猫とお酒のお話
2013年6月5日

お酒には何故か黒猫の絵が多く使われる。
ドイツの モーゼル地方のフルーティーで爽やかな白ワイン、ツェラー・シュヴァルツ・カッツは名前のとおり黒猫。
アメリカの作家・エドガー・アラン・ポー「黒猫」(The Black Cat)の挿絵、A・ビアズリーが描く黒猫は不気味だが、この黒猫は精悍で高貴な雄猫の面立ち。

フランスのリキュール・シャノワールの黒猫は愛くるしい。
こちらは牝猫の愛嬌と優雅さがある。
その味は妖艶にして甘露である。

黒猫と言えばやはりアンリ・ド・トゥルーズ=ロートレックであろう!
大きな瞳で肩ごしにじっと見据える目は、騎士のように端正な佇まいできらりと輝いている。
日本では葛飾北斎の北斎漫画の猫たちの、なんと愉快で躍動的なことか。

一瞬の猫の素早い動作を、見事に掬い取っている。
藤田嗣治も猫が大好き、北斎漫画に影響されたふしがある。
乳白色の金髪女性が、一糸まとわぬ姿で、こちらを見ながら優雅に横たわる。

その足元に毛足も長い真っ白な猫が、のんびりと座っている。
その時、俺も猫の代りになりたいなと、つまらぬ妄想をする。
そこで私の本職のお酒の話。
 
私のお店のマスコットたち
トムコーリンと言う有名なカクテルがある。
このカクテルには、トムジンと呼ばれるジンが使われる。
だがかつて日本ではトムジンが入手し難く、ドライジンにシュガーを加え、トムジンの代用をしていた。

そのトムジンのラベルにも、黒猫が描かれている。
樽の上でこちらを見ながら右手を伸ばし、何かを誘うようだ。
かつてイギリスはロンドンで18世紀の昔、酒の販売業者・ブロードシートが、ジンの自動販売機を発明した。

その機械にはトムキャットと呼ばれる、黒猫の木彫りの置物が置かれていた。
自動販売機の雄猫の口にお金を入れると、黒猫の足から1%から2%ほどの砂糖が加えられた甘口のジンが、適量流れ出たと言われる。
黒猫の自販機は大変な評判を呼び、甘口の新しいタイプのジンは飛ぶように売れた。
そのトムキャットが現在でも、トムジンに描かれている。

猫と言えばやはりウイスキー・キャットであろう。
グレンタレット蒸留所のタウザー嬢(Towser)、生涯で捕まえたネズミの数は、28,899匹だとギネスブックに記録される。
タウザー嬢はネズミを捕まえると、誇らしげに主人に見せに来たと言われる。
26年前に読んだ本に、C.W.ニコル作「ザ・ウイスキーキャット」がある。

タウザー嬢を彷彿とさせる猫たちが登場する。
猫好き&ウイスキー好きの人は、ぜひ読んでください。
そしてwhisky Cats&Other Catsに乾杯!