2008.雪の河口湖20日(日)ー21日(月)

富岳風穴
20日(日)の早朝、河口湖へ出かけた。
目的は単純、富士山を見ながら露天風呂に入ること。
前日の天気予想は、曇りのち、夕方から雪だった。
中央高速を飛ばして、談合坂を越えたころ、銀嶺の霊峰富士の秀麗な姿。
何時見ても、雪の富士山は感動的だ。
今はまだ晴れ。
ひょっとすると、天気予報は幸運にも外れ!かも。

河口湖インターをおり、国道139号で鳴沢氷結へ。
だが、残念なことに、整備修復作業中で、休洞中だった。
急遽、計画変更。
富岳風穴へ出かけることに。
最近の我々の旅、ゆっくりのんびりと時間があるから嬉しい。
のんびりと本栖湖方面へ向かうと、暫らくして、富岳風穴に到着。
閑散とした駐車場、車を止め風穴へ。
すでにここは富士の樹海。
溶岩石にへばり付くように、木々が細く強い根を生やしている。
植物達の生命力の強さには、今更ながら瞠目する。
道の周りには雪が寄せてあった。
靴で蹴ったら、こちこちに凍っていた。

洞内の氷柱
入洞料290円を払い中へ。
すぐに入り口があり、大きな溶岩が口を開けていた。
階段を降りると、薄明かりの狭い道が続く。
今日の洞内温度は、0度と標されていた。
だが、思いのほか洞内は暖かい。
80メートルくらい進むと、無数の氷柱が立ち並ぶ洞。
透明で艶やかに光沢があり、
弱い照明に照らし出され、きらりきらりと宝石の耀き。
伸びやかで、微笑むように優美な姿。
大自然が織りなす作品には、典雅で気品がある。

天井は高かったり低かったりの、溶岩道の荒々しさ。
やがて、最奥に到達。
昭和初期まで使われていた、蚕の卵、種苗などの天然保存倉庫の再現室。
まさに、ここは平均気温3度の天然冷蔵庫。
温度、湿度も完璧だ。
延長201メートル、風穴の散策は終わりだ。
他に、誰も観光客もいない静寂。
2人で回るからよいが、たった1人では薄気味悪いだろう。
まったく音のない世界、全ての音が吸い込まれているような、無音の世界。
溶岩は全て玄武岩。
この岩の性質が、音を反響させないらしい。

風穴を出ると、外の外気が痺れる。
辺りには青木ヶ原樹海、自然遊歩道が整備されていた。
ぷらりぷらりと、早朝の樹海散歩と洒落込む。
富士山の側火山・長尾山の噴火による溶岩流。
1000年の悠遠な歳月が作り出した、面積30キロヘクタールの樹海。
ごつごつした溶岩剥き出しの散策道を歩く。
枯れ錆びた木々の海。
溶岩に巻きつくように、張り付くように、力強く根を張り伸ばす。
自然の逞しい生命力。
木々も動物もしかり。
地上に生あるもの、生きとし生けるもの、
全ての生物には、逞しくも躍動的な生命力が根源にある。
文明という名のもとに、文明国家と言われる国々は、
根源的な生命の力を、退化させ始めている。

富岳風穴辺りの樹海
駐車場に戻る。
富士五湖は度々来ている。
何処かに行きたいところも別にない。
時間に任せて西湖方面へ。
すると、15分位で、コウモリ洞窟に到着した。
ここは富士山麓最大の横穴型溶岩洞窟がある。
洞内には、変化にとんだ鍾乳石群。
そして、名前どおり、コウモリも生息していると言う。
だが、先ほど見物したばかりの洞窟。
今は日がさす、折角の暖かな陽気。
寒々とした洞窟めぐりは止めて、
太陽いっぱいの野鳥の森公園へ出かけた。

