マスター&ママの小さな旅
茨城県常陸太田市・竜神峡を訪ねて

2020年11月29日

茨城県の旅も、これで何回目であろうか?
大洗は何回も出かけ、磯前神社にも、度々参拝した。
ひたち海浜公園で見た、ネモフィラの美しさに、感動した。

そして那珂湊おさかな市場で、美味しいお寿司を食べた。
今日は竜神峡にやって来た。
新聞で竜神侠の、紅葉の記事を読み、来訪したくなった。

竜神峡のことは知らなかったが、お客様に言うと、ほとんどの人が知っていた。
それはこの渓谷にある、バンジージャンプが、マスコミで紹介されるためのようだ。
常磐道を下り、日立南太田インターを出て、竜神峡に着いたのは、早朝の8時頃だった。
 
広い駐車場に、車の姿が、ほとんどなかった。
車を降りると、冷気が漂っていた。
奥久慈県立自然公園のあたりは、まだ眠りから醒めていない。
  
遠く眺めると、小高い山脈の彼方は、朝焼けが広がり始めた。
空が茜色に染まり始め、金彩が空一面を、照らしている。
山に抱かれた村は、まだ沈黙している。
 
水府物産センターも閉ざされ、大吊橋のチケット販売所に、人の気配もなかった。
遠くに見える竜神大吊橋に人影はなく、寂し気であった。
やがて8時半に、チケット販売所が開かれた
 
一番乗りは、ハイキング姿の、女性三人組である。
最近、元気な熟年女性グループを、観光地などで、よく見かける。
やはり現代は、女性の時代なのであろう。
 
私たちも一人320円のチケットを購入し、大吊橋へ。
入り口に警備の人が、たっていた。
長さは375mの歩行者専用の橋は、日本最大級の長さを誇り、かなり堅固なものだった。
一度に3,500人もの人が渡っても、耐えられるという。
今日は橋を渡る人も少なく、のんびりとして気持ちがいい。
遠くに赤さびた、木々に覆われる、石灰質の岩肌が見える。
 
さらに右手眼下に、竜神川をせき止めるダムが、湖面に姿を映す。
左手に目を移すと、竜神渓谷が見渡せる。
うねり蛇行し、V字型に切り立った渓谷は、竜神のようだ。
 
振り返ると、東の空が朝焼け、たなびく雲を、煌めかせていた。
そしてまたダムの彼方に、目をやると、深い山里の村から、白煙が湧いている。
村人たちの一日が、始まったのであろう。
 
ぶらりぶらりと、朝の清涼な空気をすいながら、橋の中央辺りに来る。
そこに橋からはみ出した、ケージがあった。
どうやらここが、バンジージャンプの、入り口のようである。
 
入り口に鍵がかかり、しっかりと閉じられていた。
大吊橋の終点が近づくと、正面の壁に、巨大な金色の竜の絵が見える。
その前に、竜神大吊橋のシンボル「竜神カリヨン」が建っている。
 
橋を渡りきると、カリヨン施設、愛・希望・幸福を象徴する「木精の鐘」があった。
その鐘を手をつないで鳴らすと、愛の絆が生まれ、幸せになれるらしい。
最近はこのようなスポットを、観光地の津々浦々に見受けられる。
  
堂宇の横の階段を登ると、右手に巨大な金彩の竜が、迎えてくれた。
日本の神社仏閣に、竜の絵が描かれることが多い。
これまで日光の東照宮、目黒不動の川端龍子、長野県・岩松院の葛飾北斎、
山梨県久遠寺の加山又造作など、たくさんの竜を見た。
 
中国の伝説から始まる竜が、日本の伝統文化に、見事に昇華している。
左手に飾り気のない、展望台があった。
堂宇の屋根越しから見渡すと、大吊橋が一望することができた。
 
展望台から竜の絵の前へゆくと、名残の紅葉が、朝日を浴びていた。
その横に、過ぎ去った季節を惜しむように、冬桜が咲いている。
今年も残すところ、あと一ヶ月となった。
 
このあたりも日一日と、寒さが厳しくなるだろう。
階段を降り、先ほどの堂宇の前から、四阿がある展望台へゆく。
前方に大吊橋が見渡せる。
 
すると橋からロープが、楕円を描いた。
その先に、小さな人影が見えた。
両手を広げながら、渓谷をめがけ、落下していった。
 
バンジージャンプが始まったのだ。
やがて落下した人を、ロープーが釣り上げてゆく。
そして橋の下に、人影は消えていった。
 
大吊り橋に戻り、左手を見渡すと、朝もやが消え、山間を朝日が照らす。
橋の中ほどにある、バンジージャンプのステーションに、人の姿が見える。
結構、大勢の男女が、順番待ちをしているようだ。
さらに大吊橋から、ステーションへ、怖さ知らずの若者が、階段を降りてゆく。
一度ジャンプするのに、Ⅰ万7千円かかり、なおかつ万一に備える、同意書を提出するらしい。
100メートル降下する、勇気の代償に、お金と同意書が必要なのだ。
 
左手のダム湖は、静謐を湛え、ダムの灰白色の建物が、湖面に逆さ絵を描く。
どうやら今日は、暖かで穏やかな、一日になりそうである。
遠く見渡すと、駐車場に、たくさんの車の姿が見える
 
大吊橋を渡りきると、入り口近くは、賑やかさが増していた。
入場券販売所に、人の列ができている。
大吊橋はこれからが、本番なのであろう。