カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)のボンド・マティーニはいかが

2006年公開のマーティン・キャンベル監督の007シリーズ「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」で、ベスパー・マティーニが登場する。
それまでジェームス・ボンドが飲むマティーニは、ウォッカ・マティーニで、ステアせず、シェークするものであった。
今回は英国人俳優ダニエル・クレイグが演じるボンドは、モンテネグロにあるホテル・カジノ・ロワイヤルで、ポーカーの大勝負に挑む。



相手は国際テロ組織資金の黒幕、マッツ・ミケルセンが演じる、頭脳明晰なル・シッフルが相手だ。
第一ラウンドでボンドは、大勝負に出るが、読みが外れ大敗を喫する。
その勝負の時、ウェイターを呼び、飲むカクテルが、ベスパー・マティーニ (Vesper Martini) である。



ボンドはウェイターにドライマティーニを注文し、細かくレシピーの指定をする。
深めのシャンパーニュゴ・にブレットに、ゴードンを3、ウォッカを1、キナ・リレ(Kina Lilletを1/2。
冷えるまでよくシェークし、大きなレモンの皮のスライスをグラスに入れると告げる。

'A dry Martini,'
he said. 'One. In a deep champagne goblet.'
'Oui, Monsieur.'
'Just a moment. Three measures of Gordon's, one of vodka, half a measure of Kina Lillet.
Shake it very well until it's ice-cold, then add a large slice of lemon-peel. Got it?'

この映画が公開されると、フランス南西部に位置する、従業員7人程の酒造会社に、キナ・リレの注文が殺到した。
キナ・リレは1887年に、ボルドーのポデンサック村で、ポール・リレとレイモンド・リレ兄弟により誕生したアペリティフワイン。
だが残念なことに、現在はキナ・リレは生産されておらず、後継のキナ・ブランが、キナ・リレの味を伝えている。



キナ・ブランは白ワインをベースにしたベルモットで、キニーネは勿論、コニャックやたくさんの香草が含まれている。
キナの樹脂から抽出されたキニーネは、かつてマラリヤの特効薬であり、カリブの島々では大変に重要な医薬であった。
昔のトニックウォーターには、キニーネの成分が微量入り、ほろ苦さを作りだしていた。



さらにキナ・ブランはフレンチオークの樽で1年ほど熟成し、黄金色に輝きを帯びたのちに出荷される。
味は程良く甘く、キニーネの苦さが円やかに包まれ、軽い酸味が心地よく口の中に広がる。
ちなみにベスパー・マティーニの名前は、ジェームス・ボンドの恋人役(ボンドガール)の名前であり、
女優のエヴァ・グリーンが扮する、ヴェスパー・リンドに由来する。

ベスパー・マティーニ (Vesper Martini)
ドライ・ジン 60ml
ウォッカ 20ml
キナ・リレ (リレ・ブラン) 10ml
レモンの皮のスライスを螺線にして、グラスの中に飾る

追記
「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」でラム酒が登場。
殺しのライセンス「00(ダブル・オー)」の称号を得た、ジェームス・ボンドは、最初の任務でカリブ海に浮かぶ島へ渡る。
そしてホテルのバーで飲んでいた、ラム酒マウントゲイのソーダ割りは美味しそうだった。



マウントゲイ(Mount Gay Rum)
カリブ海に浮かぶ西インド諸島のバルバドス島産。
かつてバルバドス島では、1650年ころから、ラム酒が造られており、マウントゲイも1667年には、ラム酒を製造していた。



が正式に製造免許を取得して、創業したのが1703年である。
島に溢れるサトウキビを原料に、サンゴ礁の岩盤から湧出した良水を加え蒸留する。
酒名は17世紀に、この島でサトウキビ農園を所有していた、ウイリアム・ゲイの名前に由来する。



マウントゲイ(Mount Gay Eclipse Rum)
エクリプス
(Eclipse )は皆既日食の意味。
1910年、皆既日食とハレー彗星が、同時に通過したことに想起して誕生した。
単式蒸留機と連続蒸留機で蒸留された原酒の、2年熟成から7年熟成原酒がブレンドされている。