マスター&ママの花巡り
埼玉県伊奈町「伊奈町制施行記念公園」のバラ園を訪ねて

埼玉県北足立郡伊奈町大字小針内宿732-1
2018年5月20日

埼玉県北部に位置する、伊奈町にあるバラ園に到着したのは、午後2時前だった。
前回来てから、何年ぶりであろうか。
駐車場に車を停め、バラ園へ。
 
あの頃に比べて、その賑やかさにびっくりした。
前回来たときは閑散とし、売店など皆無で、寂しいほどであった。
本日の華やぎは、祭り気分で楽しい。
 
すると、子供たちを乗せた、子供電車が舗装道を進んでゆく。
乗っている親子づれの顔に、笑顔が溢れている。
出入り口横の入場券売り場で、入場券350円を購入し、バラ園の中へ。
 
深紅のバラが迎えてくれた。
初夏の陽光に輝き、眩いくらいだった。
そして右手に進むと、前方にバラのアーケードが見えた。
 
左手の花壇に、薄紫のバラが、艶やかに咲いている。
説明板を見れば、ブルームーンと書かれていた。
カクテル・ブルームーンと同じ色だ。
 
制昨年は1950年ドイツ。
作者コルデスと記してある。
ブルームーンの色は、世界共通、薄紫なのであろうと納得する。
 
その隣に、純白のバラが、凛々しく咲いていた。
バラの名前はどれも、作出者の思いがこもり、情熱的で情趣に溢れ愉しい。
朱色に咲き誇る、レディーローズも、制作者の努力と情熱が伝わる。
 
赤、白、紫、薄桃色と、様々なバラが百花繚乱に、匂い咲く。
このバラ園は1988年に、現在の「第1バラ園」に、270株が植えられてスタートした。
現在は、「第三バラ園」まであり、約1.2ヘクタールに、400種5000株を超える、木バラやツルばらが咲き誇る。
  
舗装され整備された散策道を行くと、純白のツルバラが咲く、美しくカーブするゲートがあった。
潜って進むと、黄色い可憐なバラが、迎えてくれた。
そして鮮やかな鮮紅色のバラが、初夏の陽光に燃えている。
 
名前も情熱的な、スカーレットボニカに、レッドクイーン!
その近くに、ウィリアム・モリスとあった。
イギリスの
ウィリアム・モリス(William Morris、1834年-1896年)が生み出したものなのであろか?
 
19世紀ビクトリア朝時代、ウィリアム・モリスは、イギリスの詩人にしてデザイナーで、「モダンデザインの父」と呼ばれる。
「アーツ・アンド・クラフト運動」を実践し、多方面に影響を与え、モダンデザインの源流を創造した。
きっとこのバラも、貧しいプロレタリアートへ捧げる、心のバラなのであろうと、勝手に解釈する。
 
そして「第2バラ園に」入る。
するとマイクで、何かパフォーマンスの紹介をしていた。
10人以上の熟年の男女が、黒の上下に身を包み、赤と緑の長い衣装で控えていた。
 
どうやら若者の間ではやる、ヨサコイソーランが、始まるようだった。
そして曲が軽快なリズムを刻むと、踊り始めた。
見れば全員かなり高齢のようだが、元気よくリズムに合わせて踊る。
 
どの顔にも、笑顔が溢れ、踊りを楽しんでいるようである。
見物人も高齢者が多く、汗を滲ませながら踊る姿に、エールを送っている。
踊る舞台の前に、噴水が陽光を浴び、銀色に輝く。
 
その噴水の手前に、岩間弘氏作「伊奈の夢石」のオブジェが眩い。
やがて踊りが終わると、場内に「ダンスを踊ったメンバーが、平均年齢70を超す」と、流れた。
会場に心地よい、ため息が漏れた。
 
70歳とは思えない、元気な姿に、今さらながら、日本は長寿国であることを認識する。
噴水を見下ろす、小高い森影に、同年配の人たちも、楽しそうにダンスを眺めていた。
そしてパフォーマンス会場をあとにして、散策を続けた。
  
昼下がりとはいえ、初夏の日差しは強く降り注ぐ。
バラを眺めながら散策していると、僅かに汗ばんでくる。
そして微風が、涼を誘い、柔らかなバラの匂いが漂う。
  
埼玉県随一の、伊奈町のバラ園のバラは、初夏と秋に咲く。
だが、5月中旬から、6月上旬にかけて咲くバラが、最高のようである。
毎年、この時期に開催される、「バラまつり」に訪れる来園者は、10万人を超す。
 
さらに色艶やかなバラに誘われ、のんびりと散策を楽しむ。
すると鮮紅色に燃える、バラの大輪が目を引く。
名前も「グランデ・アモーレ」
 
ピッタリの名前だ!
花弁の中を見ると、小さなミツバチが、花芯で蜜を吸っている。
お尻をピクピクト揺らし、愛嬌がある。
 
昭和45年に町制施行し、伊奈村が伊奈町に変わったときに誕生した、「伊奈町制施行記念公園」
その象徴的な存在が、公園内にあるバラ園である。
平成2年に、バラが伊奈町の「町の花」に、指定されている。
 
すでに時間は、午後3時になる。
公園を訪れる人たちは、途絶えることがない。
公園内を子供を乳母車に乗せ、散歩する家族。
 
初夏の陽光を浴び、疲れたのだろうか、幼児は乳母車で眠っている。
閉園は午後6時。
まだ時間に余裕があるせいであろう、園内の賑わいは続いている。

すると羽衣の立札があった。
作出年:1970年、作出者:京成バラ園芸と書かれていた。
愛くるしい薄桃色のバラに、ピッタリの名前である。
 
ゲートを潜ると、黄色いバラが咲き、係員がバラの手入れをしていた。
そのオレンジ色のジャンパーの背中に、バラシスターズと書かれていた。
このバラ園を開放するために、たくさんの人たちが、大切に育てているのだ。
 
そして最後の「第3バラ園」に向かった。
遠くに地元商店会の方々が出店する、紅白のテントが見える。
その手前に、バラまつりの幟り旗が、涼風にはためいている。
  
初夏のバラ園の風は、心地よく香り、陽光は燦々と降りそそぐ。
5000本のバラの競演は、初夏を華やかに、演出していた。
400種類のバラが、来園者を魅了している。
見事に咲くバラに魅せられ、木陰に休む人たち。
ゆったりとした、豊かな時間が流れている。
そして公園出口にさしかかると、ゆるキャラのペアが、こちらに手を振っている。
 
肩から掛けた襷に、「伊奈ローズちゃん」と「伊奈ローズくん」と書かれていた。
公園を出て、駐車場へ向かう。
すると、入園の時に迎えてくれた、子供電車が、私たちの前を、走り去った。