ぐずついた空模様。
免許を紛失して以来だから、かれこれ5年ぶりくらいか。 明日までが期限なので、やっとのことで更新。 何時もは、期限ぎりぎりの当日だから、まだましな方だ。 終ったのは、3時半前。 まだ時間があるので、富岡八幡まで出かけてみる。
木場を通って、汐見橋を渡れば、もうそこは、門前仲町。 昔ながらの、懐かしい風情の商店が健在、いまだ、頑張っているのは嬉しい。 大きな、八幡さんの門を通ると、左には、下町情緒溢れるお土産屋。 少し、進むと、富岡八幡さまの近くに、居をかまえた、伊能忠敬の銅像。 測量に出かけるときは、全員で八幡様に祈願して、出立したそうだ。
なんと、4.5トンもあると言うから、驚きに尽きる。 相撲と縁の深い八幡様、向かいには、大関の記念碑も鎮座。 境内は平日の4時。 人気もなく、閑散としている。 蝉の声が響き、かえって、静かな境内の静寂を、さらに、増幅している。 手水を打って、心を清める。 階段を上がり、賽銭を投げ入れ、神妙に、2礼2拍手1拝。
大きな石の碑が、木立に抱かれるように聳える。 石碑には、代々の横綱の名前が、深く彫りこまれていた。 まだ、時間に余裕があるので、境内を横切り、裏手から隣の深川不動へ。 下町情緒溢れる、こじんまりした深川不動には、 何処か、来る人を誰でも抱擁してくれるような、親しみを感じる。
何時もなら、青銅の竜神の口から、流れてるはずの水が、止まっている。 隣の賽銭箱には、張り紙がしてあった。 「近頃、心無い賽銭荒らしがいるので、お賽銭は、本殿でお願いします」 こんなだいたいの文意。 たとえ、何人であろうとも、そんな情けなくも、あさましい人間がいることが悲しい。 日本古来、日本人が大切にしている、民間信仰や、民衆のフォークロアを踏みにじる所業。 不動尊の境内で、こんな張り紙を出さなければならないこと自体がせつない。
空には、何時の間にか、暗い曇がおおいはじめた。 参道から、裏道を通って、地下鉄・門前仲町へ抜ける。 小料理屋、割烹、昔ながらの喫茶店が建ち並ぶ小路。 江戸の下町の情緒を偲びながらの、楽しい散策であった。
別に、目的のないドライブ、高速を使わず、ゆっくり、下の道を行く。 聞きなれた道、見覚えのある道、歴史のある街道を行くのは、なかなか趣があって楽しい。 ぶらぶら進むうちに、銀座に到着。 銀座には、若い頃、数年間、働いていた事があり、ついつい、懐かしい思いでがよぎる。 三原橋を渡ると、歌舞伎座の前。 着物姿の女性、玄関前に溢れ華々しい光景。 このところ、歌舞伎もご無沙汰だなと思っているうち、すでに、築地。 そして、今は開かずの勝どき橋を渡って豊洲。 昔の豊洲とは様変わりで吃驚だ。 もともと、豊洲は、石川島播磨の工場地帯。 昔、業界紙の記者をやってい頃、豊洲の石川島播磨へ、取材に出かけたことがある。 雨の薄ら寒い日、道を間違え、正門の反対側に出てしまった。 行けども行けども、高い石塀が続く。 人も通らず、聞くにも聞けず、やっとの思いで正門に辿り付いた。 果てしなく続く、真っ直ぐな道を吹き抜ける、氷雨混じりの強い風。 身体はぐしょぐしょに濡れていた。 今は、再開発されて、マンション郡が建ち並ぶ。 