Hさんとベスパー・マティーニ・トニック

2023年3月25日

先週の金曜日、名古屋からHさんが、来店した。
Hさんは名古屋にある、医療系大学の数学教授。
専門を聞いても、私にはチンプンカンプンである。

何時も重そうな鞄を持って、来店する。
ある日のこと、「Hさん、重そうな鞄ですね」と言ったら
「見てみますか?」と言いながら、鞄を開けてくれた。

中にぶ厚い書類の束が、2冊あった。
それは英語で書かれた、学術論文。
今日は手ぶらである。

昨日、東京へ帰省し、翌日の今日、来店したのであった。
私の店の近くに、自宅があり、ときどき、お母さんの様子を、見に来るのだ。
そのついでに、私の店に、立ち寄ってくれる。

彼はたいへんなな知識人で、該博な知識は、とても精度が高く、範囲も広い。
プロレスや落語、さらにお酒などにも、造詣が深い。
ある日のこと、奥に柳家権太郎さんたち一門が、来店していた。

「Hさん、奥の人、分かりますよね」ときいたら
「権太郎師匠ですね」と、即座に回答が返って来た。
さらに権太郎さんの、落語について、楽しそうに語った。

とにかく知識の幅が凄い。
だから、聞いていても楽しい。
かれはウイスキーが好きだ。

その日は、マスターのお勧めで何か、と言ううので、
ピュアモルト・ロイヤル・スターリング(Royale Stirling)を、スニフターに注いだ。
そのあとスキャパ(Scapa)を飲む。

そしてラム酒で何かと、言われたので、
ブリティッシュ・ネイビイ・パッサーズラム・ガンパウダー・プルーフ
(British Navy Pusser's Rum Gunpowder)を出した。
そのあと、カクテル・チェリー・ブロッサムを、注文された。

〆は何時もカクテルである。
ブロードウェー・サーストで、決まりのことが多い。
さすがに今は、桜の季節、カクテルも季節の装いである。

さらにカクテル・ブルー・ムーン(Blue Moon)をたのむ。
すみれ色が美しい、上品なカクテルである。
そして最後に、ジン・トニックを注文した。
私の店では、最後にこのカクテルを、オーダーする人が多い。

私はHさんに提案した。
007カジノ・ロワイヤルのベスパー・マティー(Vesper Martini)の
トニック割りは、いかがでしょうかと。
Hさんは「それでいきましょう」と。

そこでゴードン・ジンとウォッカに、キナ・リレ(Kina Lillet 現Lillet Blanc)を
シェーカーに入れ、ハードシェークしグラスへ。
キナ入りのトニックウォーターを注ぎ、レモンピールを飾る。
名づけて、ベスパー・トニックが、完成した。