文庫本読みの時間
「髪結い伊三次捕物余話シリーズ」の宇江佐真理さん逝く
2015年11月9日

 

最近は平岩弓枝氏や、芝木好子氏などの女流作家の本を読む。

江戸時代の大川端や、八丁堀を舞台に繰り広げられる人情話や、湯島・浅草界隈が情感豊かに描かれている。
かつて湯島に住み、上野広小路で働いていた私には、描かれた舞台を、彷彿と思い起こすことができて楽しい。

 

このところは、宇江佐真理さんの時代小説を読む。

読み切り型の短編集は、物語の展開が面白く、二転三転する最後のは結末に、思わずほろりと泣かされる。

代表作「髪結い伊三次捕物余話のシリーズ」の、深川芸者の権兵衛名・文吉は、婀娜と気風の人気芸者。

 

羽織芸者の啖呵も小気味よく、世話好きで人情もろく、年に似合わず愛くるしい。
その間夫の回り髪結いの伊三次は、いなせで水も滴る男前。

本業の髪結いをしながら、八丁堀同心の小者を務め、様々な事件に巻き込まれる。

 

向島や深川で起こる事件を、岡っ引きや同心たちと、文吉姐さんや髪切り伊三次が、小気味よく解決してゆく。

江戸の下町の商家や市井が、濃密に描かれ、時に笑いまた泣かされ、哀感や情感が陰影深く描かれている。
一昨日の11月7日、宇江佐真理さんは、66歳で帰らぬ人となった。

1995年に「幻の声」で、オール讀物新人賞を受賞して、デビューしたのは46歳。
まだまだたくさんの作品を残してもらいたかった。
私の歳より若くして亡くなると、とても残念で傷ましくなる。
ご冥福をお祈りいたします。