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August.2011.08

このたびの地震により、被害を受けられた皆さまへ、謹んでお見舞い申し上げます。

そして、一日も早い復旧と復興を、心よりお祈りいたします。






夏の秩父路を訪ねて
2011年8月27日





芥川龍之介とブラック&ホワイトの謎
2011年8月21日

7月24日日は、芥川龍之介(1892年・明治25年 - 1927年・昭和2年)の命日。
その日は、氏の作品にちなんで、河童忌とされ、東京都豊島区巣鴨の慈眼寺にあるお墓には、今でもたくさんの愛読者が献花を添える。
夏目漱石の死の1年前には、級友鈴木三重吉の紹介で、夏目漱石の門下にもなる。

昭和2年の7月24日に、「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」の言葉を残し、芥川は服毒自殺をした。
だが、その自殺も実は狂言で、本当に自殺するつもりはなかったのではないかという説もある。
自殺の前日には、近所に住む室生犀星のもとを訪れたのだが、生憎、氏は不在。

あの時、私が芥川と会って話を聞いてあげれば、彼の自殺は避けられたのではと悔やんだそうだ。
それはさておき、芥川の自殺する3ヶ月前に書かれた作品「歯車」に、スコッチ・ウイスキーのブラック&ホワイトが登場する。
時折、芥川の右目に、半透明の歯車が現れ、数を増殖し、やがて視野を塞いでしまうと言う「歯車」の話だ。

その後、歯車は消えるのだが、猛烈な頭痛が襲い始める。
医者は芥川のヘビースモークにあると言うのだが、実母が生後7ヵ月後に発狂した血に、芥川は存在的な恐怖を感じてもいる。
この頃の芥川の作品は、まさに、志賀直哉の「話らしい話のない」心境小説の世界を尊敬する芥川にとっては、
私小説的真実の現実を、表現していると言える。

毎日、抗鬱薬や睡眠薬を常習する氏に、毎日、様々な妄想やら強迫観念など、分裂症的な症状が襲う。
そんな時、かつて自分の実父新原の経営する牛乳店で働き、今はキリスト教者となり、銀座の聖書会社の屋根裏に住む老人を尋ねた。
しかし、敬虔なキリスト教信者として、隠者のように生きる老人に、尊敬の念は抱くが、やはりそこは、氏の安息の地ではなかった。

芥川は老人の屋根裏部屋を辞し、銀座の町の裏路地を歩き始める。
重い気持ちを抱き、彷徨するように歩く芥川に胃痛が襲う。
この痛みを止めるには、ウイスキーしかないと思い、とある地下室のレストラン・バーに入った。
そして、ウイスキーを1杯注文した。

「ウイスキイを? Black and Whiteばかりでございますが、・・・・・・」
僕は曹達水の中にウイスキイを入れ、黙って一口ずつ飲み始めた。

昭和2年当時、スコッチ・ウイスキーは最高級洋酒。
日本にサントリー山崎蒸留所が、建設着手したのが、1923年(大正12)。
そして、国産ウイスキーとして、丸瓶に白いラベルを貼った「サントリー白札」が、初めて誕生し発売されたのは、1929年(昭和4)であった。

その値段たるや4円50銭。
スコッチ・ウイスキーに匹敵する値段であり、当時の一般家庭の生活費の、1割に相当するほど高価なものであった。
芥川が入った地下のレストラン・バーは、果たして今でも存在するのであろうか。

それにしても、ウイスキーがブラックアンドホワイトだけというのも、銀座といえども格式が高い店だ。
彼のすぐ横の席に座る30前後の、新聞記者と思しき男2人が、芥川を意識しながら、フランス語で話している。
「Bien……tres mauvais……pourquoi ?……」
「Pourquoi ?……le diable est mort !……」
「Oui, oui……d'enfer……」
そんな連中の溜まり場でもあった店なのか?

ボーイはきっと、白のボーイコートに、黒のズボン、黒い靴を履いていたであろう。
もちろん、襟首には黒い蝶ネクタイ。
頭はオールバックに、決めていたかもしれない。

だが、注文を取り、アルミニュームかステンレスのサービストレで運ぶ、ホール係のボーイなら、短髪かもしれない。
テーブルに置かれたウイスキーは、小さな底上げのずしりと重い、30ccきっかり入る、ストレートグラスに注がれていたであろう。
そして、別のタンブラーに、冷えたソーダー水が満たされ、チェイサーとして置かれたものか?

そのチェイサーに、ストレートグラスからウイスキーを注ぎ入れ造った、自分味のハイボールは、さぞや美味いであろう。
だが、実際には、芥川は大の甘いもの好き。
そしてタバコは、1日に180本も吸うヘビースモーカー。
さらに風呂嫌い、犬嫌い、酒はからきし駄目な下戸であったと言う。
それなのに、何故、ウイスキーであったのであろうか?







小さな旅&日記を更新
信州善光寺&松代を訪ねて

2011年8月13日








(パソコンで描いてみました)

2011年8月9日
早いもので、暦の上では、昨日が立秋

だが秋風など吹くはずもなく、部屋の外はじりじりと、焼け付くような暑さだ。
先週までの凌ぎよい天気は一変、また元の猛暑がぶり返した。

毎日朝早くから、遠くで蝉のミーンミーンと、透明度のある鳴き声が聞える。
やがて外の喧騒が聞え始めるとともに、日差しも強くなり、気温もぐんぐんと上昇する。
昼下がり外に出れば、隣の公園では、アブラゼミの鳴き声、ジージージーの大合唱。

今年は蝉の鳴き声が、例年に比べ多いような気がする。
するとにわかに、空は黒く厚い雲が垂れ込め、遠雷が聞えて来た。
そして一瞬の内に、空は光を失い、一気に大きな雨粒が、激しく降り落ちる。

