シャリュトリューズVEPと至福の時 2015年7月1日 近くの病院に勤務するTさんと、職場の先輩が来店した。 モルトウイスキーやリキュールの大好きなTさんは、お酒の造詣が深い。 やがてリキュールの話になり、フランスの銘酒・シャルトリューズの話題になった。 そこで私が昔購入したシャリュトリューズVEPを開けることになった。 趣のある木箱を開け、シャリュトリューズVEPを取り出し開栓する。 だが蜜蠟され、強固に封印されている。 堅固な封印を解くと、中のコルクはボロボロで、コルクスクリューは用をなさない。 ソムリエナイフで、瓶の口を這わせながら、コルクを切り取る。 かろうじて落ちたコルク滓を漉し、グラスに注ぐ。 長い熟成を重ねたリキュールは、琥珀色の艶を帯び,、黄金色に輝く。 グラスに注がれたシャリュトリューズVEPを揺らすと、鈍い黄金の輝きに満ちている。 二人は小さな乾杯をしてから、ごくりと飲み込む。 その味は陶然とし、満ち足りた笑顔が浮かぶ。 そして私もご相伴にあずかる。 深い眠りから覚めたリキュールは、口の中に広がり、飲み込むと戻り香が耽美に漂った。 薬草系リキュールの最高峰シャルトリューズ(Chartreuse)の製造処方は、1605年にアンリ4世の宮廷人により、伝えられたという。 しかし使用する、アンゼリカ・クローブ・ペパーミント・ジュニパーベリなどの、薬草を入手するのは難しく、現実には作られなかった。 だが1764年のこと、幾多の経過ののち、フランス東南部に位置するグルノーブル山中の、カルトジオ会グランド・シャルトリューズ修道院に伝わる。 そして修道士ジェローム・モーベック(Jérôme Maubec)は、現在のシャリュトリューズ・ヴェールを誕生させた。 それは130種類の薬草から生み出される、高貴なリキュールであった。 だがフランス革命により、修道院は閉鎖され、シャルトリューズの処方も、紛失の危機に晒される。 しかし修道士たちの努力により、残された処方の写本を頼りに、シャルトリューズは復活された。 さらに1838年に同修道院のブルーノ・ジャッケ(Bruno Jacque)は、シャルトリューズ・ジョーヌを生み出した。 シャルトリューズ・ジョーヌ(イエロー)は、スパイシーでミントの香り高い、シャルトリューズ・ベール(グリーン)よりも、 蜂蜜の甘さが豊かに響き、リキュールの女王と称賛される。 このシャリュトリューズジョーヌVEPは、大樽で8年以上熟成させ壜詰している。 さらに瓶内でも熟成するので、私が購入して20年は経過し、約30年は熟成していることになる。 現在は1970年以降、民間企業体に製造を委託し、調合はいまだなお、3人の修道士が行い、処方の秘密は明らかにされていない。 VEPとはViellissementExceptionellementProlongeの略で長期熟成を意味する。 |