映画「東京物語」の後、土佐の地酒「久礼」を愉しむ
2015年12月15日

日曜日の夕刻、自宅でのんびりと、映画『東京物語』を観る。
1953年に公開された、小津安二郎監督の名作である。
東京に住む息子や娘たちを、尾道から訪ねる老夫婦の物語である。

映画の場面は、監督と同じ目線のローポジションで、固定されたカメラが、家族の風景を描き出す。
映像は気品があり、静謐さに満ちている。
笠智衆と東山千栄子の老夫婦に、哀愁と情感が滲み出る。

戦後の荒廃から8年後に、公開されたモノクロ映画は、日本の知性と良心と、繊細な感性の素晴らしさを、改めて教えてくれる。
約2時間半近くの映画を見終え、私のささやかな晩酌の時刻になっていた。
時々立ち寄る酒屋で買い求めた、高知県中土佐町にある、(有)西岡酒造店の、手詰直汲み「久礼」の封を切る。


久礼 手詰直汲み 特別純米 無濾過生原酒
 【アルコ-ル度数】17゜【日本酒度】 +5 【酸度】 1.8
【原料米及び精米歩合】  松山三井60%精米
 【酵母】高知酵母  杜氏 河野幸良(土佐杜氏)
仕込水:四万十川源流地下湧水


高知県高岡郡中土佐町久礼
江戸時代中期の天明元年(1781年)に、初代井筒屋仁助が創業

トクトクと心地よい音を響かせながらグラスに注ぐ。
グラスに細かい霧がかかり、お酒は微かに霞んでいる。
この色合いが無濾過の証明である。

グラスを持ち香りをかぐと、新酒あらばしり原酒が匂いたつ。
口に含むと爽やかな酸味とともに、柔らかな弾力を感じ、なめらかに口内を滑る。
やがて熟れたメロンのように、ふくよかな匂いが漂う。

そしゴクリッと飲み込むと、喉元をするすると滑り、胃の腑に落ち着いた。
さらに鼻孔から、戻り香りが長い余韻を奏でる。
土佐の漁師町、鰹漁で有名な久礼で醸された男酒は、新酒の爽やかさにも増して、力強い旨味に溢れていた。