秩父の夏は盆送りの花火で過ぎゆく
2014年8月16日

今年の秩父の夏はすごしやすく、二日目の16日は小雨模様。
少し離れた山肌に開かれた先祖のお墓へ、供花や真新しい卒塔婆を持ちながら出かけた。
ママの実家の庭に咲くお花と、白いお米を供え、お水を僅かに流し、お線香を焚き手を合せる。

お線香の微かな煙が、柔らかな風に靡いてゆく。
遠く眺めると幾重にも折り重なる山嶺が、雨霧に煙り蕭然としている。
山の景色は時間により、刻々と表情を変え、山水画の世界さながら幽趣にあふれる。

すると何処やらか、ヒグラシの鳴く声が聞える。
ヒグラシは夕暮れを知らせる時の声である。
うら悲しい響きは、すでに夏の終わりが近いことを教えてくれる。
お盆の送りを終え、お寺の境内へ戻る。
すでに柿や栗が青々と実をつけ、秋の稔りを待つ。
帰宅する途中、路傍や民家の植垣に、夏の花々が楚々と咲く。
時折、名残の紫陽花が、寂しそうな姿で咲きほころぶ。
やがて山々は夕靄につつまれ、霧は深く垂れ込め、山里へ風趣を誘う。
夏色に染まる山々を背景に、家々には灯りがともり始めた。
そしてママの実家では、食事の後、カラオケ大会になった。
秩父神社伝来の氏子で、秩父祭に生きる親戚のAさんの子供たちが、カラオケを盛り上げる。
やがて夜が更けると花火大会となった。
家の前でたくさんの花火が打ち上げられ、静寂な夜の空を七色に染めた。
お盆過ぎの花火は、夏への挽歌である。
花火で遊んだ夏の思い出は、子供たちの脳裏に何時までも鮮明に残るであろう。