小さな旅&日記


黒山三滝と顔振り茶屋
4/24<日>

黒山三滝の駐車場の隣にて 黒山三滝の入口の前で

今日は暖かドライブ日和。
午後の2時半頃に出かける。
うららかなこの時季、日もだいぶ長くなった。
先日行きそびれた、越生の先の黒山三滝へ。
川越街道から有料道路<二百円なり>を通り、川越市内を抜け日高へ。
前回は、川越市内を抜ける道に失敗。
あらぬ方向へ行き、えらい道草をした。
今回は、ニ差路を右に曲がる。
やはり、ドンピシャの大当たり!
スムーズに市内を抜け一路日高へ向かう。
やがて、一ヶ月前に観梅に来た越生に、ニ時間半余りで到着。
何故か順調に来た割には、今日は道が込んでいて、思いのほか時間がかかった。

黒山三滝の天狗滝へ向かうママ 黒山三滝の天狗滝

懐かしい梅園を過ぎて、黒山三滝へ。
梅林から約八キロ。
なだらかな上り坂を、クーンクーンとエンジン音も軽やかに進む。
道沿いには八重桜が咲き、山吹がパッ顔をだす。
日も少し傾きかけた。
こんもりとした山は黄緑や深緑、若草色で、さしずめ緑の交響曲さながら。
鄙びた里もいよいよ民家が少なくなってきた。
そして、越生から約三十分経ったのだろうか。
黒山三滝の入口に着いた。
村営の無料駐車場に車を停める。
すでに、日は傾き、山の空気は冷たい。
でも、山の霊気がひんやりと心地よい。
体内に溜まった都会の毒素が、身体からすーっとひいていくようだ。

黒山三滝の天狗滝      黒山三滝の天狗滝の前で。の前で

目的の滝まで十分位みたいだ。
渓流沿いの道を進むと休憩所兼鱒つり場があった。
はじめて、帰りの道のりをあるく四人ずれとすれちがう。
時間が時間、人気が無いのも当たり前か。
やがて、天狗滝の標識が顔を出す。
渓流に掛かった橋を渡り、丸太二本で組んだ狭い渡しを踏み渡り滝へ。
前方に滝が現れた。
二十メーター位はあるか。
一筋の天狗の鼻のような滝が流れ落ちる。
以外に見事なので嬉しい。

黒山三滝の天狗滝の見晴らし台 黒山三滝の天狗滝の落下口

滝が流れ落ちる絶壁の方から、女性が二人崖沿いの狭い道を降りてきた。
私も上ってみることに。
ママはすでに下に降りて行ってる。
「上に行かない?」
ママは首を横に振ってる。
何時ものことで、余り、山登りは好きでない。
私一人で散策をすることに決めた。
崖沿いに切り開かれた急峻な狭い石ころ混じりの階段を上ると、途中に見晴台があった。
取り敢えずは座ってみるが、あまり見晴らしはよくなし。
さらに、上に登ってって行くと、天狗滝の落下口に辿りついた。
こわごわ、滝壷を覗いて見る。

黒山三滝の女滝前

下から見る景色とは一変、かなり高いので背筋もぞっとする。
長閑な山襞に囲まれ、吹き抜ける生暖かい風に吹かれながら、
そろそろ、ママのもとに帰還するか。
左の方角を見渡せば、一軒の赤いトタン屋根の民家が見える。
何事も探検。
そちらに向かう道が続く。

とことこと、ゴツゴツした石段を下ると家に辿り付く。
半信半疑で、民家の門を入る。
どうやらここは、土産物屋さんのようだ。
観光シーズンはさぞかし賑わうのだろ。
他に今日は人影もなし。
民家は普段の生活の佇まい。
奥に歩いて行くと、なんとそこにママがいるではないか。

黒山三滝の女滝と男滝

「先回りとは、驚いたね。」
「ほら、そこが女滝と男滝」
「ここなんだ。立派な滝だね」
私は思いもかけずに、目的地に辿り着いていた。
もっともっと、小さな滝かと思いきや、それはなかなか威厳と品格のある豪勢な滝であった。
そんなに期待もしていなかったのに、思いのほか立派だとえらく得をした様で嬉しくなる。
どうやら、この滝は神聖な聖地のようだ。

神秘であり荘厳さえ、肌にしみいる霊気が教えてくれる。
何気なく置かれた道祖神のような佇まいの石造に、僅かながらのお賽銭を置く。
とぼとぼと、渓流沿いの道を下る。
道沿いの土手の斜面には山吹が誇らしげに咲いている。
満開の見事に咲き誇る八重桜を愛でながら写真を撮る。

