小さな旅&日記


秩父夜祭
12月3日<金> 
  
12月2<木>−3<金>連休をとる。
秩父夜祭連の若夫婦が特等席を設けてくれた。
忘年会シーズンに入るが、思い切って連休、秩父へ出かける。
2日の午後3時過ぎに東京を発ち、秩父には5時半頃到着。
以外に混雑は無く順調に来た。
秩父地場産センターの駐車場に車を置き、早速、秩父神社に出かける。
道路脇では、明日の夜祭に備えて、露天商たちが、店を組みスタンバイにおおわらわだ。
神社の境内の舞殿では、とうとうと響く詩吟に合わせて、剣舞の舞。
襷掛けの袴姿に脇差、額には真っ白な鉢巻。
暫らく見物のあと、本殿に向かう。
さすがに神社の大祭、本殿前は参拝客でごった返していた。
私達も、儀礼に則り、柏手を打つ。
時間の余裕も充分にある。
 
お祭り一色秩父の辻々を散策する。
家々には提灯が灯され、店には紅白の幕が垂れている。
いやがうえにも、祭り気分が高揚してくる。
今はまだ、人出もまばら、テキヤさんたちがせっせと、明日のスタンバイだ。
西武秩父駅の近くで引き返し、夜祭りのメイン通りへ向かう。
遠くで太鼓の音が、ドンドコドンドコドンドコドーンと聞こえてくる。
さては、笠鉾や屋台の山車が出ているのでは?
今日は宵宮の筈、山車が出ていても不思議はない。
段々と祭囃子も賑やかに、そして大きく響き渡ると同時に、人々の喚声も轟く。
彼方に、山車がいるではないか。
ついつい、我々の足も速くなり、祭りの熱に吸い寄せられるみたいだ。
前方に、懐かしい屋台が見えた。
祭り半纏を着た氏子連に混じって、観光客も屋台を引く。
さしずめ、綱引きに使うようなロープのようだ。
赤い襦袢を片肌脱いだ男たちが、山車の上から、提灯をかざしながら、
ホーリャイ<宝来>、ホーリャイと威勢良くしゃがれた声でで叫ぶ。
 
秩父の冬の寒さは尋常じゃない。
寒風を突き破るほどに、男たちの動きは勇壮で激しい。
暫らくは屋台の後ろを追いかけながら、秩父のメイン通りを歩く。
何時もなら車で往還する街道の真ん中から、見渡す秩父の商店街の風景も、何か異質な風情を感ずる。
夜もだいぶふけてきた。
ふだん余り歩かないママが少しばて気味。
明日が夜祭の本番、今日は何処かで一杯やりながら、夕食にすることに決めた。
ママの実家に行けば、酒も料理も何時ものこと、十二分に用意してあるのだが、
今日のところは外で済ますことに決めた。
私の何時もの我儘な思い込み、酒と料理は逃げねーなんて勝手な思い込み、許してもらうことにした。
 
翌3日、いよいよ夜祭の当日が来た。
昼ご飯を軽く済まし、3時過ぎに出かける。
ママの実家のユーチャンと彼女のマイチャンは、
姉さんのクミチャンがあつらえてくれた、祭り衣装に調え出かけた。

ママの実家三橋家の前で、甥っ子ペア、ユーチャン&ドマイチャン。
刺し子をはおり、祭り衣装で正装。いざ、夜祭へ出陣。
画像をクリックすれば大きくみれます
私達は、ママの義兄の運転するパジェロ、7人乗りで大挙繰り出す。
見慣れた小鹿野の里を後に、20分余りで秩父市内に到着。
街はまさに、祭り一色。
人の熱気で、街が膨れ上がっている。
老若男女が、街の辻つじをぞろぞろと埋め尽くす。
祭り連の姪っ子夫婦が借りてくれた駐車場に車を止め、まずは姪っ子夫妻の実家に挨拶へ。
祭りの目抜き通りのすぐ裏手に家はあった。
2階に上ると、すでに美味しそうな料理が用意。
なんと、鍋料理まであって、これはこれは感動もの。
お母さんとクミチャンが、せっせと丹精こめて、昨日から用意してくれたみたいだ。
初めて会う私達は、お母さんに軽く挨拶。
すぐさま、手料理のご相伴に預かり、宴会気分だ。
お母さんとクミチャンがこまごま気をつかっってくれ嬉しいかぎり。
ワインやビールを飲み、祭りのざわめきを聞きながら、窓外に見る花火は最高。
外もだいぶ暗くなってきたみたいだ。
遠慮の無い私達、調子にのってこのまま宴会では、ぐずぐずになるのは目に見えている。
義兄が頃合を見計らい、グッドタイミングで惜しみながらも退席。

