今日は快晴。 よし、予定通り海へ行こう。 3年半前に行った、大洗海岸へ今から直行だ。 時間はまだ正午、常磐道を一気に北上。 平均時速140キロ、快適に車は突き進む。 何度か通った常磐道、友部インターから、北関東自動車道を抜け、 道を間違えることも無く、すんなりと大洗海岸サンビーチに出る。 空にはどでかい入道雲、そして広くどこまでも青い太平洋が目の前に広がる。 すでに駐車場は満車状態だが、かろうじて駐車OK。 東京の外れの板橋から、一時間超で到着とは吃驚仰天。 現代は距離ではなく、車の便が物を言う時代だ。 すぐさま前の海の家へ。 すでに、海から引き上げている人たちもちらほら。 以外なことに、海水浴の人たちが少ないような気がする。 おばちゃんが茨城訛りで「何人だっぺ?」 にこりとしながら、しり上がりの発音。 「2人」 「それじゃまー、一人800円のところ、700円でいいっぺ」 たとえ100円でも、えらく嬉しく、田舎の情をホロリと感じる。 早速、私は着替え、まずは腹ごしらえ。 昔懐かしい、醤油ラーメンを食べる。 場所が場所だけに、味も味覚もヘッタクリも無い。 腹に入れば全て美味い。 腹ごしらえも終わり浜へ。 ママは海辺で椅子に座って日光浴。 私は久々の海水浴だ。 波は穏か、海岸は遠浅、海水浴客は程ほど、そして快晴、申し分なし。 海で泳ぐのは本当に久しい。 やはり、当たり前のことだが、海水はショッパイ。 あまり泳ぎすぎると、足でもつったら大変。 歳相応の運動量で切り上げ、浜で日光浴。 肌に強い真夏の陽光が容赦なく照りつける。 咽喉も渇き始めた。 缶ビールを買いに浜辺の売店へ。 ママには緑茶、私はゴクリゴクリとビールを飲み干す。 浜風に吹かれ、潮騒を聞きながら、果てしなく広がる雄大な海と空を眺めながらのビールは最高! 「ママ、悪いけど、もう一缶頼む」 二缶飲み干して海へ。 やがて、空が一気に掻き曇り、不穏な空模様。 雨がポツリポツリやってきた。 ママは椅子を持って、海の家に退散。 私は海へ。 やがて、暗雲を切り裂くように、陽光がサーッとさし始めた。 でも、さすがにもう、以前の輝きはない。 海辺の海水浴客もまばらになり始めた。 ママが迎えに来た。 「海の家、そろそろ終わりだって」 海から上って、近くを探索。 そろそろ、日も少し傾き始めた。 防波堤では、のんびり釣り糸を垂れている。 どの釣り人も釣果はないようだ。 そうだ、この前行った時は、既に日が落ちて真っ暗だった、磯前神社に行ってみよう。 大きな鳥居の交差点から神社の参道へ。 深い樹叢に囲まれた参道を登ると、神社の境内の入り口に着く。 駐車場は既にチェーンがかけられ、閉まっていた。 路肩に車を寄せて、境内へ。 砂利石をギュッギュッと踏みしめながら本堂へ。 今日はまだまだ明るい。 お賽銭を上げ、二礼ニ拍手一礼、神道の書式に則り柏手。 此処から見た、急峻な階段の彼方に見る、大洗の夜の海の輝きも、素晴らしく壮大だが、 真夏の残光に輝く、今日の黄昏時の太平洋は感動ものだ。 幾星霜、海に出かける漁師の無事を、漁師の女将達が此処から祈願したことであろうか。 上から見ると、あまりの階段の勾配で目がくらむほどだ。 階段を下りて、道路を跨いで、海岸に出る。 浜は石ころだらけ、そして岩場が広がり、波が砕けては散り、波飛沫。 海岸に接するホテルには、この時季稼ぎ時のはずなのに、 人影も無く、廃墟のようで寂しい限り。 浜辺にも、私達以外、人気が無い。 ママは貝殻を探しているが、何処にも見当たらず、綺麗な色とりどりの石を手に。 そろそろ、日も暮れ始め、海の色も暗色を濃くし始めた。 さて、これから美味い肴でも食べに出かけよう。 この前、偶然にも見つけた地元漁師推奨「土瓶」に出かけよう。 上手く見つけられると良いのだが。 