The Hanky Panky cocktail物語

1903年頃、ロンドンの中心地にあるサボイホテルの「アメリカン・バー」に、2人の人気女性ヘッドバーテンダーがいた。
“Miss B”とも“Kitty” ‟と呼ばれた、ルース・バージェス〈Ruth Burges)と、エイダ・コールマン(Ada Coleman1875ー1966) である。
だが、彼女たちは異なるシフトで仕事をし、共に働くことはなかった。

約⒛年以上の長い間、2人は口を利くこともなかった。
それはサボイホテルで、23年の長きにわたって、ヘッドバーテンダーのコールマン女史が、
自分の人気カクテルのレシピーを、盗まれたくなかったからのようだ。

彼女は愛称でコリー“Coley.” と呼ばれる、ホテルの人気バーテンダー。
お客さまにはマーク・トウェイン, マレーネ・ディートリッヒ、チャーリー・チャップリンや、ウェールズ大公など、エグゼクティブや有名人がたくさんいた。
ある日のこと、イギリスで有名な俳優で、演出家兼プロデューサーの、チャールス・ホートレイ ( Charles Henry Hawtrey 1858 –1923)が来店した。

そして、毎日、舞台の公演で疲労困憊の彼は、贔屓にしている彼女に、カクテルをオーダーした。
「コリー、疲れが取れる、パンチの効いたカクテルを、何か作ってくれないかな」と。
彼女は応えた、「新しいカクテルを作るために、少し時間を下さい」

そして後日、ホートレイ が来店したとき、彼女はオリジナルカクテルを、彼の前に置いた。
彼は即座にカクテルを飲むと言った。
「コリー、これはまさに、Hanky Panky(手品だ、魔術)だ!」と。

それ以来、このカクテルの名前は、ハンキーー・パンキーとなり、人気カクテルとなった。
彼女は現在も、世界中のバーテンダーに、多大な影響を与えた、伝説的なバーテンダーとして記録されている。
ちなみに、彼女が「アメリカン・バー」を去った後の後継者は、偉大なバーテンダー・ハリー・クラドック(Harry Craddock1875~1963)である。

Hanky Panky Cocktail Recipe
ジン30ml
スイート・ベルモット 30ml
フェルネット・ブランカ2dash

ステアして、カクテル・グラスに注ぎ、オレンジ・ピールをかける。
2016年11月29日