正直なとこ、居心地のよい私は、心残りで少し残念。
いよいよ、祭りの本ちゃん、特等の観覧席に向かう。
すでに、見物客で道はごった返している。
歩道は立錐の余地はなく、山車が来るのを待っている人、屋台囃子にさそわれて歩く人。
人の波をかき分けながら、目的の観覧席へ辿り付く。
どうやら、かつては家具屋サンのようだ。
シャッターを上げ中へ。
ガランとした広い部屋には、祭りの太鼓が鎮座している。
階段を上り2階へ。
すでに、先客がいる。
道路に面した大きな窓が開け放たれ、窓辺には絨毯。
私は椅子に座る。
背中には、ストーブがたかれ暖かだ。
やがて、祭囃子の音が賑やかに、そして大きくなってきた。
ホーリャイ、ホーリャイ、ホーリャイ、勇ましくも激しいしゃがれた声が聞こえる。
 
私達の目の前を豪壮な笠鉾が通る。
何時もは、下から見上げる笠鉾も、今日は自分の目の前に、笠鉾の屋根が見える。
祭り衣装に正装した男衆が、屋根の上にどっしりと座っている。
こちらが手を振れば、すぐ目の前で、手を振って応えてくれる。
片肌脱いだ襦袢の男衆達を、上から見下ろすのも初めての経験、なかなかいい気分。
つぎからつぎに山車が通過。
狭い道を、大きな山車がいよいよすれ違う。
ホーリャイ、ホーリャイ、ホーリャイの掛け声も張り裂けんばかりに大きくなる。
負けじと、大太鼓、小太鼓、鉦、横笛の囃子方も激しく打ち鳴らされる。

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いよいよ、山車がすれ違う。
果たして、上手くすれ違えるのか。
観衆と共に、私達も固唾を飲む。
一気加勢にすれ違う。
屋根の男衆が道路わきの電線やケーブル線を、手に手に持ち上げながら通過。
なんと、街路灯まで手で押しやる。
その瞬間、ガツンッ!。
すれ違いさま、屋根と屋根と接触した。
一瞬、静寂。
下では、山車を引く町内会の若い衆が揉み合う。
騒然としてきた。
 
勿論、屋台は一歩も動けない。
両町の重鎮らしい相談役が登場。
何か話し合っているようだが、なかなか話しがまとまらないようだ。
やがて、70歳がらみの相談役も険悪なムード。
さすが、歳はとっても威勢がいい。
一触即発、つかみ合いの喧嘩になりそうになる。
とっさに若い衆が、老人を羽交い絞めでおさえる。
さすがに、夜祭で鍛えられた祭り男、気合と啖呵は幾つになっても天下一品。
祭りの囃子、ホーリャイ<宝来>、ホーリャイ、ホーリャイの掛け声はドンドンお構いなしに激しくなった。
やっとのことでの和解成立。
山車が両者バックして仕切りなおし。
一気に、山車は再度すれ違う。
屋根の上の男衆に緊張が走る。
一気に通過。

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男たちに押された持ち上げられた電線やケーブル線が、激しく波を打つ。
大成功だ。
観衆からは大きな拍手が舞い起きた。
やはり、祭りって素晴らしい。
一瞬の緊張と解放。
目の高さで、この瞬間を目撃できるなんて最高に感動。
隣の席で観覧している女性が、酒を振舞ってくれる。
「如何ですか一杯」
すでに、秩父錦の新酒を飲んでいるのだが、勿論喜んでいただく。
秩父の武甲正宗、純米吟醸の新酒だ。
遠慮なくなみなみと注いでもらう。
祭りを見ながら、出会わせた見ず知らずの人に酒を頂く。
祭りってやはり日本の文化、人の温もりに乾杯。
 
時間はあっという間に過ぎ去る。
山車が次々に、前を通過。
山車の後を、憑かれたようにざわざわぞろぞろと人々がついてゆく。
これから、5台の山車は団子坂を一気に駆け上り、広場に集結する。
花火は一段と激しく打ち上げられるはずだ。
私達も此処を離れて、集結会場に行きたいところだが、もう人で溢れかえり身動きも出来ない。
極端な言い方をすれば、今日の早朝から席取りをしなければ無理な話し。
私たちは、充分に祭りは堪能した。
 
席を設けてくれた主人に、皆でお礼の挨拶をする。
外に出ると、祭りの熱気がむあーっといっそう伝わる。
これから、まだまだ夜を徹して祭りは続くのだろう。
秩父の冬は厳しく永く辛い。
だからこそ、祭りは勇壮で激しく燃え上がるのだろう。
また、ぜひとも秩父の夜祭には来たいものだ。
お世話になった秩父の皆様には、心から感謝!!
夜祭の翌日、本町屋台の前のママ
マサシサン&クミチャン、ごくろうさま。
大変に楽しい秩父の夜祭をありがとう