季節限定無濾過生酒・かめぐち酒、新潟から届く
2013年2月19日

2月15日(金)の午後7時頃、宅急便が届いた。
四角いダンボールに貼られた送り状を見ると、品物は日本酒であった。
送り主は12年くらい前、新潟の実家に戻ったIさんだった。

Iさんはプロボクサー目指して東京のヨネクラジムに入門し、名トレナーの下でトレーニングを積む。
そしてライト級でデビューも決定した時、父親が脳梗塞で倒れ重態になった。
一人息子のIさんは余儀なく実家のある新潟に戻った。

そんな状態の中、プロデビューをする機会を失い、アルバイトをしながら私の店に度々訪れてくれた。
その後事情があり新潟へ戻り、地元の会社に就職した。
彼の実家は偶然にも私の母の実家の隣町で、父親は私と同い年で何かとお互いに親近感もった。

今でもお盆休みや元旦に東京を訪れ、東京にいる昔の仲間と、私の店に来店してくれる。
去年の大晦日は残念ながら来店は叶わなかった。
律儀な正確のIさん、きっと正月の挨拶がわりに、日本酒を送ってくれたのであろう。

厳重に包装されたダンボールを開けると、白い緩衝材に包まれた茶色の昔懐かしい甕が顔を出した。
その甕には和紙の封がしてあり、かめぐち酒と書かれた黒い大きな文字が浮き出た。
甕を手に取り揺らすと甕の中で、日本酒が鈍い音をたてながら踊っていた。

そして店が終わりダンボールに詰めなおして自宅へ持って帰った。
早速、ダンボールから日本酒を取り出し、甕に巻かれた匂い立つ藁縄を解く。
そしてかめぐち酒と書かれた和紙を外すと、厚紙が貼られていた。

さらにその蓋を外すと、透明なビニールの袋の中に、日本酒が黄金色に輝いていた。
ビニールの袋を厳重に巻くゴム栓を開けた瞬間、新酒の香りが立ち上った。
かめざけに付いていた青竹の柄杓でグラスに注ぐと、さらに匂いが部屋に漂った。

グラスを柔らかく揺らすと空気に触れた新酒が、グラスに酒紋を描きながら香りを放つ。
一度も火入れをしていない無濾過生原酒を口に含むと、とろりと円かに舌先へ甘く転がる。
雪深い厳冬の1月に仕込まれ、2月12に発売されたもち米四段仕込みの季節限定の新酒は、爽やかさの中に力強いコクを感じた。
そしてふくよかに新酒の香りが、戻り香となり口内を満たしてくれた。

かめぐち酒・姫の井の醸造元・石塚酒造鰍フある柏崎市高柳を調べてみた。
すると蔵元からほど近い場所に、私の父親の実家があった柏崎市善根があった。
私が小学生の頃、冬の雪深い道を父親と二人で歩いたことを思い出した。

叔父さんの結婚式の帰り、父親と二人で信越線安田駅から、一里の雪道を歩いたことを。
駅から三キロ程慣れない雪道を歩くと、鯖石川にかかる橋へ出た。、
川の流れは渦を巻き、激しい音をたてながら流れていた。

川岸には雪が高く積もり、見渡す景色は一面の雪景色。
日が落ち初め夕闇も迫る道を辿り、父の実家に到着した時、もう雪道を歩かないですむと思い嬉しかった。
すでにあれから50年以上の時が経つ。