小さな旅&日記


桜の季節がやってきた 
3.28<金>

とても、春らしい陽気になってきた。
近くの公園の桜が気になるので、行きがけに寄っててみることにした。
自宅のマンションから、公園までの道々、
白く少しばかり大振りの花、白木蓮が楚々と咲いている。
何処か恥ずかしげで、慎ましく、大人げで気品がある。
公園の桜は、まだ、シッカリと蕾を抱えていた。
子供達が、野球やサッカーをして遊んでいる。
さすがに、誰も、花見の準備をしている人はいない。
開花は、日曜日過ぎ頃からか。
油断は出来ない。

去年は、パッと咲いたと思ったら、
無情な雨、風に打たれ、アッという間に散ってしまった。
だいぶ昔の事になるが、私の母が、病院に入院していた時のこと、
病室の前の桜の老木に、桜花が咲き乱れていた。
風にまかれて、桜の花が煌びやかに輝きながら、舞い散っていた。
母は、外をジッと見やりながら、
「この桜を、後何回見れるのかな」
ボソッと独り言のように言った。

その時、母親は、自分の命もながくはないなと、悟っていたのかもしれない。
母は、自分の寿命を、シッカリと感じていたのだろう。
やはり、次の年、桜を見ずに他界した。
自分の寿命と桜花の季節とを、重ねあわせにして感じる。
日本人の心の中にある死生観は、
いつも桜花の中に秘められているような気がする。

気がついてみれば、私も、あと何回桜花を見れるのかなと、
指折り数えれば、苦もなく数え切れる年に、恐ろしくもなっているのである。
でも、50を過ぎれば、自分で決めた歳が自分の歳だと、
頑強にも思い込んでいる。


役者の西田さんが、演歌歌手に 
2003.3.15

ある日のこと、家に電話がかかって来た。
「西田です」
あまりに、唐突なので、思わず、「え、え?」
「マスター、ご無沙汰でスイマセン。あまり体調も良くないので、
店に顔を出せないで、すみません」
「なんだ、西田さんか。いったい如何したの。久しぶりだね」
「じつは、マスター、明日、空いてますか」
「何かあるの?」
「ええ、明日カラオケ大会と、僕の歌の発表会があるので、
ぜひ出席してほしいのですけど。如何でしょうか」
「何処で」
「大山の産文ホール。11時から始まります」

「今日は、土曜だから、多分朝まで営業だな。昼過ぎじゃないと無理だね」
「私が歌うのが、午後12時頃だから、その頃来て貰えないですか」
「12時はきついね。でも、何とか努力してみるよ。
間に合わなかったら、御免と言うことで」
「マスター、何時も無理言ってすみません」
「それはいいんだけど、<僕の歌>って、いったい何?どういう事なの」
「じつは、私西田、クラウンレコードから、歌手デビューしたんです」
「エッ!歌手?驚いたね。いつ?」
「今度の10月に、西田の新曲が発表されます。
それのお祝いをかねて、今回の運びになりました」

「それは目出度いね。ぜひ、明日は、ママと一緒に出かけるよ。出来るだけ早くね。
もっと早く電話してくれたら、皆にも連絡したのに。残念なことをしたね」
「マスター、大変でしょうけど、明日はお願いします」
私たちは、何時ものことで、やっとこさ起き出し、ママの運転で、大山産文ホールに到着。
私たちにしては上出来。1時前には何とか間に合った。
さて、会場は何処だろう。
何処にも、西田さんの会らしきものが見当たらない。
何かの間違いかなと、少し不安になる。
1階のホールをそっと覗いてみる。
違うみたいだ。

何か、ソシアルダンスの会みたい。
確か、2階のホールって言ってたような気がする。
半信半疑で2階へ。
ホール前には受付はあるが、看板もなにもない。
ママと2人でそっとなかへ入る。
舞台では、女性の人が、カラオケを気持ちよさそうに熱唱している。
会場には、年配の男女が、あちらこちらのテーブルに座り、
静かに座って、じっと耳をすませて、聴き入っている。
でも、西田さんは何処にも居ない。
どうした事だ。

私は、不安になり、ママを残して、他の部屋など探し、再度1階に下り、幻の会場を捜す。
やはり、何処にもあるはずがない。
あそこ以外に、そんな会場はない、2階のあそこのはずだ。
2階に戻り、ママの下へ。
すると、ママが高麗さんのおば-あちゃんと、なんと談笑してるではないか。
「高麗さんのおばあちゃん、覚えてる?幼稚園の頃、リマがいつもお世話になった」
「その節は、何時もいつも大変にお世話になりました。ところで、西田さん、知ってますか?
役者さんなんですけど、今日此処で、彼の会があるそうなんですけど」

「会長さんですか?」
「会長さん?何ですか、それ」
「雅の会の会長さんですよ」
正面の舞台の上に、デカデカと「雅の会。あなたもスター、歌の散歩道」と書かれた看板が飾られている。
おばーちゃんが、チラシを見せてくれた。
でも、何処にも、西田 圭はいない。
どうしたということ。
やがて、舞台に、西田さんがステージ衣装を着て、笑顔を振り撒き、気取った足取りで、壇上に現れた。
深々とお辞儀をし、そして、華やかに力強く、朗々と自分の作詞作曲の「金沢有情」を歌いだした。
私たちが分らなかった筈。
役者の西田さんは、演歌歌手「金沢 勇」になっていたのである。

2003年3月16日<日>
板橋区産文ホールで第2回「雅の会」主催
あなたもスター”歌の散歩道”があります。
入場は無料です。
会場:午前10時
開演:午前11時
終演:午後4時
これからも、演歌歌手
金沢 勇さんを応援してください。
「花咲く日まで」「金沢有情」を、有線で、どんどんリクエストしてください。