小さな旅&日記

「95歳にして、いまだ現役」
2002.9.19

8月20,21日、暗黒舞踏の創始者、
土方 巽を偲ぶ会があったみたいだ。
残念ながら、私は見損なったのだが、
95才にしていまだ現役、舞踏を踊り続ける。
大野 一雄は車椅子に乗りながら踊ったそうだ。
土方はヨーロッパのダンスに対し、ユックリユックリ、
スローモーションな動きで地を這い、
時には物に憑かれたように、痙攣しながらも、
人間の生の本源、「死・タナトス」を表現するかのように、
生命の限りなく深遠な世界を表現した。

西洋人の均斉のとれたな肉体は、天空へ、神へ
、たかくたかく飛び跳ね舞う。
躍動的な生命の「謳歌・エロス」に対し、
日本人のガニ股と胴長短足の不恰好な肉体を逆手に取り、
土方は大地に這いつくばるようにうねる。
グネグネとスローモーションな不思議な動き、
そして時には地の神が荒くれるかのように、
激しく取り付かれたように痙攣する。

かつてフリードリッヒ・ニーチェ<1844-1900>が
「悲劇の誕生」で展開したように、
西洋的アポロ的な完成され理想に対し、
ヂオニソス的で情念的な闇と暗黒の生命の根源を表現した。
大野 一雄は、
土方の遺作「病める舞姫」を笠井 叡とともに、
車椅子に乗りながら、躍ったそうである。

下半身を動かす事のできない大野氏は、
宇宙の霊や精と交感するかのように、
腕と手だけで
ひらひらと花びらのように、枯葉が散るように、
95歳にして、しなやかに、
そして感動的に踊ったのである。
彼が、本格的に踊り始めたのは、
確か60歳位になってからである。

8月31日、ジャズのビブラフォン奏者の第一人者、
ライオネル・ハンプトン氏、心臓病のため94歳にして死去。
かつてグッドマンとカルテットを結成し、
当時大変な差別と偏見に満ちたアメリカ社会にあって、
黒人と白人の人種の壁を打ち破ったと言われる。を
彼も、生涯現役を貫く。

1997年、クリントン大統領から、芸術功労賞を授与された。
フランスの歌手、アンリ・サルバドール、
1917年、西インド諸島の仏領アドループ生まれ。
7歳の時、パリに移住。
歌手歴55年。
1930年代からギターを演奏し始める。
2000年に出したアルバム「サルバトールからの手紙」が
150万枚の大ヒット。

83歳にして名門のパリ・オランピアン劇場でリサイタルを開く。
フランスの国民的な大歌手になる。
8月には日本でも初公演。
今年も、ギッシリと欧米のツアーが組まれている。
人間にとって、年っていったい何なのでしょうか。
はっきりしている事は、その年にならなければ、
決して理解できない事、
表現できない事が山ほどあると言うことだろう。

何かを表現する事は、人に何かを伝える行為でもある。
一生懸命に、ひたすらに長く長く行き続けることは、
悲しみ・憎しみ・歓喜・傷心・出会い・決別など、
いやがおおにも、人として多くの経験を積む。
そして、おのれの存在の悲しさや喜びを感じながら
、おおくの齢を重ねる。

人が生きることの意味や無意味さを感じる事が、
きっと、人へ何かを伝える表現行為の、
大きな力になるのかもしれない。
私も機会があったらと言うより、ぜひつくって、
素晴らしい年を重ねた、偉大な芸術家達の目撃者となり、
彼らの大いなる遺産を、
次の世代に伝えていかなければならないのだろう。

私の年なんか、彼らにとっては、
まだまだ若造の域を出ていない、
駆け出しであり、ヒヨッコなのであろう。
でも、そういう具合に謙虚になれることが、
一番大切なのかも。

「ギク!!アレレレ・・・・・・マタヤッテシモタ。持病のギックリ腰」
2002.9.10(火)

たいへん長い間お待たせしました、なんて、イッパシなモノ書きのようで、
なんて生意気な奴だなんて、思わないでください。
コレには、それなりに深い深いわけがあるんでござんす。
そうそう、先週の金曜日の仕事中、キクッと腰に、アチッときた。
コレはヤバイゾと思いきや、案の定、、お客さまが床においていた鞄に、
ググッと足を引っ掛けて、
腰に、ビビビー!!ッと、電流が走った。

アッアッアッ~~~~~、またもや、ヤッテシモター!!
シマッター!!後の祭り、イッカンの終わりであった。
その日は、ナントカカントカ、だましだまし仕事をしたが、
帰りの歩行は、ナメクジよりも遅し。
フニャフニャの蛸助の情けない足取り。
「今喧嘩したら、赤ん坊にでも、俺は負けるね」
なんて、それでも、ヘラズグチを叩きながら、
オッカナビックリ歩きながら、なんとかママの車で、
家まで、辿り着く。

明日、起きれなかったら、オラドウスルベーと心配しながら、
「明日は明日の風が吹くさ」
恐さ紛れに、グビグビと酒を飲んで寝る。
土曜日のまだ、午前、目が覚めた。
ダメだ!寝返りも打てない。
如何しよう。
商売人はコレだから辛い。
勝手に休む訳にはいかないのだ。
休みたいけど、休めない。
休もうと思えば、休めるけれども、
やはり勝手に休めない。

アンビバレンツな辛い感情にさいなまれながらも、
エイヤー!力の入らない腰に気合を入れて、
なんとかカントカ、
「ママ、俺、今日一人じゃダメダー、店に一緒に行って下さい」
情けなくも、懇願し、やっとの事で店に辿り着く。
せっかく、店を開けたのだから、皆さん来て下さい。
でも、たくさんゾクゾク来たら、
「俺、動けネー!でも、俺の片腕、ママがいるわサー」
不安と期待がゴチャゴチャで、
「何とかなるわさー!」

あいにくの小雨模様、こんなこんな腰の状態、
如何にもナランジャケンノーとか思っていたが、
なんか思いのほかお客様も見えて、
辛かったけれども、とても嬉しかった。
てな訳で、日曜日は、営業予定のところ、
急遽変更、突然、休みにしました。
来店予定のお客様には、大変に、失礼致しました。
お陰さまで、今日は少し良くなってるみたいです。
でも、座っているのが、一番辛いというのも、
悲しくなります。