ようこそ【Bookcover Challenge-No4】へ!
Yoko Gavernさんから【Bookcover Challenge-】へ招待されました。
#Yoko Gavernさんはアメリカ合衆国のサンタモニカ在住で、お会いしたことはないのですが、FBの友人です。
【Bookcover Challenge-とは、「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、
参加方法は好きな本を1日1冊、7日間投稿する」と言うものです。
今日から1週間、私の好きな7冊の本を、ご紹介しますので、お付き合いのほどを。

【Bookcover Challenge-No4】は山口昌男著『道化の民俗学』です!
2020年7月31日

今から50年くらい前、演劇の勉強をしていた。
昼間は大学の演劇科に行き、夜は劇団の養成所に通う。
そのころ、オランダの歴史家・ヨハン・ホイジンカ著(1872年-1945年)『ホモルーデンス』に出会った。

世界はホモ・サピエンス(思考する人間)と、ホモ・ルーデンス(遊戯する人間)が創りだしている。
その拮抗した状態が、世界の歴史や文化・文明を、ダイナミックに、創造すると論じていた。
さらにそのホモルーデンス理論を敷衍し、遊びの4概念を、
フランスの社会学者・ロジェ・カイヨワ(1913年-1978年)が、『遊びと人間 』で確立した。

その中の1つである、ミメーシス(模倣)のなかに、演劇が入る。
この理論的流れが、フランスの社会人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908年-2009年)などの「構造主義」に繋がる。
そのころに、出会った本が、『道化の民俗学』である。

著者の山口 昌男(1931年-2013年)は世界各地で、フィールドワークを行う、行動的民俗学者である。
『道化の民俗学』に描かれた世界は、古代ギリシャから、中世の喜劇や、
祝祭空間における、道化のエロスに満ちた、風刺と滑稽に満ちていた。
世界の民族文化に分け入り、道化の本質を追求し、文化の根源を抉っている。

日本では喜劇的なものや、道化的なものの評価は、悲劇的なものに比べ低い。
だが、聖なるものと俗なるものは、表裏一体である。
古代ギリシャの都市国家アテナイでは、春と秋のディオニシア祭で、
悲劇3本と、サテュロス劇1本(バーレスク的喜劇)と、喜劇1本を上演した。

日本の能でも、能が上演される時は、かならず狂言がセットで、上演されなければ成立しない。
古代メソポタミアや、古代ギリシャ神殿の巫女は、神殿の娼婦でもあり、寄進者や巡礼者たちに、神の霊力を授けたといわれる。
また随筆家・白洲正子(1910年-1998年)曰く、「神社の巫女さんの緋袴(ひばかま)は下着である」と。

シェークスピア作『リア王』で、リア王に真実を直言するのも道化である。
民俗学では柳田国男が有名だが、
独学の民俗学者・宮本常一著『忘れ去られた日本人』の『土佐源氏 』は、俗なる世界に聖性を宿している。
『道化の民俗学』は、俗なる世界に聖性を付与し、1970年代の閉塞状況に、文化の豊饒なダイナミズムを、突き付けた作品である。

読書を愛する#Yoko Gavernさんと皆様へ