッカスが被る蔦は、酒を象徴するシンボルになった。

ローマでは、儀式として、杯の上にアイビーの花輪を乗せて、酒を飲む習慣も生まれた。
なぜなら、アイビーは、お酒の水分を抜き去り、
お酒をより一層純化するとも考えられてていたから。

やがて、酒場と宿屋と娼家をかねた施設の看板もになっていった。

ギリシャ神話では酒と演劇の神ディオニュソスはローマ神話ではバッカス。
ギリシャ神話では天空神ゼウスはローマ神話ではユピテル。
ギリシャ神話ではゼウスの妻ヘラはローマ神話ではユノ。