紅葉狩りの贈り物
2016年10月7日


今週の日曜日、息子が焼肉屋へ、招待してくれた。
だが行ってみると満席で、玄関前は人だかりだった。
そこで急遽、計画を変更し、近くの居酒屋へ入る。

産地直送の看板を掲げる居酒屋には、新鮮な海鮮メニューが並ぶ。
店の中は、ほとんど満席状態で賑やかだった。
私はホヤの刺身を摘みながら、新潟の銘酒八海山を飲む。

海のパイナップルの別名をもつホヤは、三陸沖の名物。
口の中に入れると、磯の香がふくらみ、濃醇な味が広がる。
だが気品に満ちた八海山は、ホヤの個性あふれる味に、負けることなく調和する。

すると息子が「親父さん、どこか旅行に行けば、俺が奢るから」
急な話に「エッ!」
「お母さんと、何処か言って来れば」

そう言えば、このところ旅行をしていない。
「それじゃお言葉に甘えて、紅葉狩りにでも出かけるか」
ママを見ると、にこッと嬉しそうであった。

その翌日から、ママは何処に行くか、ワクワク思案する。
ところが、さて何処にするかと思いめぐらすと、具体的に妙案は浮かばない。
甲信越や関東一円は、かなり旅をした。

するとママの脳裏にキラリッ! と閃いた。
そこは戸隠!
長野は北信・南信・中信と、温泉や寺社巡りをしていたが、戸隠には一度も行っていない。

戸隠にはアマテラス神話にまつわる、二千年余りの悠久の時を刻む、戸隠神社がある。
神社は日本の古社として格式高く、霊山として名高い戸隠山の麓にある。
かつて高野山や比叡山と共に、日本有数の修験道の霊場であった戸隠は、現在日本有数のパワースポットでもある。

そして戸隠はまさに日本のへそ、神の里戸隠は、最高の紅葉狩りの名所である。
早速、ママはインターネットで宿を検索する。
しかし10月は紅葉のハイシーズン、何処の宿も満室であった。

やっとのことで、10月30日の日曜日、戸隠から近い上高山村の山田温泉郷に、予約することできた。
当日は戸隠神社に参拝し、旅館に早めにチェックインをする。
そしてゆったりと温泉で、旅の汗を流す。

夕闇が迫る夕刻、地元産の幸がいっぱいの夕食を、酒を飲みながら味わう。
さらに食後、一休みして再度温泉に入り、山里の宵の風情を愉しむ。
湯あがりの上気した体に、オゾン溢れる空気が優しいだろう。

部屋に戻り、松川渓谷に面した部屋の椅子に座り、信濃の地酒を飲む。
渓谷に響く瀬音を聞き、流れ来る清涼な空気を吸いながら飲む酒は、至上のよろこびであろう。
そしてほろ酔い気分、夜空を見上げれば、漆黒の空に無数の星が、きらきらと煌めいている。