パッサーズ ブリティッシュ ネイビー ラム ガンパウダー プルーフ 54.5%物語 Pusser's British Navy Rum Gunpowder Proof 54.5% ブリティッシュ・ネイビイ・パッサーズ・ラムは、私の好きなラムだ。 店が開店した時から置いている。 1970年まで、イギリス海軍御用達であった。 考えてみれば、私の店が開店したのが、1984年だから、その14年前までの長い歴史を持つ。 ラム酒は帆船時代から、連綿と海軍の水兵たちに、水がわりに提供されていた。 その量は1日半パイント、約1合半である。 しかしその支給される量は、少しずつ減ら去れていったが。 それでも日本人には、相当の量であった。 ラム酒とイギリス海軍には、色々なエピソードがある。 その一つに、カクテル・グロッグがある。 1745年のある日のこと、エドワード・バーノン提督は、水兵たちに水で割ることを提唱した。 その割合は2分の1パイント(284ミリリットル)を、4倍に希釈することだった。 だが、水兵たちは怒り心頭、「馬鹿野郎、水で割れるか! グロッグ野郎!」と罵倒した。 船長は何時も、絹と毛の混紡製のグロッグラム・コートを着ていた。 そのバーノン提督のコートにちなんで、グロッグ・カクテルが生まれた。 また、ラム酒のことを、ネルソンズ・ブラッドとも呼ぶ。 それは1805年、トラファルガーの海戦に遡る。 ナポレオン戦争最大の海戦で、イギリス海軍がフランス・スペイン連合艦隊を、壊滅させた。 その時の提督が、ホレーショ・ネルソン(1758年ー1805年)である。 旗艦ヴィクトリー号の先頭に立ち、敵弾を恐れず、信号を発した。 England expect that every man will do his duty(英国は各員がその義務を尽くすことを期待する)と。 提督は海戦史にのこる大勝利し、イギリスは制海権を奪い、イギリス本国を救った。 だがネルソン提督は、敵の砲弾に倒れ、戦死した。 遺体は腐敗を防ぐため、ラム酒(ブランデーとの説もある)の樽に納められ、本国へ帰還した。 そしてラム酒の樽を開けると、1滴のラム酒は、残っていなかったという。 勇敢な船長にあやかり、水兵たちが、盗み飲んでしまったのである。 それ以来、ラム酒のことを、ネルソンの血と、呼ばれるようになったと言われる。 さて本題のパッサーズラム・ガンパウダーに戻る。 ガンパウダーとは、物騒な名前である。 酒にうるさい水兵たちは、正真正銘のラム酒を求めた。 水で薄められていない、強度のラム酒である。 そこで毎日、アルコール強度を確かめた。 ガンパウダーに、ラム酒を少量流し、点火する。 その時、青い炎で燃え上がればOk、それはアルコール強度109%プルーフ54.5の証明である。 混じりけなしのアルコール強度109%プルーフの、ラム酒であることが、証明されたのである。 それが現在も使われる、アルコール強度・プルーフ(Proof=証明)の語源である。 もしも点火しなければ、船のパッサーは、海へ投げ込まれる、危険さえあった。 今回紹介するブリティッシュ・ネイビイ・パッサーズラムは、イギリス海軍仕様強度54.5度の本格派である。 3年以上、バーボン樽で、熟成されている。 かつてはトリニダード・ドバコ産と、ガイアナ産のラム酒を、ブレンドしていたが、現在はガイアナ産だけを使用している。
2022年12月9日 |