台風22号接近、荒天のなか、伊豆稲取へ
2017年10月29日

関東に台風22号が接近し、大雨の予想も出ていた。
雨のさなか、東名高速道を南下して、伊豆へ向かった。
御殿場で高速道を降り、芦ノ湖スカイラインから、国道1号に出て、三島へ。

そして三島に2015年に誕生した大吊橋、三島スカイウォークへ向かった。
やがて目的地に到着し、駐車場から橋を眺める。
さすがの悪天候で、閑散としていた。

そして大吊橋の散策を中止し、目的地・稲取へ向かう。
伊豆縦貫道から、国道414の山間の道を進む。
雨は降り続け、フロントガラスに、烈しく雨が吹き付ける。

伊豆の山々は雨に咽び、灰色に霞んでいた。
ときおり顔を見せる狩野川は、泥色に染まり、濁流となって流れ下る。
河津に12時ころに到着した。

何年前になるだろうか?
河津桜見物に来たことを思い出す。
桜の季節とはうって変わり、寂しげな河津から、国道135号を北上する。

右手に相模湾が広がる。
波がうねり、海は灰色に煙っていた。
快晴なら、紺碧の海が光り、果てしなく広がるだろう。

今井浜を過ぎ、程なくして稲取に到着した。
稲取に宿泊するのは、今回で2回目になる。
昔ながらの市街地をめぐり、伊豆の地酒を求め、酒屋を探す。

すると情趣が溢れる酒屋さんがあった。
酒屋さんの駐車場に、車を置き中へ。
静岡の銘酒がずらりと、冷蔵庫に並んでいた。

そして純米生原酒「志太泉」を購入する。
会計すると、上品に齢を重ねた女性は、端数を切り捨て、値引きしてくれた。
伊豆を訪れるたびに思う。

伊豆の女性たちは、優しいような気がする。
やはり気候が温暖なせいなのだろうか。
昼時なので、何処か近くに、美味しいお店がないか尋ねた。

すると、135号沿いにある、手打ちそば「誇宇耶」を教えてくれた。
そしてお店に出かけた。
店内は昔の民家を改造したような、風情に溢れていた。

梁がむき出しの高い天井の店内に、様々な書や骨董が置かれていた。
そばは手打ちで、歯ごたえもあり、そばつゆがなしでも美味しかった。
窓外を眺めると、灰色の海が広がり、煙霧につつまれている。
 
すると一段と雨脚が激しくなり、庭の白砂の上で、雨がはじかれ踊っていた。
雨が弱まるまで、静岡の地酒、杉錦、初亀を飲んで時間つぶしをした。
そして1時半頃、雨が弱くなったので、店を出てホテルに向かった。
 
ホテルのチェックインは3時だが、2時ころに入室を許してくれた。
一面の広い窓から眺める景色は、荒れ模様で不気味でさえあった。
そして一休み後に、温泉に浸かり、旅の垢を落とした。

翌朝、目を覚ますと、なんと、予想に反して快晴だ!
台風の余波で、昨日のような荒れ模様と、諦めていた。
そこで予定を変更し、
国の天然記念物に指定される、大室山に立ち寄ることにした。

朝食を済まし、11時ころにチェックアウトし、国道135号を北上する。
そして伊豆スカイライン入り口から左折し、5㎞ほど行くと、大室山に到着した。
正午近く、駐車場の前に、お椀を伏せたような、大室山の雄姿が広がる。
 
すでに大勢の人たちが、リフトに乗って、山頂へ向かう。
私たちも、往復500円の搭乗券を購入する。
昔は片道で、帰りは歩いて下山できたようだが、現在は歩行を、許されていないようだ。

そして2人乗りリフトで、標高580m、直径300mのすり鉢状の噴火口を持つ、休火山・大室山山頂を目指した。
山頂の彼方は、青空と雲海が広がる。
右手には、山頂に雲がかかる富士山が見える。

北麓に位置する、大室山登山リフト)に乗り、6分ほどで山頂に着いた。
山頂は360度の大パノラマが広がり、陽光に照らされ煌めいている。
そして遠くに、伊東市の市街地が霞み、背景に折り重なる山々が、趣を添えていた。
 
大室山の噴火口を周回する、約1㎞のお鉢巡りを楽しむ人たちが、遠くに見える。
大室山は、秋色に染まり始めた、一面のカヤが広がる。
毎年、2月の第2日曜日に、「山焼き」が行われ、全山が炎に包まれるという。

700年の伝統を誇る行事は、一足早い春の訪れを知らせる。
山頂の売店横の展望台から、お鉢巡りの石段が伸びる。
石段を上り、お鉢巡りの整備された、火口縁の遊歩道を上る。

左手彼方の洋上に、大島の島影が朦朧と霞む。
眺望がきけば、紺碧の相模湾に、伊豆の島々が、浮いているはずだ。
だが、今日は霞がかかり、伊豆大島が見えるだけである。
 
遊歩道から、すり鉢のように抉られた、大室山の火口を見下ろすと、吸い込まれるようだ。
カヤが山全体を蔽い、ススキの枯れ穂が、微風にそよいでいた。
ここからさらに上り坂を行く。
 
時おり、空に暗い雲が現れ、陽光がさえぎられる。
標高580mの山なのだが、山の変わりやすい天候が顔を出す。
約4000年前の噴火によりできた、火口底を見下ろすと、アーチェリー場があった。
  
何人かの男女が、的に向かって、矢を放っている。
そのアーチェリー場から、少し上の中腹に、安産と縁結びの神と慕われる、小さな祠の浅間神社が鎮座していた。
多くの浅間神社は、木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)を祭神とする。
 
しかしこの神社は、磐長姫命(いわながひめのみこと)を祭神とする。
さらになだらかな、上りの遊歩道を行くと、お地蔵さんが空を背に、陽光を浴びていた。
漁の安全と豊漁を祈る、8体のお地蔵・八ケ岳地蔵尊さんは、穏やかな顔立ちで並んでいた。
 
彼方から吹きよせる微風が、秋の匂いを運んでくる。
右手遠くに、リフト終着駅横の、展望台と売店がある、灰白色の建物が、真昼の陽光に照らされていた。
そして約⒛分ほどで、単成火山のスコリア丘・大室山の最高地点に到達した。
 
そこには山体の最高地点を示す、三角点が設置されていた。
遊歩道の右手に、相模湾が洋々と広がり、海と空の青が溶け合っていた。
そこで広大な海と空を背景に、写真を撮ることにした。
 
ここからは下りの遊歩道。
のんびりとリフト乗車口へ進む。
程なくして、リフト乗車口に、午後1時ころに到着した。
  
展望台で少し休憩してから、下りのリフトに乗車する。
先ほどに比べ、搭乗者がめっきりと減っていた。
眼下遥かに、伊豆市街地や相模湾が広がる。
 
左彼方に、富士山が煌めき、山頂に雲がたなびく。
すでに伊豆の山々も、秋色に色づき始めていた。
駐車場から大室山を見上げると、山を蔽う一面のカヤが、陽光で銀色に光り輝いていた。