マスター&ママの小さな旅
晩秋の小布施・湯田中を訪ねて
2021年10月24日

好天の晩秋、信州の北、小布施を訪ねた。
東京を発ち、高速を北上すると、3時間ほどで到着した。
私の子供のころなら、丸一日の旅である。
 
小布施に着いたのは、午前11時頃だった。
市街地の駐車場は満杯で、少し離れた町営駐車場に停める。
昼前だというのに、小布施の町に、人が溢れていた。
 
この人混みは、想像できなかった。
緊急事態宣言下のストレスが、いっきに噴き出したのであろうか。
人々の顔に、にこやかな笑顔が、戻っている。
 
小布施に来るのは、2回目である。
前回来たのは、10年くらい前であろうか?
小布施の古刹・岩松院の、葛飾北斎が描いた天井画「八方睨みの鳳凰図」を観にいった。

本堂の天井一杯に、21畳の巨大な鳳凰が、描かれていた。
私たちが訪れる、少し前までは、本堂に寝ころび、眺めることができたのだが、
その時は、椅子に座っての鑑賞だった。

89歳の最晩年の作品は、金箔を4400枚使い、天井画の迫力に、圧倒されたことを思い出す。
小布施の豪商・高井鴻山の招きで、北斎は83歳のときから4回、小布施を訪れた。
そして40余点の肉筆画を残した。
 
現在、小布施に記念館がたち、小布施は北斎と栗の里になっている。
小布施の栗は、600年の歴史を誇り、かつては徳川将軍への、献上品であった。
私たちも200年の歴史を持つ、桜井甘精堂で、栗ご飯を食べる予定だった。
 
だがすでに行列ができ、1時間待ちだった。
栗ご飯は諦め、桜井甘精堂でお土産を買い、市街地を散策した。
歴史溢れる、小布施の市街地は、風情のある民家や商家が、建ちならぶ。

市街地を走る、国道403号沿いは、由緒溢れ歴史を感じさせる。
国道から少し入った、北斎記念館前の広場に、観光バスが、数台停まっていた。
小布施に来る途中の高速道にも、観光バスを度々見かけた。

緊急事態宣言が、解除され始め、晩秋の観光業も動き始めたのだ。
このまま終息し、再発しないでいてほしいものだ。
さして広くない国道は、たくさんの乗用車が、数珠つなぎで流れている。

昼時、蕎麦屋に入ることにした。
やはりそこも、30分くらいまたされた。
席に着きそばを注文、出てきた蕎麦の量に驚いた。

食べきれずに、仕方なく残す。
会計の時、残した事の詫びを言う。
長野はそばの里、何処で食べても、蕎麦は絶品である。
 
食後のあと、駐車場へ戻る。
紅色の実をつけた、街路樹のハナミズキは、赤銅色に染まり、陽光に輝いていた。
民家の生け垣から、柿がたわわに実っていた。
 
そして駐車場へ戻り、投宿予定の湯田中温泉郷へ向かった。
秋色にまだ早い街道を進むと、20分ほどで、湯田中温泉郷に到着した。
北信、南信の温泉はかなり訪れたが、湯田中は初めてである。

ホテルに到着したのは、チェックインの3時頃であった。
ロビーで宿泊の手続きを済まし、3階の部屋に入る。
正面に湯田中の里山が広がり、遠くに北アルプスが、霞んで見えた。

部屋で一息つき、1階の温泉へ出かけた。
広い浴場に人影はなく、貸し切り状態であった。
やはりまだ、コロナの感染症の、影響なのであろう。

他人事ながら、この窮状に心が痛む。
コロナが終息しても、完全に経済が、戻るとは思えない。
社会の構造が、大きく変容するのであろう。

源泉かけ流しの湯に浸かる。
湯はつるつると滑るようで、体を優しく包む。
湯から微かな、硫黄の匂いが、立ちのぼる。
 
旅の疲れを癒し、部屋に戻る。
すでに日は山影に落ち、残光が山なみを、照らしている。
静寂を湛えた湯田中に、夕刻の光りのドラマが展開していた。、