怠惰な休日も愉しいかな!
2017年10月1日

先週の日曜日は、お墓参りに、神奈川県厚木へ出かけた。
そのあと、何時も立ち寄る、日帰り温泉で、ゆっくりとくつろぐ。
露天風呂は、東京近郊特有の、コールタールのように真っ黒で、少し塩辛い天然温泉である。

温泉の帰りは、小田急線相模大野近くの、ショッピングモールで買い物をする。
帰りの東名高速で、車の助手席で飲む、日本酒である。
2階にある酒屋さんには、銘酒がたくさん揃えてあった。

そして冷蔵庫に冷やされていた、山口県岩国の地酒・無濾過生原酒「雁木」の1升瓶を購入する。
この蔵元八百新酒造(やおしん)の創業は、明治24年。
だが幾多の苦難の中、酒蔵の灯をともし続け、「雁木」を2000年に誕生させた。

そして現在、少数精鋭で、すべての日本酒を、無濾過純米で作る。
酒は微かに山吹色に輝き、口に含むと、柔らかな芳香が漂う。
飲み込むと、するりと喉元を滑り落ち、飲み応えは豊潤である。

やがて戻り香が、鼻孔を華やかに包んでくれた。
そしてほろ酔い機嫌、助手席から窓外を眺めると、すでに東京の渋谷辺りにさしかかる。
やはり都心は、光の渦、無機質なビルが、林立していた。

さて、今日は10月1日の日曜日。
何も計画はない。
朝の陽光が、窓から眩しく射し込んでいた。

その陽だまりの中で、朝刊と昨日の夕刊を読む。
そのあと、読みさしの小説『粗茶を一服』を読む。
それは山本一力の損量屋喜八郎始末控えシリーズであり、江戸寛政時代を舞台にしている。

最近は江戸時代を舞台にした、時代小説をよく読む。
短編を1つ読み終え、ラジオで英語ニュースを聴く。
終わるとラジオを切り、今度は小説家池波正太郎紀行『フランス映画旅行』をひろげる。

池波正太郎は、1977年に編集者と共に、フランスのパリへ、飛行機で出かけた。
アンカレッジ、コペンハーゲンを経由する旅は、18時間かかった。
その機上で、2人で飲んだ酒は、同乗した編集者が、記録していた。

マンハッタン6、マティーニ2、ビール4、ウイスキー4と、恐ろしい量である。
そして池波正太郎は、「機内でだす缶詰のマティニはひどいものだったが、マンハッタンは悪くなかった」と記す。
缶入りのカクテルとは、どんな味だったのか、バーテンダーは気になるところだ。

その機内で飲む酒の量と種類に、さすが池波正太郎と、喝采してしまった。
すると、うとうとと眠気がさし、まどろんでしまった。
1時間くらい寝てしまったのだろうか。

眠たくなれば眠り、目が覚めれば、また本を読む。
無計画でだらだらとした1日は愉しい。
本を読み終わると、少しお腹が空いてきた。

起きて冷蔵庫を開けると、焼きそばがあった。
フライパンに焼きそばを入れ、油をひかずに、ゆっくりと焼く。
焦げ色が着いたころ、焼きそばをひっくり返し、さらに焼く。

油をひかずに焼くと、焦げ色が着きながら、焼きそばはほぐれてゆく。
焼きそばを皿に移し、プライパンに油と、豆板醤を入れ、具を炒める。
具はキャベツ、ピーマン、ベーコン、ウィンナーソーセージ。

具が程よく炒められたら、塩コショウをし、焼きそばに付いていた、ソースをかけて出来上がり。
テレビをつけ、収録しておいたタモリと山中伸弥が進行役を務める、
NHKスペシャル『シリーズ 人体」』を観る。
身体の臓器がシグナルを送りあい、コミュニケートすることにより、人間の生命体が、正常に機能するようだ。

すべての人間の器官は平等であり、心臓や頭脳さえも、臓器から様々な情報をもらい、伝えてあっているという。
さらに収録しておいた、料理番組を、いくつか見る。
そして野球中継を観る。

巨人が阪神に、接戦の末、4-5で負けた。
残念!
広島にDeNAが、大量リードしていた。

巨人のクライマックス・シリーズ進出は、これで絶望的であろう。
テレビを切って、また部屋に戻る。
何時もの体操をすることにした。

腹筋運動330回。
そして私の独特なスクワット。
スキーのジャンプ選手が、滑走するときの中腰スタイルで、お尻だけゆっくり上下する。

この運動は普通の人で、10回はできないであろう。
私は70回する。
膝関節の強化に効き目がある。

さらに片手片足腕立て伏せを、左右10回行う。
慣れないとバランスが取れない高度の業だ。
そして体操が終わると、また本を読み始める。

お腹が空いたら食事を摂り、本を読みたくなれば、ごろりと読書。
怠惰な生活は愉しいかな。
やがて陽が落ち、夕闇が押し寄せる。

外では鈴虫が、リーン、リーン、リーンと、涼し気に鳴いている。
風呂にお湯を入れ、湯に浸かる。
時間を気にせず入る風呂は格別だ。

そして風呂上りに、酒を飲む。
心地よくなり、近くのスーパーに、酒のつまみを買いに出かけた。
そして家で、季節のサンマにスダチを絞り、刺身の盛り合わせを肴に、また晩酌を始めた。

時間に縛られることなく、気ままに過ごす休日。
この年になり、まだ現役のバーテンダー。
たった1日の休日であるから、怠惰な1日に、価値があるのであろう。