都市の変貌には、目を瞠るものがある。 やがて、お台場の標識も見える。 そして、フェリー桟橋というほ標識も。 左に折れ、真っ直ぐな、殺風景な道を進む。 船から、積み下ろされた、コンテナーの夥しい列が続く。 そして、フェリー桟橋の正面玄関に突き当たった。 右手に折れ、そして、人気のない桟橋に出た。 車を降り、桟橋へ。 大きな貨物船が停泊していた。 空には、次から次へ、数分単位で、離着陸の飛行機が、大きく旋回する。 港の向こうに見える台場には、風力発電の白い大きな羽が、ゆっくり、優雅に回っている。 空は抜けるように高く、日は少し傾き始め、陰も長く、秋の日差し。 空と海と船。 そして、遠くに、都会の高層ビルとのコントラスト。 新しい穴場発見をしたような気分。 フェリー桟橋の景色、なかなかの好印象。 一休みして、お台場へ。 駐車場に車を止め、ぶらり散策。 階段を登り、お台場を見晴らす遊歩道を歩く。 お台場の浮ぶ東京湾の彼方、ビル郡が霞み、空には夕日、黄金に輝く。 港には、屋形船が浮び、提灯に日が灯されている。 海辺の公園では、釣りを楽しむ人たち、デートで語らう人、犬を散歩する人たち。 都会の喧騒を忘れた長閑な風景。 フランスの「自由の女神」の複製の銅像、傾き始めた日に照らされ、優美な姿態が浮き上がる。 夕凪の海からは、柔らかく、磯の香を微かにのせた、風が吹き渡る。 すでに6時を回っている。 公園を後に、隣のアクアシティーで、軽く食事を取る事にした。 2階のイタリアンレストランへ。 喫煙席に通される。 そこは、レストランの建物の外の、お台場を見渡せるテラス。 テラスには、まだお客様は疎ら。 私たちは、一番前の席に通された。 最前列の席には、一組の初老のカップルがいるだけでガラガラ。 しかし、案内された席はすぐ隣。 私は、1席空けて坐らせてもらった。 これから混むかも知れない時間帯。 席をビッシリと詰めて坐らせたい気持は分るが、まだまだ、空席だらけの状態。 席を空けて、坐って頂くのが、サービス業の基本。 席に着き、オーダーをするが、不慣れで、注文した側が心細くなる始末。 すでに、お台場は夕暮れ時。 眼前に広がる海に浮ぶ、屋形船の数も増え、大きな海蛍のように輝いている。 まだ微かに、残光にてらされ、都会のビル郡が、陰影の深いシルエット。 その前に、レインボーブリッジのライトが輝き、薄暮のなか、浮かび上がる。 生ビールのジョッキを手に、生ハムサラダをつまむ 浜風を受けながら、沈む夕陽は感動的な王朝絵巻。 ペペロンチーノのパスタをほおばり、マルガリータピザをつまみながら、すでに、生ビールは3杯。 追加オーダーはソーセージの盛り合わせ。 ピリカラのチョリソーを噛みながら、スプモーニ、ファジーネーブルを飲む。 フルーツ系のカクテルは、何処か、心をほっと和ましてくれる。 すでに、日は完全に落ち、海には、無数の屋形船が光る。 レインボーブリッジの照明は、耀きを増し、きらきら輝く。 思いがけない、お台場の散策。 何気なく来た場所。 素敵な感動を味わい、今日は一日楽しい思いをさせていただき、まずは、感謝! これから、地元に帰って、大いに飲みなおそう。 酒が飲める人生!神様に感謝!感謝!
