小さな旅&日記


ちょっとした、人の気持はありがたいね

2004.10・17<日>

10月17日<日>は、川越祭り。
3年前、最初に行った時は、とにかく驚いた。
たかが、川越のお祭り、たいしたことはないだろうと、出かけてみたらとんでもない。
その、人出の多さ、夜店のかず、山車の豪華さ、祭りの規模。
蔵つくりの川越全体が、祭り一色に塗り込められていた。
何処をとってみても、これは祭りの一級品。
久しぶりにお祭り気分を、十二分に堪能したもの。
以来、今年で3回目の川越祭り。
このところ、家で極力お酒を飲まないようにしているので、体調は絶好調。
必然的に、目覚めが良く、身体も軽い。
昼過ぎには、家を後に川越へ。
日の短くなったこの時季でも、余裕で、明るい内に目的地に到着。
駐車場に車を止め、人並みに押されるように、夜店のひしめく狭い商店街を抜ける。
押し合いへへしあい、もみくちゃ饅頭、先へ進むのも大変。
こんな道でも、乳母車に子供を乗せて進む、親の気持が分らない。
やはり、おんぶか抱っこ出ないと、子供も回りも迷惑この上ない。
メーン通りに出たが、まだお囃子の音が聞こえない。
あの大きな山車は、はてさて、どこで待機しているのだろうか。
私達は、ブラブラとお店や屋台を覗きながら、べつに当てもなく漫然と歩く。

「そろそろ、何処かで休まない?」
すこし、歩き疲れたかもしれない。
もう少し行って休もう。
メインストリートの蔵造りの商店街に出てきていた。
櫛が抜け落ちたように、あちこちが、駐車場になっている。
川越も日曜・祭日の賑わいは、それはそれは賑やかになってきたようだが、
肝心の、お店の売上にはなかなか繋がらず、閉店する店も出てきている寂しい話。
まだ、お囃子も聞こえない。
きっと、日が暮れ始めたら、お囃子の音とともに、山車も勢揃いするのだろう。
私達は、去年も寄った、郷土物産特設センターに寄る。
川越地ビールの生350円。
50円玉が不足してます。よろしくお願いしますと書かれている。
咽喉も渇きぎみ、「生ビール下さい。350円丁度ありますよ」
お兄さん、サーバーのお姉さんに、「山盛りで、注いで上げてください」
些細な事だが、酒飲みにはとても嬉しいお言葉。
思わず、「ありがたいね」
飲んでいると、アレレ、このビール、どっかで飲んだな。
何処だろう。最近の感じだな。
そうだ、秩父で夏に飲んだビールの味に似ている。
秩父の地ビールって書いてあったが、製造元は川越でがっかりしたもの。
多分、製造元は同じだろうと勝手に思い込む。
そして、隣の樽酒に目が。
「あれ飲もうかな、こも被りの地酒晴雲、いいね」
「でも、さっき、瓶のお酒を樽に流していたよ」
「あれまー、どうせなら、見えないところで入れてもらいたいね」
私は、後ろのコーナーの東薫の樽酒を飲む。
よく冷えているが、少しべたつく甘さが気になるが、なんたって、カップ一杯200円なり。
よく冷えているし、カップ一杯なみなみだもの、文句は言えない。
ママの隣に戻り、クビクビ飲む。
「ほら、今、樽に入れてるでしょ」
「もう少し、隠して入れて欲しいね。やはり、酒は気分だから」
右隣のおばちゃんのカップのビールが、私の右足にビチャ!
おばちゃん、全然気がつかぬ素振り。
「おばちゃん、冷たいよ」
「あ!、すいません、すいません」
ハンカチを、すぐさま出そうとしている。
隣の旦那様も、「すいません、早くハンカチを出さなくちゃ、ほら」
「やや、良いんです、良いんですよ、気がつけば」
私は、ティッシュを取り出し、ズボン、そして靴を拭く。
今日はお祭り、些細な事は捨て置かないと。
「本当に、済みませんでした」
「もう、良いんですよ、気にしないで下さい」
すると、お囃子の音が聞こえてきた。
道はザワザワざわめいている。
大勢の人だかりの中、山車が次々通り過ぎていく。
「そろそろ、出かけるか」
酒を飲みきり、祭りの雑踏のなかへ。
いよいよ、祭りも最高潮。

祭り提灯、闇に照らし出される山車は、煌々と輝く。
きっと、山車の男集たち、神酒で一杯、景気づけ、なかなかのりが良い。
祭りの醍醐味は、やはりノリと勢い、それにイナセな仕種。
ますます、人ごみは激しくなる。
蔵造りの狭い道、山車と山車のすれ違いざまの演者とお囃子方の激しい応酬。
ぞろぞろと山車を引く人、山車の後を追う人、見物人、すれ違うのも一苦労。
まさに、祭りは熱気を帯びてきた。
ただただ人ごみの中で見物してるだけでも、エネルギーを使う。
しかし、この祭りの雑踏、祭りの熱気がたまらない。
待ちに待った一年に一度の祭り、ハレのエネルギーに触れるだけで、
こちらの身体に、新鮮な生命が照射されるようで、血液が迸り、体内が熱くなる。

