カルバドス・クール・ド・リオン・獅子の心(Coeur de lion)物語 カルバドスと言えば、私たちが若い頃に見た名画「凱旋門」(原作 レマルクの小説)を想い出す。 イングリッド・バーグマンとシャルル・ポワイエがレストランで乾杯するシーンだ。 モノクロ画面で二人が大写しになり、憂愁を含みながら微笑む姿に、ヨーロッパの大人の世界を垣間見た。 その酒はノルマンデー地方の地酒で、「獅子の心」を意味するカルバドス・クール・ド・リオン(Calvdos Coeur de lion)は最高傑作と言える。 リンゴの実が小さいうちに瓶を被せ、瓶の中で育て終わると摘果し、その中へリンゴで作ったブランデー・カルバドスを注ぎ込む。 その途方もない努力の製法は、現社長であるクリスチャン・ドルーアン氏の父親が、1960年代に発明し、現在も忠実に受け継がれている。 フランスは一般的にラテン民族と思われているが、様々に気候風土が異なるように、民族や文化も多種多様である。 北西に位置するブルターニュ地方の祖先は、ケルト系民族であり、南はラテン系でありアルザス地方になればゲルマン系も混在する。 ではノルマンディー地方はと言えば、実はバイキングの子孫であり、9世紀頃に現在の地を征服し定住した歴史を持つ。 その地には野生のリンゴがたわわに実り、その果実からシードル(リンゴの醸造酒)を作った。 南のラテン系の人々はブドウからワインを作ったが、ノルマン人はリンゴ酒を飲み、さらに強い酒を作った。 それはシードルを蒸留して作ったオー・ド・ヴィード・シードル(Eaux-de-Vie de Cidre)であり、そのなかでも有名なリンゴブランデーがカルバドスである。 そのカルバドスが製造された記録は遠く1553年に遡る。 ではラテン系の響きを持つカルバドスと言う名前の起源は、何時なのであろうか? 1558年のこと、当時世界最強を誇るスペイン無敵艦隊の軍艦「エル・カルヴァードル」が、 イギリス海軍を追尾し攻撃の途次、激しい暴風の猛威に晒され座礁し難破した。 その地が現在のカルバドスで、名前はカルヴァードルに由来しているとも伝わる。 ブランデー・カルバドスは、コニャックやアルマニャックと共に、AOCに指定され製品の絶大な保証を得ている。 AOCとは Appellation d'Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)の略称であり、 1935年にフランスで制定され、現在でも国立原産地名称研究所(INAO)が厳正な管理をしています。 つまりフランスの原産地呼称(AOC)に則り、フランス北部ノルマンディー地方カルヴァドスで、 カルバドス県産のリンゴを原料にして製造された、リンゴ・ブランデーを言う。 その中でも、特にAOCペイ・ドージュ(Pay d'Auge)のものは、単式蒸留器で蒸留された最上のカルバドスとして認められている。 そのペイ・ドージュ地区の中でも、北部の優良地フィエフ・サンタンヌに、広大な自社リンゴ 園を保有するクール・ド・リヨン社は、 醗酵、蒸留、熟成、ブレンディングまで全て自社で行っている。 そして現在、クール・ド・リヨン社製品の内の75%は、50ヶ国 を超える国々へ輸出されています。 写真のクール・ド・リヨンは20年以上前に購入し、店内に寝かしておいたものです。 現在は瓶内で成長するリンゴの写真が、カラー印刷された紙の箱に収められています。 私が購入した当時は写真に見れるように木箱に収められていました。 百獣の王ライオン、まさに獅子の心はクール・ド・リオン社の誇りを象徴するのであろう。 熟成されたリンゴの果実と、そのリンゴから生まれたかカルバドスが生み出すハーモニーは典雅に響き合います。 そして20年以上の時の恵みがもたらす至福をお愉しみください。
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