磯前神社の大鳥居を抜け、くるりと商店街を回ると、いとも簡単に見つかった。 こんな近くにあったとは驚き。 ラッキーなことに、駐車場が一台分空いていた。 車を停めて中へ。 カウンター席が空いている。 「此処、良いですか」 「どうぞどうぞ」 お客さまが、茨城訛りで、笑顔で迎えてくれた。 この前の時も、この席だった。 懐かしい。 とりあえずは生ビールを注文。 勿論、ママはソフトドリンク、緑茶をオーダー。 黒板に今日のお奨めのメニューがたくさん書かれている。 隣のお客様に「今は何が美味しいですかね」 「秋刀魚ダッペ、焼いても刺身でもいいっぺ」 早速、両方を注文。 キラキラ輝いて透き通るような刺身。 醤油に山葵と生姜、どちらで食べても美味い。 やがて、塩焼きが登場。 丸まると太って、腹のあたりははちきれそうに膨れ、 強火の遠火でこんがりと焼き色も綺麗だ。 身をほぐし、大根おろしに醤油をかけ食べる。 今朝取れたての秋刀魚は違う。 内臓もコリコリ、噛むとブチュッと口に甘苦く広がる。 「この前来たときは、太刀魚を食べたんですがね。脂が乗って美味かったですね」 「太刀魚、秋だね。まだ上らないだっぺ」 「太刀魚の身、あんなに厚いとは驚きました」 「今の時期、赤いかもいけるッペ」 勿論、親父さんにオーダー。 透き通るように白いいかが刺身で出てきた。 山葵醤油で食べる。 ツルリとした食感、噛むとプチュッ甘みが広がる。 すぐ隣り合わせの大洗の地酒、サラサラとした柔らかな酒質、 月の井を飲みながら食べる地魚はやはり絶品。 次々に黒板のメニューを胃袋へ。 東風の刺身も注文。 生簀から網で掬い上げてられた姿は、 鯰のようで見栄えは悪いが、見かけと違って、 上品な白身のサッパリした食感が心地よく堪らない。 「ドンコもうまいっぺ、食べてみろ」 「親父さん、煮付けでよろしく」 ドンコは親父さんがウッカリ焦がして大失敗。 「わりいっぺ。作り直すけど待ってくれぺ」 「いいですよ、別に急ぎませんから」 生簀で網を入れた親父さん、「これ、こんなにでかいけど如何スッペ」 「ちょっと、大きすぎるね。次の機会にお願い」 残念至極、ドンコは幻になったが、これもご愛嬌。 「岩がきを食べてみっろ。うまいっぺさ」 注文して出てきた岩がき、一キロはあろうかと思えるほどのでかさにビックリ! 身はドデーンと殻の真ん中に鎮座している。 ふっくらつるつるはちきれんばかりに光っている。 ポン酢醤油で口のなかへ。 噛んで切るまでに一瞬の時が経過するようで、なんとも牡蠣身が厚く、 もっちりと食べ応えがある。 噛んだ瞬間、口の中に大洗の磯の香りが広がるようだ。 「親父さん、この殻持ち帰って良いですかね」 「いいっぺさ。こんなの小さい方だっペ」 親父さんは、調理場から出てきて、裏から大きな殻を持って来てくれた。 「まだまだ大きなやつあるっペが、これもって行けっペ」 「親父さん、ありがとう。店に飾っておきます」 酒も大いに飲み、浜の料理も充分に堪能。 回りのお客様達とも大いに談笑盛り上がる。 お隣の楽しいご夫婦とも懇意になる。 昔からの大洗の漁師さんで、60を過ぎてもバリバリの現役。 どんな荒海にも負けない、声にも表情にも身のこなしにもパワーが感じられる。 漁船や漁の面白い話しを聞かせてもらうとともに、漁船に乗せてもらう約束までしてもらった。 「今、海岸の家、俺達2人だけだっぺ、何時でも遊びにこいっぺさ」 「遠慮なしで図々しいほうですから、ほんとうに、お邪魔しちゃいますよ」 「いーといーともペっさ。そして、漁船で沖にいくっぺ」 奥さんに、家の住所を手帳に書いてもらった。 愉快で楽しい大洗の夜は、あっという間に更けてしまった。 「東京さ気を付けて帰るッペ」 「お邪魔しました。ご馳走様。また来ます」 地酒に地元の旬の魚、そして楽しい地元の人たちとの交流は最高の贈り物。? 7/14<水> |