四季の花めぐり・大宮花の丘農林公苑を訪ねて
(さいたま市西区西新井124番地)
2015年4月12日
桜散り若葉に移ろう季節が到来。
このところ寒さがぶり返し、しまった革ジャンパーが恨めしい日々が続く。
だが今日は一転、空は碧く澄み渡り、絶好の行楽日和。
板橋区の自宅を午後1時頃に発ち、1時間程で目的地・大宮花の丘農林公苑に到着した。
公苑は旧大宮市と上尾市にまたがり、日進町の北西部に隣接する。
その敷地は11.3haに及び、6.5haの花畑に、四季折々に花々が咲く。
 
桜が終わり今はチューリップが、七色に咲きこぼれる。
無料の駐車場に車を停め、咲き匂う花々を求め公苑に向かった。
入園料なしで開放的な入口を入ると、青空の下に花園が開けていた。
すでに大勢の人たちが、三々五々、春の日差しを浴びながらくつろいでいる。
散策道を行くと、すでにソメイヨシノは葉桜となり、若緑の葉叢が風にそよぐ。
ソメイヨシノの樹下は花びらが散り敷かれ、彼方に満開の枝垂れ桜が、薄紫に匂い咲く。
その枝垂れ桜の奥の小高い丘に、四阿が趣をそえている。
舗装された散策道を自転車が走り、子供がスケボーに興じていた。
路傍には春の花々が咲き、訪れる人たちを迎えてくれた。
春の柔らかな日が降り注ぎ、遠くにははね橋を渡る人たちが見える。
細い川に水鳥が泳ぎ、川面に波紋を描いている。
川辺には春日に温む川と、子供が戯れていた。
散策道をさらに逍遥すると、淡い黄色に咲き匂う桜が満開である。
梅の花のように小ぶりな花は、慎ましく高貴な姿で、微風に揺れていた。
そしてローマの橋の様な石橋を渡る。
橋の下を眺めると、大きな鯉が悠然と泳ぎ、川面に波紋を刻んでいる。
その向こうに水鳥が羽を休め、昼下がりの陽光を受け、水面に黒い影を映していた。
橋を渡ると、色とりどりに咲くチューリップの苑が、優雅に広がっている。
かつて1630年頃のネーテルランド連邦共和国(現在のオランダ)で、チューリップの大ブームがあり、チューリップの球根が巨費で取引された。
初期は富裕な植物愛好家に始まり、やがて投資家が参入し、最後は民衆を巻き込む狂騒曲となった。
オスマントルコ帝国で愛されたチューリップは、世界の海を制覇し、世界の市場となった国に、世界最初のバブル経済をもたらした。
やがて1637年に大暴落し、経済が破綻する悲劇的な結末を招いた。
色鮮やかに咲き乱れるチューリップの花々に、オランダの富豪たちや民衆は、魅了され狂わされた。
広い公苑にはチューリップのほかに、春の花々も満開である。
四季折々の花が咲く公苑は、8月の盛夏から秋にかけ、一面にサルビアが咲き誇る。
若葉の季節も近い今日、柔らかな日射しが降りそそぎ、春の香りをのせて微風が流れ来る。
長閑な公苑に時折子供たちの元気な声が辺りに響く。
午後4時近く陽光は傾き始め、日射しが木々の影を大地に刻む。
チューリップ畑に別れを告げ、駐車場へ向かう。
公苑の出口へ行く途中、枝垂れ桜が満開であった。

僅かに流れ来る風に、揺れる姿は優雅である。
辺り一面は幽玄で、雅な世界を現出している。
さらに歩くと小高い丘に、私と同世代らしき人たちが談笑していた。
公苑は春の花が可憐に咲き匂い、春日に輝いている。
さらに公苑出口横の、農産物直売所の前を通り過ぎ、道路を渡る。
すると日本庭園風な花園が広がっていた。
桜の老樹の下に薄桃色の花々が散り敷かれ、その奥のチューリップ畑が、鮮やかに浮き出る。
それは過ぎ去りし花のへの惜別と、季節を謳歌する花の饗宴であった。
花の季節は切なく去りゆき、そして新たな花々が、絢爛と咲き始める。

趣のある和風の庭園の池に、風に吹かれ舞い落ちた桜花が、雅な文様を描いていた。
池の傍の散策道を行くと、アンズの若芽が薄緑に煌めいている。
すでに陽は傾き、木々の影を草はらに映していた。