モカコーヒーが日本市場からなくなる?
2009年5月23日

去年のこと、コーヒー会社に勤める女性が、久しぶりにやってきた。
「マスターの好きなコーヒー、モカですよね。持ってきてあげたかったんですけど」
「どうかしたの?」
「何故だか、モカだけ、日本にほとんど輸入されなくなっちゃったんです」
「そう言えば、モカのリキュールも、手に入りにくくなりましたね。
サントリーのエルメス・モカなど終売ですから」
「そうなんですか。何時復活するんでしょうか」

いったい如何したことなのか。
その原因は、2008年下旬に遡る。
モカコーヒーのメッカ、エチオピア産の輸入品に、
厚生労働省認可の基準以上の、農薬が検出されたことに始まる。
そこで、厚生労働省は検査を強化し、全量検査の運びに至った。
結果はほとんどの豆から、日本では禁止されている、4種類の基準値以上の農薬を検出した。
検出の原因は、豆を入れる麻袋なのか、豆そのものにあるのか、いまだ原因は断定できない。

エチオピアのモカコーヒーは、日本のモカの98%を占める。
すでに、ほとんどの商社は、原因不明のまま、輸入を控えている。
コーヒー業者は、モカコーヒーに近い味を作るために、
焙煎やブレンドを工夫し、腐心しているという。
モカの産地は、アラビア半島南部のイエメンと、アフリカ大陸北東部のエチオピア。
イエメンのモカ・ハタリは世界最高と賞賛されている。
エチオピアのモカはモカ・ハラー、モカ・ハラリと言われ、世界で愛飲されている。

今年は、中南米など、コロンビアを筆頭に、コーヒーの生産量が減少した。
原因は、天候不順やら、老木の植え替えなどによる。
だが、一年ごとに、豊作と不作を繰り返す、
世界1のコーヒー生産国のブラジルは、豊作年にあたる。
コーヒーの価格水準は、例年並みに安定するだろう。

コーヒーカップに注がれたモカコーヒー。
柔らかく揺れながら立ち上る香は妖しくも艶やか。
口に含めば、微かに酸味が躍り、異国の華やぎが甘やかに広がる。
一日も早く、モカコーヒーが飲める日が、来てほしいものだ。