マスター&ママの庭園めぐり
越ケ谷花田苑&こしがや能楽堂を訪ねて
埼玉県越谷市花田6丁目6-2
2019年6月2日

最近は埼玉県越谷に、出かけることが多い。
埼玉県南東部に位置する越ケ谷は、意外と見どころも多い。
今日は前々から気にかかっていた、越ケ谷花田苑に出かけた。

花田苑に、1時過ぎに到着する。
無料の駐車所に、車を置き正門へ。
灰白色の石畳の奥に、静寂を湛えた長屋門が、迎えてくれた。

この門は、江戸時代に越ケ谷で、大名主だった宇田家の長屋門を、復元したものである。
門を潜ると、左手に受付があり、係の女性が、にこやかに迎えてくれた。
100円の入園券を、自動販売機で購入し中へ。
  
正面に池があり、小さな滝が、池に流れ落ちている。
左手に竹林があり、散策道が伸びている。
右手に紫陽花が咲き、その先に、色鮮やかなコスプレ姿の、若者たちがいた。
 
その若者たちの脇を通り、散策する。
すると広い池が広がり、遠くに平屋建の格調高い、日本家屋が見える。
散策道が池の周りを巡る、廻遊式池泉庭園である。

池の中に築島がある。
綺麗に刈り込まれた、松の緑が美しい。
さらに今が盛りの、ツツジの薄紅色が、鮮やかである。
 
そして織部灯籠が、池と築島を跨ぎ、風情を添える。
池に沿って右手に行くと、木製の太鼓橋があった。
池の薄緑に、木橋が逆さ絵を映し、情趣を漂わせる。
  
橋の上から、池端を見ると、小屋掛けの下に、猪牙船が係留されていた。
満月の美しい季節、池に乗りだし、月見の宴を、愉しむのであろうか。
想像するだけで、情趣溢れる。
 
木橋を渡ると、数寄屋造りの、茶室の前に出た。
茶室の腰掛待合に人影はなく、内路地の中門も閉ざされ、閑散としている。
日によって、この茶室で、お茶を味わうことができるようだ。
  
茶室の裏手に回り、腰掛待合の切り窓から、庭園を眺める。
日本庭園が、切り窓の中に収まり、光りのコントラストが愉しい。
茶室前の生け垣に、ツツジが満開であった。
 
そして散策路を、挟んだ生け垣に、ビヨウヤナギが、黄色の花を咲かせている。
その隣の梅の木に、青梅が稔っていた。
きっと梅の季節は、花が美しく、咲き゚群れていたであろう。

広さ約2.1ヘクタールの苑内に、桜や黒松、アジサイ、梅の木など、14000本が、植樹されている。
梅に始まり桜が咲き、初夏に藤、アジサイや睡蓮が花開き、秋に紅葉を愛でることができる。
池端の散策道を歩き、池中に築山を結ぶ、石橋のなだらかな流線の奥に、樹々の夏緑が美しい。

そして池面に、石橋が影を落とし、樹々が逆さ絵を描いていた。
さらに少し行くと、池に睡蓮が広がり、花を綻ばせている。
アジサイが咲き、睡蓮の早咲きを見て、梅雨が近いことを知らせる。

昼下がりの柔らかな日差しは、日本庭園に、詫び寂びの心を響かせる。
さらに行くと花菖蒲田があり、黄色や紫の花々が、微風にそよぎながら、華麗に咲いていた。
ここには初夏の匂いに満ちていた。
 
その先の生け垣越しに、檜造りの能楽堂があった。
そして生け垣沿いの、散策道を行くと、休憩所があり、一休みした。
前には約4,000平方メートルの池が広がり、柔らかな風が流れてきた。
  
人影は少なく、庭園は静寂を湛えている。
水と緑と花々が、静かさに華やぎを与えている。
平成10年10月1日、越谷市が花田土地区画整理事業地区に、整備を進め完成した花田苑。
 
越谷市民に、伝統的日本庭園の安らぎを、与えている。
吹き寄せる初夏の風に誘われ、隣接する「日本文化伝承の館 こしがや能楽堂」の裏門を入る。
手入れされた松が、目の前に広がる。
 
裏門を抜け、正門へ行き、正門から入りなおす。
そして正門で、軽く会釈をし、玄関へ行く。
先ほどの入園料のチケットを見せ、中へ入った。
 
玄関から右手に行き、下足に靴を収め、中庭見所へ。
檜が匂いたつ、大広間に出た。
天井は高く、数十畳の部屋の床は、鏡板のようで、厳粛な気分を誘う。

正面遠くに、能舞台が見える。
能舞台と広間の間の石畳が、厳かな雰囲気を醸す。
広間の奥に、展示室があり、能面や装束などが展示され、その横に能舞台の構造が、解説されていた。
 
ここで能楽に関する、様々な催しが、開かれるのだろう。
上映設備も整っている。
この部屋から、橋掛かりをへて、能舞台へ続くようだ。
 
橋掛かりへ行く扉は、閉じられていた。
大広間に戻り、時計を見ると、すでに午後4時を回っていた。
広間を、庭園の方へ行く。

そこには和室の小部屋や、大広間があり、その部屋の幾つかは、使用中の表示があった。
平成2年から、文化庁の「地域文化振興特別推進事業」の指定を受け、誕生したこの施設は、
市民のコミニティとして、機能しているようだ。

和室の廊下の窓から、先ほど回遊した、日本庭園が広がる。
畳廊下を行くと、能楽堂の正面の部屋に出た。
和室の大広間の障子戸を開けると、本舞台が見える。

その前に石畳が広がる。
この舞台で、薪能や様々な能狂言が、公演されるのであろう。
能舞台を囲む、観客席である見所の広さは、日本屈指であろう。

能や狂言の公演のとき、観客席と演者の興奮が、熱く伝わるようだ。
私がいる席は、まさに正面。
かつて大名や公家たちが、座る場所である。

障子を閉め、大広間を出て、畳廊下を通り、玄関へ戻る。
伝統的な日本建築の粋を味わい、何処か心が癒される。
日本文化の匂いと、総檜造りの広い空間が、日常の心の滓を、流すのだろう。

玄関を出ると、松の緑が眩しかった。
飛び石を踏みしめながら、裏門を出る。
池沿いの散策道を行くと、竹林が迎えてくれた。

さらに行くと、巨岩の間を、滝が流れ落ちる。
日本庭園に、滝は似合う。
滝の上に四阿が見える。
 
滝の前を行くと、四阿へ続く、石段があった。
石段を上がると、樹林に包まれ、滝の落ち口から、清涼な空気が流れる。
一休みのあと、石段を降りると、遠くに池が見え。
  
石段を降り、少し行くと、紫陽花が咲いていた。
紫陽花の花は、寂しく悲し気な、風情を醸す。
だから梅雨時、寺の庭先で、雨に濡れながら咲く姿が、似合うのかもしれない。
 
約1時間20分の、日本庭園巡りは、終わった。
曇り空、微風に吹かれながら、初夏の花を愉しみ、日本建築に触れた。
最後は、日本伝統建築の、長屋門が送り出してくれた。