小さな旅&日記

なんで、松・竹・梅の順番なの?
2/18<水>

蕎麦屋、寿司屋、天麩羅屋など、ちょっと江戸っ子気取りで、食べる店のお品書きには、
松竹梅のコースやら、セットやらがのっている。
なにも考えずに何時も見ているのだが、順番は必ず、松竹梅、
値段もこの順番で、松が一番高い。
だいたい、七割がたは、真ん中の竹を選ぶそうだ。
見得も外聞も気にする人が、小心者の私も含めて、やはり多いということなのか。
でも、梅だって、こんな寒い季節、たとえ雪が降ったって、
シッカリと可憐な花を咲かせているのだから、最下位とは少々お気の毒。

中国の故事に「歳寒の三友」という言葉がある。
松は厳寒の季節、雪が枝に積もっても、一年中葉はいつも真緑、常緑は不老長寿のシンボル。
竹は、どんなに雪や冬の木枯らしに吹きやられても、しなりながらも、
折れる事もなくいつも緑を湛えるので、平安無事を現す。
梅は、やはりこの季節、雪の中でも、
鮮やかに紅梅や白梅を華やかに咲かせ、匂いたつ香気・生気を象徴する。

特に、松は日本古来、長寿のシンボル、神木と尊崇され、
中国では、水墨画などで、仙人が松の葉を食べていたりする図があり、
松は仙人の食べ物でもあったようだ。
取り敢えずは、仙人を敬い、松のコースは値段が高いということに了解。
でも、竹と梅との格の違いは如何様に理解すればよいやら。
松竹梅、何はともあれ、上・中・下、甲・乙・丙、特上・上・並よりかは目出たくも小粋な響きがある。
蘭・菊・梅・竹は、高貴で雅のゆえに、「四君子」とも例えられるのだから、
梅・竹は、決して松の後塵を拝す事はないような気がするのだが。


ヒロシちゃん、早くチャンピオンを育ててね
 2/12<木>

一昨日、ヒロシちゃんが久し振りにやって来た。
仲良くチャーミングな奥さんと一緒に。
相変わらずのキノコ頭で、朝黒く精悍な風貌は何時と同じだ。
赤羽の自宅の近くの居酒屋で飲んでいたのだが、急にピーポッポに行きたくなって、
どうしようもなく、タクシーを飛ばしてやって来てくれたのだ。
嬉しい、感激ものだ。
「マスター何時ものバーボン、ください」
「懐かしいねその響き。ファイティング・コックね。あの頃は9年ものだったんだけど、今は6年ものだね」
ヒロシちゃんは、何時もこれを飲む。

彼が大好きな漫画の主人公が、コイツをグビリグビリやるのだ。
もう、ボクシングのトレーナーになって、何年経つのだろうか。
ピーポッポに来てから、かれこれ、ヒロシちゃんの年から逆算すると、8年も経っているとは驚き。
ボクシングのために、長崎の佐世保から上京、
いろいろな事もあり、無念の臍を噛む思いで、迷い悩んだ大変な時もかつてはあったが、
今は、日本を代表する名伯楽、いや世界を代表すると言っても決して過言でない、
名トレーナーの下で、毎日選手を育てるために、素晴らしい汗をかいている。

「マスター、今は本当に楽しいです。
選手と一緒にトレーニングをしていると、選手からもいろいろな事を教えてもらいます」
「ヒロシちゃん、ジムももう少ししたら、日本チャンピオン誕生できるかね」
「マスター、もう少し待っていて下さい。
あと2年以内に、育ててみせます。今でも才能のある奴が何人もいますから」
「それは楽しみだね。その時は、俺達みんなで後楽園ホールに応援に行くから」
「マスター、頑張ります。選手が試合に勝った時はまるで自分が勝ったように、
熱いものがこみあげてくるんです。選手に言われるときがあります。

<先生はトレーニングの時、鬼かと思うときがあります。
でも、今こうして、勝利を味わう事が出来たのも、
先生が厳しく鍛えてくれたからなんだと感謝してます>
マスター分かりますか。
そんな時、この仕事をさせてもらって、俺はなんて幸せなんだ。
もっともっと俺自身が選手を育てながら、一緒に勉強しなければ、
頑張らなくてはって、ジーンッとハートが熱くなってきます」
ママさんがポツリと涙声で言った「ヒロシちゃん、少しの間にもの凄く成長したね」
「選手を育てると言う事は、その子の人生も引き受ける訳ですから、やりがいがあります。
だから、絶対にいい加減なことは出来ません」

たしかにママさんの言うとおり、
ヒロシちゃんは強く逞しく、人間として一回りも2回りも大きくなったようだ。
まだまだ、トレーナーとして勉強する事は山ほどあるだろう。
しかし、自分の仕事を愛し、選手を愛し、
選手と二人三脚で進む道は、険しく危険が付きまとう。
だが、自分で見つけ選択し決断した仕事、
選手とともにチャンピオンになるために進む道は険しくも厳しいけれど、
苦しくも厳しいほど、得るものは大きいはず。
たとえ、チャンピオンになれなくとも、四角いリングで戦う事は、
長い人生の大きな心の宝物になるはず。