マスター&ママの桜便り
桜の名所「無線山さくら祭り」を訪ねて
(埼玉県北足立郡伊奈町小室752-1 )
2019年3月31日

国道17号を、上尾市役所前から右折。
県道150号を、伊奈方面へ向かう。
しばらく行くと、車の渋滞が始まった。

たぶん無線山へ向かう、観桜の車の渋滞なのだろう。
牛歩の歩みで、車は進む。
やがて左手に、乗馬クラブ・クレインがあり、乗馬を楽しむ人たちで、溢れていた。

すると右手に、大きな建物が見える。
さらに進むと、埼玉県立がんセンターと書かれた、標識が見えた。
そしてがんセンターの正面に来ると、左手に無線山の桜が見える。

道路には、たくさんの幟旗が、風にそよいでいる。
係員の誘導に従い、がんセンターの第3駐車場へ、車を停めた。
県立がんセンターだからであろうか、観桜の人たちのために、無料で開放していた。

駐車場から、程なく歩くと、先ほど通った無線山に着く。
幟旗に迎えられながら行くと、桜並木の前に出る。
ずらりと並ぶ、桜の古木の佇まいに、雅な威厳が溢れる。
 
樹齢70年のソメイヨシノの樹高は、10メートルを超えるものもある。
桜並木は、100mの長さで、真っ直ぐに伸びる。
老樹の樹幹から、大地に逞しく、根を張っている。
 
散策道は広く、観桜の人たちも、余裕を持ちながら、桜を愉しむ。
桜の枝振りは優雅で、大地に届くほど、枝垂れるように、咲き匂う。
この時期にだけ、一般公開される、「無線山・KDDIの森」。
  
緑のトラスト運動保全地区として、管理されているから、低い枝振りが、保たれているのだろう。
鼻先まで枝垂れ咲く、桜花から妙なる香りが漂い、微風に揺れる。
そして、昼下がりの陽光を浴び、桜花が高貴に輝く。
  
かつてこのあたり一帯は、昭和9年に開設された、旧国際電電の、短波受信地であった。
当時、短波を受信するために、広大な敷地が必要であった。
その中に、KDDIの研修所があり、平成16年から、日本薬科大学のキャンパスとなる。
 
その大学のキャンパスの広さは、5万坪あり、東京ドームの3倍である。
この無線所から、ベルリンオリンピックの名放送「前畑頑張れ!」が流れ、南極観測船宗谷からの、写真電送も受信された。
さらに、ソ連が打ち上げた、人類初の人工衛星スプートニクの電波を受信し、解析したのもこの受信所であった。

この広大な敷地は、クヌギや赤松などが生い茂る、雑木林の平地である。
だが、地元の人たちは、歴史的な快挙を称え、愛着をこめて、無線山と呼んでいる。
桜並木をさらに行くと、通りに出て、そこが終点であった。

通りの向こうに、日本薬科大学の校舎が見える。
振り返り、桜の回廊を戻る。
右手に、さくら祭りのポスターが、掲示されていた。
 
桜の古木を見上げると、雅趣に溢れる幹が、逆光となり、美しいシルエットを、青空に映す。
その前に、伊奈町観光協会と書かれた提灯が、微風に揺れていた。
午後6時になれば、提灯に明りが灯り、夜桜を幻想的に照らすだろう。
  
晴れ渡った桜日和、桜の古木の向こうを見渡す。
老樹の下で、食事やお酒を飲みながら、桜の宴を愉しんでいた。
  
桜の回廊から、宴席に近づくと、昔ながらの屋台が並んでいた。
やはり祭りには、テキヤさんの屋台が似合う。
すでに時間は、午後4時を回っていた。