王家の酒、ドランブイ

私の好きなリキュールに、スコットランドを代表する、アルコール度数40度、エキス分35%のドランブイ( Drambuie)がある。
Drambuie=満足する飲み物」とは、スコットランド地方に住むケルト人の言葉、ゲール語の「dram=飲む」と「buidheach=満足な」を合成した名前である。
ハイランドのモルトウイスキーに、スコットランドに自生する
ヒースの花から集められた
ヘザー・ハニーと呼ばれる蜂蜜や、ハーブ、スパイス等を加えた、甘くそしてパワーのあるお酒だ。
私の店では、お客様が疲れている時などに、出して差し上げるととても喜ばれる。

代表的なカクテルだと、ラスティ・ネイル (Rusty Nail)がある。
カクテルの色が赤茶けているので、錆びた釘と名付けられ、またイギリスの古語で「古めかしい」と言う意味もあり、昔から人々に親しまれている。

さらにドランブイには、スコットランドにまつわる歴史的なエピソードが伝えられている。

1668年ー1689年に名誉革命が起こり、フランスへ亡命していたジェイムス7世の孫、ジェイムズ・フランシスが、王位継承権を争う武装蜂を起する。
それは1707年の「連合法」によって成立した、ハノーヴァー家が継承する、グレイト・ブリテン連合王国への挑戦状であった。
その後、1745年、その子チャールズ・エドワード・ステュアートが挙兵し、フランスからのフリゲート艦を率い、スコットランドの西海岸から上陸した。

さらに、スコットランドの勇猛果敢な、ハイランダーの軍勢3000人の加勢を得、エジンバラを攻め落とし、さらに南下する。
やがてロンドンの北200キロまで攻め寄せるが、それを迎え撃つ、カンバーランド公ウィリアム指揮下の軍勢10000人により、南進を阻まれた。
そして北へ退却するも、1746年4月16日、インヴァネス州カロデン・ムアの沼沢地における決戦で大敗をきっする。

敗走するチャールズの首には、3万ポンドの懸賞金が掛けられた。
失意の内に、チャールズはへブリディーズ諸島のユーイスト島へ逃走。
その時、スカイ島の豪族ジョン・マッキノン(John Mackinnon)は、敵軍からチャールズを匿い、イングランド軍の探索をかわし、チャールスをフランスへ亡命させた。

その危険を顧みず、亡命を成功させてくれた恩賞として、 ジョン・マッキノンに与えられた酒がドランブイである。
その時から、王家秘伝の酒の製造方法などが、マッキノン家へ連綿として伝わったのである。
その逸話を示すように、ドランブイのラベルには、「Prince Charles Edward stuart's Liqueur」と書かれている。

下って、1906年、酒造会社の共同経営者となったマルコム・マッキノンは、王家秘伝の酒の商品化をはかり、イギリス上院へも納めるようになる。
そして、第2次世界大戦後には、大量生産するようになり、さらなる名声を獲得していった。
かのアメリカの映画スターで、愛称ボギーと呼ばれた、ハンフリー・ディフォレスト・ボガート
(Humphrey DeForest "Bogie" Bogart・1899年−1957年,が、愛飲したお酒としても有名である。


ドランブイを使ったカクテル

ラスティ・ネール(Rusty Nail)
スコッチ・ウイスキー・・・・・・2/3
ドランブイ・・・・・・・・・・・・・・1/3
氷を入れたロック・グラスに注ぎ、軽くステアする。

ゴールド・ラッシュ(Gold Rush)
アクアビット・・・・・・・・・・・・・2/3
ドランブイ・・・・・・・・・・・・・・1/3
氷を入れたロック・グラスに注ぎ、軽くステアする。

セント・アンドリュース(Saint Andrews)
スコッチ・ウイスキー・・・・・・1/3
ドランブイ・・・・・・・・・・・・・・・1/3
オレンジ・ジュース・・・・・・・・1/3
シェークして、カクテル・グラスへ注ぐ。

ホット・ドラム(Hot Drum)
ドランブイ・・・・・・・・・・・・・・・30cc
ホット・グラスにレモンジュースを搾り入れ、お湯を注ぐ。
好みにより、シナモンスティックを添える。