まるで南洋のスコールのように、激しく音をたて、地面は雨を弾き、道路は一瞬の洪水。
地球温暖化が叫ばれ始めて以来、日本はさながら、亜熱帯気候である。
暫くすると雨足は柔らかくなり、雨は小降りになり始めると、空にはまた日が戻り始める。

今までの雨が嘘のように、空に青空が戻り、太陽が灼熱の日射しを降り注ぐ。
油断できない夏の天気。
不安な天気は悪戯者。
そんな天気に振り回されず、毎日の元気とエネルギーで、この夏を乗り切ってください。








映画に見るお酒
2011年8月5日


今年の5月から今月までに、和洋の映画を、数えてみれば38本観ている。
改めて今更ながら、映画の面白さを堪能している。
今は私のある意味で、創造的エネルギーの充電期間。
それにはたくさんの新旧の名画を観て、古い小説をじっくりと読みこむことで、たくさんの栄養が与えられる。

昨日も、アルフレッド・ヒッチコック監督、1959年製作「北北西に進路を取れ(:North by Northwest)」を観た。
ケーリー・グラント扮する、広告会社社長ロジャー・ソーンヒルは、ジョージ・キャプランに間違えられるところから事件は展開する。
ホテルから誘拐され、謎の人物タウンゼントから仕事を要請されたが、それを断ると、泥酔状態にされ、殺されそうになった。

この時、飲まさせれる酒が、バーボン・ウイスキー。
グラスに、ボトル1本が並々と注がれ、それを無理やりに、一気に飲まされた。
そして泥酔状態のまま殺されるところを、命からがら車を乗っ取り、間一髪、危機を逃れた。
その時飲まされたお酒が、スコッチ・ウイスキーやコニャックでないところが、やはりアメリカ映画。
無理やり口の中に、どぼどぼと流し入れられた酒は、アメリカの中産階級の酒、バーボンウイスキーだった。
悪人どもにも、高級酒スコッチ・ウイスキーは、勿体なかったのであろう。

命からがら、泥酔状態で危機を脱出したが、途中、酔っ払い運転で警察に逮捕される。
が、彼が誘拐され、無理やり酒を飲まされ、泥酔状態で殺されそうになったことを語るが、彼の母親も含め、誰も信じる者はいない。
そこで彼は自分自身で事件を解決しようと思い立ち、国連に出かけ、謎の人物タウンゼントを尋ねた。

だが会った人物は、彼を殺そうとした人物とは、まったくの別人。
その時、今度はタウンゼントが、何者かが投げたナイフで、背中を刺し貫かれ殺された。
背中のナイフを抜き取り、血塗られたナイフを持ち、呆然と立ちすくむ彼は、犯人に仕立て上げられてしまった。

彼は必死に警察から逃れ、さらにキャプランを追跡し探し出すことが、自分の無実を証明する。
そして、彼はキャプラン探しの追跡行のために、発車直前の長距離列車に乗り込む。
だがすでに、列車には警察の手が及んでいた。

その時、謎の女性が彼に救いの手を差しのべた。
そして、何食わぬ顔で、列車の食堂で、2人は食事をする。
その時、ウェイターが食前酒の注文を訊いた。
すると彼はギブソンを注文。
運ばれてテーブルに乗った、カクテルグラスのパール・オニオンは、純白に耀いていた。

このパールオニオンの純白が、彼の無実を象徴しているのであろうか。
そしてエヴァ・マリー・セイントが扮するイヴ・ケンドールが、彼女の客室に彼を匿った。
ところが、この彼女が曲者、彼は彼女の罠に嵌り、またもや絶体絶命。
だがどんな逆境をも克服する、超人的なエネルギーを持つ彼は、またもや死線を乗り越えた。

そして彼に罠を仕掛けたイヴ・ケンドールを捜索し、彼女の宿泊するホテルの部屋を見つけた。
部屋に入った彼は、彼女を追求する。
だがその時、彼女はさりげなく、何ごともなかったように振る舞い、一先ず、飲み物は何にするか、彼に尋ねた。
すると彼はスコッチ・ウイスキーの氷なしの水割りを注文した
彼女は平静を装いながら、丁寧に造って彼に手渡す。

やはり、高級ホテルの部屋には、スコッチが置かれ、上流階級はスコッチを飲むことを、暗に示していた。
アメリカの映画を観ていると、飲む階級によって、はっきりとお酒が決められているのが面白い。
「レスラー」を演じるミッキー・ロークは、何時も飲む酒は、バーボンであり、クリント・イーストウッドが演じる刑事も、バーボンを飲む。
アメリカの金持ちは、ホワイト・スピリッツやバーボン・ウイスキーなどは口にせず、
もっぱらシャンパンやコニャック、スコッチ・ウイスキーを飲む。

外国映画を観ていると、それぞれの重要なシーンで、なるほどと思わせる酒が登場する。
その点、日本の作品において、お酒が重要な映画のキイ・モメントになることは少ない。
小説にあってもやはり同じ傾向があるのだが、
明治後期、大正時代から昭和の初期の作品には、意外と外国のリキュールが登場する。
やはり、リキュールの中に、西洋のハイカラを夢見ていたからであろうか。

芥川龍之介作(昭和2年)「河童」に、雌の河童がテーブルの上に立ち、
アブサントを60本飲み干し、テーブルから転げ落ち、たちまちにして往生したとある。
アブサントは1906年にスイスで、1915年にはフランスでも製造禁止になった。
芥川がイメージしたアブサンは、きっとまだ世界に残っていた、純正のアブサンであろうと想像できる。
それにしても、日本は酒に対して全て平等、生活レベルによって、飲む酒の色分けがされていないのがとてもよろしい。



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