ゆっくり、朝の目覚め。 今日は出かける予定は無いのだが。 でも、何処に出かけるかということになり、江ノ島へ。 時間はすでに2時半。 イェローハットで用事を済ませ、首都高に乗ったのは、すでに3時。 荒川沿いの湾岸道を飛ばし、しばらく行くと、両国の国技館が左手に見える。 お台場の辺りに到着した頃、すでに、日が傾きかけている。 秋近い日は、釣瓶落しのように、ストーンと落ちる。 油断は禁物。 江ノ島は急遽変更。 横浜へ。
ちょこちょこと、小さな旅好きにすれば、目と鼻の先の距離。 羽田近くの湾には倉庫群。 どんよりとした海上に、日が照り返し、微かに漣が揺れる。 遠くには、蜃気楼のように、都会のビルが浮き上がる。 高く澄み渡る空に、吸い込まれるように、高速道を進む。 やがて、左手に、横浜のビル群が出現。 そごうデパート、丸井デパートなどなど。 高速を降りると、そこはすでに桜木町だ。 昔懐かしい、レンガ倉庫を通過し、山下公園へ。
まだまだ、公園の人出は賑やか。 広場では、大道芸人が大活躍。 なかなかの芸達者。 喋くりも上手で、なにより、明るく元気なのがよろしい。 時には、客をいじり、かまい、子供を脅したり、すかしたり、あの手この手のやり取りも楽しい。 公園の名物・氷川丸から、音楽バンドの生演奏が流れてくる。 サザンオールスターの歌にも登場する、遊覧船・マリンルージュが、光の幻影のように、港を滑って行く。 氷川丸の屋上デッキはビヤガーデン。 私たちも、乗船チケットに200円払い、階段を登りなかへ。
デッキの白塗りのテーブル席に着く。 私は勿論、生ビール。 運転係のママはウーロン茶。 シーザーサラダ、ピザを注文。 デッキの彼方には、横浜の港。 時おり、飛行機が薄暮の空へ、切りたつように、角度をあげて飛び立つ。 山下公園の後背のように、聳えるビル群。 空には大きな夕日が輝く。 港の水面には、残照に照り返された光の道が、キラキラと揺らめく。
飲むビールは同じでも、横浜のロマン、船上のメルヘンは、最高のオードブル。 ソーセージを追加して、生ビールは3杯目。 生バンドの演奏もすでに2度目が終った。 すっかり、夕日も落ち、海は黒く、遠くに見える観覧車は、夜空に輝く光の七変化。 船上のマストもライトアップ。 予約のお客達も集まり始め、デッキは活況の賑わい。 山下公園のマイク越しのざわめき、大道芸人のパフォーマンスか。 折角の山下公園、隣の中華街まで足を伸ばすことに。。
ライトアップされた氷川丸を背景に、大道芸人の炎の芸だ。 ガソリンの炎が燃え滾るトーチを回し、空に投げ上げ、リズムよくキャッチ。 そして、最後の1本を、口の中へ入れて消した。 色は朝黒、頭を刈り上げ、ヘヤ-は短いドレッド。 2年前に、合羽橋の七夕で見た、自称・酋長ではないか。 そして、彼の得意技・バランス乗りが始まった。 何本もの輪っかを重ね、その上に飛び乗る。 そして、お客様に投げてもらった、炎のトーチを3本、しっかりとキャッチ。 取り巻く観客の拍手。 幾重にも重なった輪っから飛び降り、観客の拍手に手を上げて応える。 ご祝儀入れの大きな袋を取り出し、抜け目なく、観客のもとを、笑顔でまわる。 十八番の芸の前、手で合図したお札の形とおり、千円札は袋の中に、次々と吸収されていった。 ライトアップされた氷川丸と公園をあとに、ブラブラと中華街へ。 さすがに、8時を過ぎても、中華街は賑やか。 中華街はまだまだ老若男女でごった返し、土産物屋も大盛況。 適当な店を探索しながら、ぶらりぶらり、中華街めぐり。 「皇朝」で名物の小ぶりな肉まんを購入。 表通りから脇道をぬけ、「楊州酒家」に入る。 サービスコースを頼み、私は紹興酒を冷で飲む。 やはり、その国の料理には、その国の酒が良く合う。 その土地の人たちが、何百年という歴史の中で、その土地の料理と調和した酒が、地酒や民族の酒。 自分たちの生活する大地、空気、水から生まれ、その土地の人々のために造られた酒は格別。
皿の上に、こんがりと焼かれた餃子が5個。 タレをつけて口の中へ。 もちもちとした厚めの皮。 狐色に焼かれた皮はカリッとした食感。 歯で噛むと、プチュッとジューシー、熱い汁が口の中に広がる。 こんもり固まった肉は、プリプリプチプチで弾ける。 ニンニクは入っていない本格派の餃子。 さっぱりした味わいのなかに、やわらかなコク味がある。 また一本、紹興酒を追加した頃、店もそろそろ閉店の時間が近づいている様子。 会計をして外に出たが、まだ、中華街の灯は華やかに、朱色に輝いていた。
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