マスター&ママの河口湖旅情Ⅱ
静岡県富士宮市の白糸の滝を訪ねて

2018年9月26日

ホテルを9時に、チェックアウトする。
河口湖大橋を渡り、静岡県富士宮市にある、白糸の滝へ向かう。
快晴なら、正面に富士山が、秀麗な姿を見せるのだが……。

今日は生憎の天気、空に広がる、一面の雲に隠れている。
昨日から、河口湖に来ているのだが、富士山の影も形も見えない。
河口湖畔には、何回か泊ったが、未だほとんど富士山を見ていない。

どうやら、河口湖とは、相性が悪いようだ。
それにしても、昨日は雨にたたられた。
今日も午後から、雨の予報。

白糸の滝見物の間は、雨が降らないで、欲しいものだ。
国道139号を、本栖湖方面に向かう。
約18キロほど行くと、本栖湖を通過する。

かつて、富士五湖で、3番目に大きい、この湖に来た時の印象は、寂しいの一言だった。
今日は立ち寄らずに、通過した。
やがて、精進湖の近くを過ぎる。
 
精進湖湖畔の宿にも、泊ったことがある。
小さな湖だが、正面に富士山が見え、さらに湖面に、美しい逆さ富士を、映していた。
この湖で、修験者が、身体を清め、登山したのも納得がいった。
 
やがて、白糸の滝の、表示板が現れた。
指示に従い、右にハンドルを切り、しばらく行くと、白糸の滝駐車場に出た。
幸いに、空は晴れ、少し暑いくらいだ。
 
駐車場代500円を払い、車を停める。
案内板に従い、階段を降りると、正面に清流が流れていた。
昨夜来の雨のせいか、芝川の水量は豊かで、烈しい勢いで、流れ下っている。
 
清流は渓流の、岩や石に弾け、純白の霧となる。
渓流沿いの道を下ると、路傍に鮮やかな黄色の小菊が、一群れとなって、咲いていた。
花を見ると、ミツバチが、蜜を夢中になって、吸っていた。
 
やがて土産物屋さんの、建ちならぶ、小さなアーケードに出る。
平日の今日、土産物屋さんは、閑散としていた。
そして、アーケードを、潜り抜けると、右手に、白糸の滝に降りる、石段があった。
  
前方の彼方に、滝が秀麗に、全容を見せる。
幸いなことに、まだ雨の気配がない。
白糸の滝を取り巻く、すべての空間が、陽光を浴び、煌めいている。
 
さらに階段を降りると、路傍に朱色の蛇イチゴや、紫色の野草が、可憐な姿を見せる。
そして階段を降りると、展望台があった。
平日は見物客が少ないから、好きな場所で、ゆっくりと写真が撮れて嬉しい。
 
昨日は1枚も、ツーショットの、写真が取れなかったので、ここでパチリッと決めた。
そして、美しいアーチを描く、滝見橋を渡り、渓流沿いに、下り降りると、白糸の滝の正面に出た。
ほとんど無風なのに、滝の霧飛沫で身体が濡れる。
 
水量の太い滝は、エメラルド色の滝つぼを、白く染めている。
垂直に切り立つ、20メートルの溶岩断層の壁から、無数の細い滝が浸み出し、絹糸のような糸を引き、落下する。
富士山の雪解け水が、富士山の地下層を潜り抜け、地上に溢れ出る。
  
この滝を見るのは、これで2回目である。
だが前回見た印象が、何処か異なるような気がする。
やはり、人間の感性は、その時々により、変化するのであろう。
 
幅150m以上に渡り、絹の水流が、岸壁をつたい落ちる。
その姿は神秘的で、崇高さを、見るものに迫ってくる。
日本の滝100選で、絶えず上位にランクされる、人気スポット。
 
溢れるマイナスイオンを、充分に浴びて、白糸の滝を後にした。
遠くに、滝見橋が見え、その奥の山頂に、土産物屋が緑に包まれている。
そして滝見橋に来て、眼下を見下ろすと、滝から流れ来る清流が、輝いていた。
 
先ほど降りた階段を登り、土産物売り場に、辿り着いた。
お店の前の長椅子に座り、前を見ると、樹齢を重ねた老樹が、威厳をもって、鎮座していた。
一休み後、音止めの滝に向かう。

土産物屋のアーケードを抜け、右手に曲がると、左手前方に、滝が見えた。
土産物屋の前に置かれた、滝見の梯子階段を登ると、滝の全貌が見えた。
競り上がりながら、盛り上がる水流が、滝口から25メートル、滝口へ落下する。

その様は、轟音を響かせ、怒涛の烈しさである。
鎌倉時代、源頼朝の富士の巻狩りに随行した、曽我兄弟が、この滝口の近くで、かたき討ちの密議を練った。
だが、滝の音が激しく、お互いの言葉が聞こえない。
 
2人は神に祈った。
すると、一瞬、滝の音が消え、兄弟は決意を誓い、かたき討ちの本懐を遂げたという。
民衆が生み出す、フォークロアだが、この豪快な男性的な滝が、一瞬たりとも止まるとは、信じがたい。
 
天気予報では、午後から雨だが、まだ陽光が降り注ぐ。
きっと、東京へ着くころは、雨模様だろう。
それにしても、麓まで来ながら、富士山の雄姿を、眺めることができなかった。