楚々と可憐に咲く山吹 見事に咲き乱れる八重桜

さー、これから顔振り茶屋へ出かけよう。
すでに、日は大きく西に傾き始めた。
たぶん、また黄金に輝く夕日を見ることができるだろう。
一ヶ月前に通った山道をグーイーングイーンと、エンジン音を響かせながら登る。
つづら折れの峠もだいぶ登ってきた。
遙彼方、山脈の彼方に見る夕日が美しい。

顔振り茶屋へ行く途中の夕景色

ここまで来れば、茶屋まで後一息。
奥深い山中に突然、道にへばりつくように、小さな集落が出現する。
そうだ、ここまで来たら、目的地はすぐそこ。
懐かしい、「顔振り茶屋」に到着。
お土産の日本酒を持って、茶屋の階段を上る。
店には、二組のお客さまがいた。
「こんにちは。これ、お爺ちゃんにあげてください」
「すみませんね。わざわざありがとう御座います」
「先日、お爺ちゃんに、一杯奢って頂きましたから」
私たちはテーブルに。

顔振り茶屋にて

「今日は、生ビールありますか?」
「大丈夫です」
私は中ジョッキを頼む。
ママはとろろ蕎麦と味噌おでんを注文。
「すみません。タラの芽のてんぷらください」
「旦那さん、今日は終わっちゃって。なにせ今年は少なくて」
「気にしないで下さい」
すでに、夕日は、秩父の武甲山の陰に隠れんばかりだ。
黒く重たい雲が山脈を覆い始める。

顔振り茶屋からの落陽

「旦那さん、何も無くてすみません。これを食べてください」
それは、歯ごたえのあるシャキシャキとしたほうれん草のおひたし。
やはり、地物の野菜は美味い。
私はビールをもう一杯注文。
「これもサービスで、新筍の味噌和え」
若い筍の刺身を味噌いため。
柔らかく、素直で、舌にとろけるようで季節に思わず感謝!
辺りは暗く、山脈は薄墨を流し込んだようで、まさに水墨画の世界に移行していた。
ママも美味しそうに蕎麦を食べている。
私も少しつままさせてもらう。
腰があって、香りが心地よく鼻をかすめる。

山水画のような景色は素晴らしい

またしても、すでに他のお客様は、すでに退店していた。
「燗酒、一杯いいですか」
「どうぞ、どうぞ。今日は済みませんでしたね。親父、すでに寝ちゃって」
「好いんですよ。よろしく言って下さい」
酒が運ばれてきた。
「これ、召し上がって下さい。熊本直送の馬刺しです」
「好いんですか?」
「明日になったら色がとびますから。どうぞ、遠慮なく」
「喜んで頂きます」
柔らかく、淡いピンク色の馬刺しは、ホックリとして柔らかく、舌に絡みつくようでしんなりと甘い。
今日も美味しい酒を堪能させてもらいありがとう御座いました。


板橋区常盤台・平和公園の花見と羽田空港
4/10<日>

右から2番目が光吉さん
9日の土曜日、ヒョッコリと光吉さんが来店した。
「マスター、6月13日に試合が決定しました」
「早いね。今度こそ頼むよ」
「はい、頑張ります」
「前回は惜しかったよね。あれは敵前逃亡だよ」
3月10日<木>に日本ライト級チャンピオン・カーニバルがあった。
日本ライト級1位田中光吉VS久保田和樹。
第1ラウンド早々、田中の強烈な右フックが久保田の顔面に炸裂。
たまらず、久保田はもんどりうってダウン。

田中の一方的なワンサイドの展開が開始。
しかし、4回不運にもバッティングで、久保田の額が切れ出血。
このとき、すでに久保田は戦意喪失。
試合はノーコンテストで不運にもドロー。
残念無念、田中はリングに膝からガクリと落ちる。
なんとも不本意な結果に終わった。
「マスター、今日はこれで帰ります。明日花見ですから」

「どこでやるの?」
「近くの平和公園」
「上板の駅の近くの?」
「ママは知ってるよね」
そして、翌日、私も出かけてみた。
公園は花見客でごった返していた。
「ママも一緒に行かない?」
「ここで待ってる」
「どうして?」
「私も行くと、貴方、長居しちゃうし」
「じゃ、俺だけ行ってくるわ」
「飛鳥山に行くの忘れないでね」

