アイラモルト・ポートエレンは同じ歳だった!
2013年7月30日



Sさん夫妻と待ち合わせて、Mさんが12時過ぎに来店した。
そして3人は楽しい会話の花を咲かせていた。
やがてMさんがポートエレン(PORTELLEN)のオーダーをした。

そのシングルモルト・ウイスキーは、アイラ島のポートエレン蒸留所で生産されていたが、20年以上前に閉鎖されて幾久しい。
今市場にあるボトルは、独立系瓶詰業者のシングルモルトである。
アイラモルトにしては穏やかで、気品に満ちた風格がある。

そこで私は独立系瓶詰業者・プロヴナンスの197▽年蒸留で、200▽年に瓶詰めされた、23年熟成を出して差し上げた。
(Provenance Port Ellen Distillery Whisky 23YO )
それはそのボトルの最後の1杯であり、注ぎ終えると瓶に少しモルトが残った。
それは最後のモルトの涙の一滴、モルトへの感謝を添えてグラスへ注いだ。

確実に幻と伝説の領域に近づくポートエレン、出会うことはまさに至福の時である。
Mさんの顔に笑みが溢れ、遠い古の時を慈しんでいるようである。
私はMさんにボトルをプレゼントした。

そしてMさんは嬉しそうにボトルを見た。
するとMさん「マスター、このお酒、私と同じ歳です。蒸留した年が私が生まれた年です」
偶然とは不思議なもの。

愉しい時を紡ぎ、古の響きを伝えてくれるお酒が、飲む人が誕生した時と同じ時に蒸留されていた。
時として偶然は、人に至上のプレゼントを贈る。
偶然を演出したポートエレンも、Mさんの感動に感謝していることであろう。