懐かしい、超レトロな見世物小屋。アナログの古いものが、新鮮に感じられるのかも
暫らく行くと、お寺の参道があり、夜店が続き、なにかありそうな雰囲気。
私達は夜店を覗きながら、奥へそぞろに歩く、そこには昔懐かしい見世物小屋があった。
お化け屋敷に、蛇女やろくろっ首女でも出そうな木とテントの見世物小屋だ。
最近はとんと見ない懐かしいレトロな光景。
「面白そうだから、入らない」
「6百円、高くはないな。でも、どうせガッカリするよ」
「でも、入ってみようよ」
ママはすっかりその気に。
木戸番の女口上師の呼び込みの啖呵も小気味よい。
小屋の中では、なにやら観客のどよめき。
私達は小屋の中へ。
思いのほか、大勢の観客。
司会進行役の中年のピッタシタイツのお姉さん、これまた小気味よい口上。
舞台には、白装束、白たすき、目には黒々パッチリのアイラインに付まつげの、
年齢不詳のオミネバーさん。
どうやら、生きた蛇を噛み切るらしい。
蛇の頭を口の中へニョロリ。
オミネバーさん、頭をガブリ!噛み切った。
口の中は、蛇の血でタラリと滲んでいる。
次には、ロウソクに火をつけ、解けてきたタラーリタラーリの蝋を口で受ける。
女口上師、「さーオミネバーさんが、口に溜まったロウソクを、パッとこちらの火に吹き付ける。
さー、そこのお兄さん、お姉さん、ここまで移動。バッと炎で火傷するから気を付けてね。
成功しましたら、皆さん拍手喝采の程お願い致します」
オミネバーさん、バッと蝋を勢いよく吹き付けると、ボーッと爆発音とともに吹き上がる炎、なかなか見事!
思わず、観客は、オーッと大喝采!
そして、次は、たどたどしいが愛くるしい、ワンちゃん4匹のイマイチ芸。
このレベルでも、見世物小屋ならではと、観客は皆寛容に納得。
そして、最後に、大蛇が登場。
人に噛み付く危険性ありと、頭には目隠し。
グニャリスルスル、グニャリスルスル、狭い舞台を我が物顔でヌシリヌシリ。
まじかにみる、正真正銘の見事なインド・ニシキヘビだ。
女4人組の頭領格、太鼓をドンドコドンドコ威勢良く叩き、口上も最高潮!
「10年経ってのこの大蛇。長さは10スーメートル。一度に食べるは、
生きた鶏なら3羽、ウサギならやはり3匹。決して死んだ動物は食べません。
ゴクリゴクリ、頭から丸呑み。蛇は顎の骨を外す事が出来まするので、ゴクリと一呑み。
さー、皆様、このニシキヘビに触りたい方はどうぞ、手で触れても結構です。
ニシキヘビに触ると金運がつくと言われております」
それを聞いて、みんな現金なもの。
どっと、舞台のニシキヘビのもとへ。
まけじと、私たちも、ニシキヘビに手を触れた。
ヌルリとしているものかと思いきや、以外にサラッとしている。
手のひらには、蛇の内臓が緩やかに蠕動しているかのようで、そして、冷やりとした不思議な感触。
これで、見世物は一巻の終わり。
私達は木戸銭を払い見世物小屋の外へ。
期待していたよりはレベルが高く、見世物小屋への懐かしい郷愁の思いを満たしてくれた。
宮入も近づきさらにさらに盛り上がり、お囃子の音も激しく、祭りの若い衆の嬌声も賑やか。

私達は、駐車場にあつらえられた特設の屋台ですこし休む事に。
勿論、私は生ビールを。
「おにーさん、生ビール一杯、よろしく」
450円払うと、ホタテの串焼きを焼いてる親父さん、
「にーさん、気持いいね。はい、これサービス」
「なんか、わるいね」
席に座り、「ママ、これ食べれば」
ビールを飲みながら、祭り見物、なかなかの気分。
奢られて一杯で帰るのも粋じゃないと、追加を注文。
「親父さん、奢られて、一杯で帰るわけにはいかないからね」
「嬉しいねおにーさん。じゃ、これもあげちゃう」
また貰ってしまった。

手前の、白い作業着の親父さん気前も威勢も文句なし。祭りにゃ、最高!!

〆て2本、1本200円だから、400円也。
ママ、「今度は、貴方が食べないと悪いわよ」
チビリチビリやっていると、「ツマミがないよね。ほらこれ」
またしても、親父さん、3本目をくれた。
なんとも、人の気持は嬉しいもの。
ママの一服も終わり、祭りの中への戻りかけ、
親父さん「来年も来てよ」
「OK!じゃ、又来年」
祭りは、いよいよ最終章に近づいている。
私達も、そろそろ帰り支度。
何処か、居酒屋でも入って、一杯やって帰ることにする。
すでに、時計は9時を指していた。


すこし、ヤンキーなママ。車の運転があるので、酒を飲めず、咽喉の渇きはジュースでした