公園は思いのほか広い。
ぐるりとまわるが見当たらない。
まだ帰るわけないし、ひょっとしたら間違えたかな。
ちょっと不安になって、ぐるり一周。
端っこのほうに、光吉軍団がいた。
ビールを差し入れて帰るつもりが、
「マスター、せっかくだから飲んでってよ」
この言葉に俺は弱い。
「じゃ、ちょっとだけ」
渡された缶ビールを右手に、車座に加わる。
一番左は古口ジムの宇野トレーナー
「ママは?」
「車で待ってる」
「駐車場ならあるから。ちょっと行ってくる」
やがて、戻ってきた。
「飛鳥山に行くんだって行ってたよ。早く戻るようにって」
若い連中と満開の桜の下での酒は気持がいい。
あまり、真昼間から大勢で酒を飲む機会がないので、とても心地がよい。
古口ジムのトレーナーの宇野さんに会うのも久しぶり。

元世界チャンピオンの鬼塚さんと、ピーポッポに来て以来かな。
後楽園ホールでは何回か見かけたのだが。
屈託のない愉快な仲間たちと酒を酌み交わしていると、ついつい尻が重くなる。
ちょっとのつもりが、2時間位いたのかも。
すこし、ほろ酔いで気持ちよい。
日差しも少し翳り始めた。
そろそろ、腰をあげねば。

いくらママでも、臍を曲げさせてもいけない。
「光吉さん、そろそろ撤退するわ。皆さん、ご馳走さん」
「マスター、写真を撮ってるだろ。たぶんホームページに載せてくれるよ」
「近じかアップしておくから、見て下さいね」
車に戻ると、ママは地図を見ていた。
こんなに待たされても、頭に来ないところがなんとも偉い!

車に戻った私達は出発進行。
しかし、時はすでに遅し。
飛鳥山の花見は急遽中止。
新装なった羽田へ出かけることに。
中台辺りから首都高にのり湾岸道を進む。
とうに日は落ち始め、彼方の夕映えは美しい。
途中で買った缶ビールがやけに美味い。
前方に広がる雄大な日没のパノラマを見ながらのビールはなおさらだ。
こんな時ほど、運転が出来なくてよかったと感無量。
高速道から見た夕焼けは素敵だ
やがて、羽田に到着。
駐車場に車を置いて中へ。
さすがにこの時間、人はまばらだ。
取り敢えずは何処かで腹ごしらえを。
でも、いがいとこれぞという食べ物屋がない。
「第二ターミナルへ行かない」
「何かあるの?」
「綺麗になったみたい。屋上から見る飛行場が素敵だって」
二つのターミナルを結ぶシャトルバスバスに乗車。
私達の生活、ほとんどバスに乗ることがないので、いささか楽しい気分。
たまに乗るバスは楽しい
ANAのターミナルにあっという間に到着。
私達はさっそく展望デッキへ。
日はすっかり落ちて、人はまばらだ。
吹き抜けるける風は強く、えらく冷たい。
早々と退散して階下へ。
すでに人気のない展望台は肌寒かった
今度こそ、何処かで一休みだ。
やはりここも、帯に短し襷に長しで、なんとも収まりが悪い。
まー、贅沢は言わずに入るとするか。
私達はカフェラウンジのような店に入る。
ママはクラブハウス・サンドとコーヒー。
私は勿論生ビール。
夜の空港を離着陸するジャンボジェットは美しい。
今飛びたったジェットが、あっという間に夜空の星のように点滅する。
何百人の人を乗せて何処へ行くのだろうか。
ターミナルは閑散としていた
世界は本当に小さくなった。
だが、世界の紛争は絶えず、かえって複雑に、そして凄惨にさえなっている国もある。
世界は物理的には小さくなったが、その分、人間の心は拡散し、分裂しているようにも思える。
てな難しいことを少し考えながら飲むビールはやはり美味い。
世界のことを、酒のつまみにするんじゃねーぞ、不謹慎じゃ!の声が、何処からか聞こえそうだ。
そこそこのんびりと一服したので、そろそろ帰還せねば。
われわれは店を出る。

回りの店は既に閉店していた。
ひょっとしたら、この店も、私達が帰るのを、今か今かと待っていたのかも。
同業者としては、思いやりのなさに少し反省。
私達はシャトルバスで戻り駐車場へ。
時は九時をとうにまわっていた。
板橋に帰ったら、取り敢えずは腹ごしらえ。
仕上げにケルビンのFGcafeにでも寄って、一杯やっていこう。