偶然は必然かも?
2012年10月31日

先週の土曜日、元気な男女4人組が来店した。
それぞれに、今話題のオクトモア5_169、イギリス上院御用達のハウスオブローズ、ジンジャービアを使った本物のモスコミュール、
そしてスコットランドで1番売れているシングルモルトのグレンモランジーを飲みながら、4人はおおいにかつての思い出を語っていた。

4人はかつて、30年以上前の輝ける青春時代、大手の企業信用調査会社のアルバイト仲間だった。
その頃はバブル真っ盛り、世の中は賑やかに華やぎ、社会は活力に満ちていた。
そのバブリーな時代、4人の男女もそれぞれに、将来の夢を描いていた。

Mさんは大学を中退し、シナリオ学校へ入学し、友達の男性のKさんは役者志望、丹波哲郎道場1期成で役者を目指していた。
やがてMさんは劇団に入り劇作をし、Kさんは役者になり、丹波哲郎の秘書も務める。
それから時代は流れ、それぞれに社会人として、別の道を歩き始めた。

Mさんは広告会社でコピーライターをし、Kさんは大物衆議員の秘書となり、現在はC市の市議会議長を務めている。
するとKさん、私の店に貼ってあるチラシを見た。
それは神楽坂毘沙門天書院で開かれる、柳家小さんの最後の内弟子・柳家さん生さんと、
関西の実力派・笑福亭鶴二さんの二人会のチラシであった。

「マスター、さん生さんと知り合い?」
「16年くらい前からですかね。最初に私の店に来て以来ですから」
「そうですか、それなら私より古いですね」

Kさんは柳家さん生さんのお友達で、さん生さんの落語界の演出をしたこともあるようだ。
「明日、毘沙門天へ行ったら、さん生さんに伝えておきます」
そして翌日の日曜日、神楽坂へ向かった。

思いのほか、神楽坂には開演前の早い時間に到着した。
時間潰しに、神楽坂の路地裏散歩と洒落てみることにした。
やはり神楽坂の裏路地は風情が漂う。

そして狭い石畳の路地を歩くと、山田洋次監督や作家などが長期滞在し作品を書いた、
旅館・和可菜の前に、3人の女性が立ち話をしていた。
私たちは何気なく通りすぎる時、「マスター!」と声が掛った。
私たちは吃驚して立ち止まった。

見れば、私の店の近くにある病院へ勤める看護師さんたちで、20年来のお客様だった。
「まさかここでマスターとママに会うなんて。一瞬、目を疑いました」
「私も吃驚しました、突然声を掛けられて。これから毘沙門天で、お客さまの落語会があるもので」
そして軽く挨拶を交わして別れた。

落語会は2時に開演し、中入りを挟み、終演は5時近くなっていた。
会が終わり、玄関口でさん生さんと鶴治さんが、にこやかにお見送りをしていた
本日誘って落語界に来てくれたTさんを、さん生さんに紹介し、
昨日の市議会議員のKさんのことを言ったら、さん生さんは目を丸くして驚いていた。

世の中は本当に狭い。
去年の今頃、京都駅構内にあるエレベーターで、私のお店のお客様で、現在は京大で研究をしているOさん家族と出会った。
さらに佐野厄除け大師の山門では、お店のお客様の洋画家Aさんにばったりと出くわしたこともある。
こんなことは確率的にはゼロのことなのだが、現実に幾らで起こるから楽しい。
きっと偶然も、我々に見えないだけで必然なのかもしれない。