2年前も、「野鳥の森」へやって来た。
精進湖に宿泊し時、ママが部屋でこけた。
たいしたこともないと、タカを括っていた。
しかし、翌日になり、ママの足はだいぶ脹れあがってていた。
そして、行楽日和のその日、この森へやって来た。
だが、ママは散歩どころではない。
散歩することも出来ず、なくなく立ち去った苦い思い出。
今日はたっぷりの時間と元気。
公園の庭には、巨大な氷像がたくさんあった。
その氷像の彼方には、大きな富士山がある絶景なポイント。
残念なことに、冠雪した富士山の頭は、雲に隠れていた。

たくさんのカメラマンが三脚を立てて、シャッター・チャンスを狙っている。
だが、だんだんと陽光はおぼつかなく、そして、翳ってきた。
寒さしのぎ、公園の一角にある、2階立ての木製のギャラリーへ。
階段を上がると、森を見渡せる広い部屋があった。
窓辺に置かれた双眼鏡を覗くと、
色とりどりの可愛らしい野鳥が、餌さ台で、餌をついばみ戯れていた。
小さな浅い池では、小鳥達が水浴びをしていた。
ここは野鳥や野生の生き物の宝庫。
夜中になれば、狸、狐、野うさなどが活動をし始める。
すっかり、太陽は翳り、厚い雲が垂れ込み始めた。

野鳥の森公園と氷像
駐車場に戻る道、陽光を失って、冷気が沁みる。
時間つぶしに西湖を回って、河口湖へ。
途中、河口湖畔の県営駐車場前の2階のレストランで昼食をとる。
前回、河口湖へ来た時も、此処で食事をした。
従業員は皆年配だが、テキパキと動き、さり気なく親切。
絶好の立地条件の場所でありながら、料理は手抜きなしでしっかりしている。
最近の観光地、料理の質はかなりあがっている。
やはり、グルメブームとモータリゼーションが影響しているのだろう。
車さえあれば、美味しい所へ、苦もなく行ける。

河口湖を眺めながら、ゆったりと食事を終えたら、午後2時。
宿へ向かう途中、湖畔の広場で、「ウィンター・フェスティバル」の看板。
駐車場へ停めて、会場へ。
中には、ちょっとした食事の出来る店と、物産店があった。
買い物をして、そして、少し早いが、目と鼻の先、ホテルへ直行した。
河口湖大橋を渡って、目的地へ到着した。
ホテルは湖畔の温泉郷にあった。

河口湖畔・大石公園
到着時間は2時半近く。
フロントで記帳。
暫らくしたら、チェックアウト前にもかかわらず、部屋に案内してくれた。
河口湖に面する6階の部屋。
正面にどっかりと、富士山の威容が見えるのだが。
どんよりとした曇り空、なだらかな裾野が、微かに見えるだけだった。
まずは部屋で到着のビールを飲む。
そして、さっそく7階の大浴場へ。

旅の汗を流し、岩に囲まれた広い湯船で、手足を伸び伸び。
そこから、裸のまま階段を上り、上階の露天風呂へ。
8階の広々とした露天風呂に浸かる。
晴れていれば、この正面に、富士山の雄大な姿が見えるはずだ。
どうやら、天気予報通りの展開になって来た。
どんよりと、雲は厚く垂れ込み、微かに、白く冷たいものが舞い散りはじめた。
夕食を終わり、部屋に帰った頃、雪は本格的に降り始めた。
窓から湖岸を望めば、一面の雪化粧。
細かな雪がしとしとと降っている。
このまま雪は降り続けるのfだろうか?
まさかそんなことはないだろうと、
淡い期待を寄せるが、ますます雪は深く舞い始めた。

ホテルのロビー
8時頃、湖上の筏から花火が打ちあがり始めた。
雪の舞う夜空に、七色に耀く光の大輪が咲き乱れる。
その瞬間、湖上はきらきらと耀き、河口湖大橋が浮き上がる。
厚い垂れ込めた空、どーんどーんと鈍い音とともに、夜空を照らす鮮烈な花火。
次々に、舞い散り、光跡を夜空に残す。
光の洪水を眺めながら、河口湖町の地酒「甲斐の開運・大吟醸」を飲む。
どっしりとしていながらも、飲み口は爽やか、そして、切れ上がりも良い。
咽喉元をすっと落ちた後、吟醸香がすーっと戻り香となり広がる。
やはり、旅には地酒が最高に楽しく、旅情をかきたててくれる。

