マスター&ママ寺社めぐり
さいたま市の名刹・総持院を訪ねて
〒336-0973 埼玉県さいたま市緑区南部領辻2944 
2019年5月5日

子供の日の日曜、爽やかな天気に誘われ、さいたま市に出かけた。
目的地は、牡丹の寺として知られる総持院。
市街地から離れた、自然豊かな地にあった。
 
県立安行武南自然公園に近く、お寺の前に、見沼代用水が流れていた。
初夏の緑に包まれ、流れる川面に、樹々が逆さ絵を映していた。
その代用水に架かる、橋を渡ると、無料の駐車場があった。
 
車を降りると、前に竹林が広がり、陽光に照らされた、若緑が眩い。
このあたりは、トラスト1号地であることを標す、看板が立っていた。
さらに少し行くと、左手に
阿日山総持院と彫られた石柱があった。
 
そこからツツジ咲く参道となり、50メートルくらい先に、鐘楼が建っている。
だが、残念なことに、修復工事中であった。
養生シートに、透けて鐘楼が見える。
 
そして楼門の2階に、昭和52年に再鋳された梵鐘が、吊り下がる。
山門の奥に、昭和42年に再建された本堂が、陽光に照らされていた。
真言宗智山派の寺院は、法印良秀が創建したと伝わる。

しかし法印良秀は、入滅したのが天正5年(1577)である以外、いまだ謎である。
寺は明治末期に、火災により焼失した。
だが、鐘楼門だけは、焼けることなく、奇跡的に無事だった。

鐘楼門の左手を行くと、弘法大師修行像が建つ。
その横を通り過ぎると、本堂の前に出た。
境内に人気なく、静寂な空気が、流れていた。

本堂の前に、お賽銭箱も、鰐口もなく簡素である。
本堂に上がる、階段の最上部に、お賽銭が並べてある。
私も小銭を添え、手を合わせる。
  
本堂の中に、本尊の地蔵菩薩と、興教大師( 真言宗中興の祖 )、弘法大師(宗祖)が安置している。
しかし扉は閉ざされ、堂内を覗き見ることは、できなかった。
お堂の右手前に、阿弥陀如来の石仏が、威厳を添えている。
 
境内の庭に、ビオラが鮮やかに、ナデシコの朱色が輝きを放つ。
境内から少し下ると、牡丹園があった。
だが、すでに牡丹は名残の景色であった。
 
700近い牡丹の見ごろは、様々な色の花々が、芳香を放ち、艶やかに咲き匂ったであろう。
今は訪れる人の姿もなく、花園は寂しげだ。
でも、人影がないので、気ままに写真が撮れるのは嬉しい。
 
牡丹園はそれほど広くなく、散策路は狭い。
牡丹の盛期であるなら、写真どころではないだろう。
花園の中央に、藤棚があった。
 
棚から藤の紫の花房が垂れさがり、微風に揺れる。
すると艶なる芳香が、辺りに漂う。
牡丹園を一巡りすると、出口近くの木に、見たことのない花が、咲き始めていた。
 
昼下がりの陽光を浴び、黄緑の花が、楚々とした趣を湛えている。
そして牡丹園から、坂道を少し行くと、鐘楼門に出た。
見上げると、養生シートから、顔を出した鬼瓦が、青空にくっきりと浮き出ていた。