我が店の守護犬、バロン
2010年7月15日

愛犬バロン

このワンちゃんと出会って、もう20年くらいたつのだろうか。
その頃、私が時々立ち寄るリ、サイクルショップも兼ねたような骨董屋さんがあった。
店の中をぷらりぷらリと見物していると、こちらをじっと見つめている犬の置物があった。
大きな口を半開きにして、ピンク色の舌を垂らしながら、私を見つめている。

大きな耳を両脇に下げて、つぶらな黒い瞳が、囁いていた。
「僕を一緒に連れていって」
私はワンちゃんを持ちかえることにした。
購入代金は4000円くらいだったと思う。
大きな紙袋に入れて持ち歩いてみれば、ずしりと重かった。

それ以来、雨の日も風の日も、嵐が吹いても雪が降っても、私の店の玄関を護ってくれている。
私の店の隣に、古くからある幼稚園がある。
その子供たちの人気者が、わがワンちゃんだ。
だから、私が店に入ると、最初にする仕事が、ワンちゃんを玄関横に置いてあげることなのだ。

或る日の事、外で子供の泣き声がした。
「ワンちゃんがいない〜」
それ以来、ワンちゃんを、定位置に置くことが、私の最初にする仕事とになった。
5時過ぎ、幼稚園から、お母さんに連れられて帰宅する子供たちの声が、賑やかに響く。

何人もの子供たちが、「ワンちゃん、ワンちゃんだ」といって、皆でワンちゃんの頭を撫ぜている。
だから、ワンちゃんの頭は、つるつると光っている。
長い間、子供たちに愛されたワンちゃんの勲章だろう。
だが、時々、散歩をしている本物の犬に、吠えられていたりもする。
すると、飼い主が叱る声、「馬鹿ね! それは人形よ!」
きっと、このワンちゃんの存在感が大きいのだろう。

そんな、話を昨日来店した、犬好きのお客様に言ったら、名前を付けてあげたらということになった。
そこで、私は真剣に考えた。
ワンちゃんの堂々とした威厳、そして、愛くるしい円らな瞳。
多くの子供たちに注ぐ豊かな愛情。
そして、武士のような凛々しさ。
私は、ワンちゃんの名前は、バロン・BARON(男爵)に決めた。
バロンがこれからも、私の店の狛犬となって、私たちとお客様、そして、幼稚園の子供たちを護ってくれることだろう。