河口湖畔
一時間余りの花火の饗宴は終わる。
どどどどーんと花火の大連発のあと、ぱたっと静寂が訪れた。
降り続く雪で、湖岸も雪で白くなり始めている。
対岸のホテルの灯が、ぼんやりと幻影のように耀き、湖上に光を映す。
しんしんと夜は更け、酒を飲みながら寛ぎの時、すでに1時を回っていた。
明日は晴れますようにと、一縷の望みを託してベッドに入る。
きっと明日は天気晴朗、窓いっぱいに秀麗な富士山が見えるだろう。
そこそこに積もった雪も、冬日の陽光で融け始めていて欲しい。

湖上の花火
翌日、朝一番、6時半に目覚める。
ベッド越し、カーテンを引けば、雪は止んでいた。
起き上がり、外の景色を見る。
一面の白銀の世界。
湖岸には雪が積もり、路面にも雪。
遠くの山々も雪化粧。
帰りの道のりはかなりの難儀を覚悟する。
タオルを持って、取り敢えずは露天風呂へ。
廊下はさすがに凍るように寒かった。
7階の大浴場脇の階段を上る。
露天風呂から湯煙が上がっていた。

まだ誰もいない大きな湯船。
湯船の半分には、
風呂の湯温が落ちないように、巨大な蓋がしてあった。
ざぶりと身体を沈め雪の景色を眺める。
湖の湖岸よりの淵は雪で凍っている。
遠くの山々は雪の濃淡で霞んでいる。
微かに、富士山の裾野がおぼろげに姿を現している。
外気が凍れるほどに冷たいからだろうか、
昨日に比べて湯は熱く、そして、身体に沁みるような気がする。
露天風呂に迫る裏山の木々の梢も、雪化粧して重たそうだ。
生垣の真っ白な雪を、ごそりと掴み口に含む。
さくさくふわふわのきめの細かい雪が、一瞬の内に口の中にとろける。
僅かに残った雪の精を飲み込むと、微かに、蜜のように甘かった。

一面の雪景色。
遠くから、雪道を走る車の音が、切なげに聞こえる。
やがて、男性が一人やって来た。
軽く朝の挨拶を交わしながら談笑。
最近は、山に行っても海に行っても、人々は言葉を交わさなくなった。
キャンプに行って、隣りあわせでも黙視や無視。
寂しい時代になったものだ。
旅の途上、投宿した宿の露天風呂、
何気ない交流は旅の醍醐味の一つだ。
バトンタッチっで私は下の大浴場へ。
やはり、誰一人いなかった。

朝の河口湖畔
風呂を出て戻れば、ママは風呂から戻っていなかった。
無料のマッサージ・チェアーで身体をほぐして時間潰し。
暫らくしたら、上気した面持ちで戻って来た。
部屋でTV見ているうちに、朝食の時間8時がやって来た。
2階の食事処へ。
まだ誰もいない。
昨日と同じ席へ。
昔だったら、何時も一番最後だった。
人間、心もち一つでこうも変るものか。
昨日は向かい合わせだが、今日は湖に向かって並んでの食事。
正面の富士山が見えるようにとの計らいが嬉しい。

晴れているならば、雄大な富士山が見え、
湖上には逆さ富士の優美な絵姿。
しかし、富士山には大きな雲が覆い、
微かに富士山の広い裾野が見え隠れしているだけ。
夕食もそうだが、朝食も心づくし。
心のこもった食事をたっぷりといただく。
ホテルの人たちは、誰もがさり気なく優しく親切。
心暖かいサービスは楽しかった。
チェックアウトは10時。
何処にも寄らず、雪道をゆっくりと、気を付けて帰ることにする。
チェックアウトを済まし、駐車場へ行くと、
12センチ位は積もった筈の車の雪も、綺麗に掻いていてくれた。

河口湖町・河口湖インターの雪景色