栃木県塩原八幡宮&矢板の「おしらじの滝」を訪ねて
2018年6月18日

塩原温泉郷のホテルを、10時にチェッククアウトする。
そして源氏ゆかりの、塩原八幡宮へ行った。
国道400号を10分ほど行くと、八幡さまがあった。
 
八幡さまの無料の駐車場に、車を停め、本殿に続く、参道の鳥居を潜る。
鳥居の前で一礼し、参道を進む。
すると、朱色の素朴な橋が現れた。
 
橋の下は、清澄な水が流れ、錦鯉が優雅に、泳いでいた。
橋を渡ると、正面に板葺き屋根に、欅造り一間四方の、お堂が見える。
創建は大同2年(807)とされ、源氏ゆかりの八幡宮である。

塩原温泉の守り神的存在として、崇敬されている。
毎年、温泉の恵みに感謝する、「古式湯まつり」が、盛大に行われる。
境内には、樹齢1500年と推定される、「逆さ杉」の巨木が、2本並び立つ。
 
幹周り11.5mの雄杉と、8mの雌杉は、樹高約40mあり、「夫婦杉」とも呼ばれる。
見上げると、高い幹から張り出す、太い枝振りが、垂れ下がっている。
その重さを、地上から張り出す添え木が、しっかりと支えていた。
 
その姿は神々しく、辺りに霊気が、放たれているようだ。
長い風雪を耐え、生き続ける生命力は、圧倒的な生命の、神秘を感じさせる。
伝説によれば、平安時代の武将・八幡太郎義家は、奥州東征の途中、この神社に立ち寄る。
 
その時、逆さ杉の神気に打たれ、戦勝を祈願したと伝わる。
その杉の巨木は、昭和12年に国の天然記念物に指定され、栃木県の銘木百選に選ばれる。
その逆さ杉の近く、本殿脇に老樹があった。
 
巨木には「気乃大杉」と、書かれた札が、掛けられている。
この巨木は、「気」の大樹と呼ばれ、パワースポットになっている。
巨木に触ると、鋼のように硬いが、手のひらに、木の生命が脈動する。

樹肌に耳を添えたが、樹内を流れる、水脈の音は聞こえなかった。
境内には、人影もなく、静寂に包まれれ、神気が漂っている。
そして参道から、駐車場に戻り、次の目的地に向かった。
 
若緑に包まれた国道を行き、途中、ガソリンスタンドで、燃料を補給する。
その間、車から外へ出ると、岩山が雄大な姿を、陽光に晒していた。
給油を終え、県道56号に向かう。
 
八方ヶ原へつづく、56号塩原矢板線、はかなりの上り勾配であった。
美しい新緑に包まれた道は、片側一車線の九十九の道。
対向車もほとんどなく、人家などは勿論ない。

冬場はさらに厳しく、通行止めになっても不思議でない。
森閑とした道に、聞こえるのは、車の車窓を流れる風と、エンジン音だけである。
目的地は、幻の滝とよばれる「おしらじの滝」。
 
すでに50分近く、56号を走って来たが、「おしらじの滝」の、標識はなかった。
やがて、「山の駅・たかはら」の駐車場に出た。
ここで「おしらじの滝」のことを、訊くことにした。
 
駐車場に車を置き、中へ入る。
建物の中に、休憩所やレストランがあり、地元名産が、展示販売されていた。
お店の人に、「おしらじの滝」のことを訊くと、親切に教えてくれ、観光用のロードマップまでくれた。

どうやら、通り越してしまったようだ。
説明通り、道を下り、5分ほど行くと、「おしらじの滝」を知らせる、標識がたっていた。
そして、小さなコンクリートの、駐車場があった。
 
車を停め、滝へ向かった。
滝への道は、まさに獣道のようだ。
整備された道はなく、自然あふれる、深い原生林の中を下る。

雨降りや、雨上りは、足元がぬかるみ、滑り落ちそうである。
ところどころに、赤いリボンや、木の杭が打ちこまれ、滝へ続く道であることを教える。
赤土がむき出しで、時おり、木の根が張り出す道を下る。

すると私たちを追い越し、足取り軽く降りる、男性がいた。
ハイキングや山登りに、なれているのだろう。
すると前方に、家族3人が、注意深くゆっくりと下っている。

NHKなど多くのメディアに紹介されたことで、「おしらじの滝」は、人気スポットになった。
あと数年すれば、道は整備され、駐車場辺りに、土産物売り場も、建ちならぶであろう。
そして、この滝への道も、整備され、きっと車椅子で老人も、見学できるようになる。
 
道路から下ること、10分ほどであろうか?
どうやら辿り着いたようである。
滝つぼへ向かう、短い木橋を渡ると、碧く光る滝つぼが見えた。
 
想像していたより、滝つぼは小さかった。
そして滝の姿はなく、岩肌を滑り落ちる、水流の跡が、白く輝いた。
滝はその姿を、滅多に見せることはなく、多くの偶然が重なったとき、滝を目撃できるという。
 
滝が流れ落ちる、岩肌は黒光りし、滝つぼを抱く岩は、苔むしていた。
滝つぼの碧い水は清澄で、正午過ぎの陽光に照らされ、滝底に水紋が溢れていた。
滝つぼの前に、展望台もなく、自然のままの岩場があるだけ。
 
今日は見物客も少なく、滝つぼの前で、写真を撮った。
いずれ、滝の前に、展望台が整備され、写真を撮った辺りは、立ち入り禁止になるだろうか?
まだまだ未整備の「おしらじの滝」見物は、野趣に溢れ愉しい。
 
滝つぼの神秘と霊気に触れ、滝つぼをあとにした。
下りの道は、登りの難所になる。
ゴロゴロ石や、根株を張り出す道を、汗をかきながら登った。