藤の花の名所、久伊豆神社を訪ねて
(〒343-0024 埼玉県越谷市越ヶ谷1700 電話 : 048-962-7136)
2016年5月8日
 
ゴールデンウィーク最後の日曜日、埼玉県越谷市にある、久伊豆神社へ出かけた。
自宅から車で1時間半ほど行くと、目的地に着いた。
無料の駐車場に車を置き、若緑繁る道を進むと、神社の大鳥居の前に出た。

参道が真っ直ぐにのび、両脇を露店が囲んでいる。
思いのほか人はまばらで、どちらかと言えば閑散としている。
参道の端を歩いてゆくと、遠く正面に神社が見える。
  
ほどなく行くと、左手に趣のある池があった。
藤棚の向こうに広がる池面を、陽光が照らしていた。
頭上を古木から、伸び広がる藤が棚を蔽い、微かに藤の艶なる匂いが漂う。
 
そして右手を見ると、藤の老樹が大きく根を張っていた。
だが目的の藤の花はほとんどなく、名残の花を僅かに残している。
すでに花の盛りはとおに過ぎ、枝に若緑の葉が煌めいている。
 
例年なら藤の花は、5月上旬が見ごろで、藤祭りで賑わうはずなのだが?
どうやら今年は、少なくとも、10日前までが見頃だったようだ。
樹齢250年、株回り7メートルの藤は、優美に咲き匂っていたであろう。
 
天保8年(1837年)、越谷の住人・川鍋国蔵が、下総国流山から、樹齢50余年の藤を、舟で運び植樹したという。
地上に張り出る7本の根は、風雪を耐えた生命力を、躍動させている。
池辺に近づき、暗緑色の池を眺めると、錦鯉が優雅に泳いでいた。
 
そしてたくさんの亀が、のんびりと遊泳している。
その池の住人の景色を、中高年の人たちが眺めている。
昼下がりの、ほのぼのとした情景に、情趣が溢れる。
 
池から離れ参道を行くと、右手の岩間を、一筋に清水が流れ落ちる。
かつては涸れることのない湧水であったが、現在は150メートルの地下から汲み上げている。
その流れ落ちる神水を、掬って飲むと、柔らかで甘く、ふくよかな味わいがあった。
 
そして参道に戻り、少し行くと本殿の前に出た。
本殿の中には、家族ずれが並び、その奥で神官が祝詞をあげていた。
お賽銭を供え礼をし、柏手を打ち、深くお辞儀をする。
 
お社の主祭神は、大己貴命(大国主)(おおくにぬしのみこと)と、言代主命(ことしろぬしのみこと)である。
創建は平安時代中頃と推定される神社の社殿に、徳川家の立葵が社紋として刻まれている。
それは徳川将軍家が、度々、この地へ鷹狩に訪れ、そのおりに参拝し、将軍家が立葵を奉納されことによる。

やがて江戸時代が終わり、明治6年4月に、郷社に列格し、当地の総鎮守として、深く崇敬されている。
さらに久伊豆神社は、「クイズ神社」とも読め、クイズ番組などの関係者が参拝する。
 
参拝を終え、先ほどの藤棚から、池を回遊することにした。
風もなく静かな池面を、亀が泳ぎ水面に波紋を描く。
その先に、亀の大群が横一列に並び、降り注ぐ陽光を浴びながら、まさに甲羅干し。
 
長閑な昼下がりの、平和な情景を、演出していた。
池畔には、黄色も鮮やかな、菖蒲が咲き匂う。
季節は藤から、菖蒲の季節に移ろう。
 
そして初夏を迎え、大蓮が水面を飾るであろう。
色とりどりに咲き匂う花々が、季節の到来を知らせ、去りゆく季節に別れ告げる。
池の彼方を望むと、先ほどの藤棚と見晴らし処が見える。
 
その下に、名残の藤を惜しむ人たちが佇んでいる。
そしてさらに行くと、右手の小高い丘に四阿があった。
初夏も近い若緑に包まれ、趣を添えていた。