足利フラワーパークの藤
2009年4月30日(木)

ゴールデンウィークの大混雑を避け、30日(木)、足利まで藤見物に出かけた。
予定は日曜日だったが、お客様がご御託宣。
金曜日からは、大混雑の大渋滞は、間違いなしとの事だった。

そこで、日曜日は避けて出掛けることにした。
東北道を飛ばし、佐野藤岡ICで下りて、一路国道50号を進む。
途中、懐かしい佐野厄除大師様の看板を、右に見ながら、足利を目指す。

やがて、足利市街地の看板を見つけ、見当をつけて進む。
すると、寂しげな田舎道に、突如、足利フラワーパークの標識。
そして、警備員が2人、交通整理をしていた。

指示のもとに進めば、広大な駐車場。
さらにさらに進めば、奥には大きな駐車場があった。
すでに、車は満杯であった。

平日なのに、この状況ならば、明日からの連休、間違いなしに、
人と車で溢れ、身動きもままならないのは必至だ。
やはり、今日来たのは正解だったようだ。

誘導に従い車を駐車して、足利フラワーパークの正門へ。
切符売場に並び、入園券を購入。
ここは、花の咲く時季により、それぞれに値段が違う。

今日は、最高の値段の1500円だった。
入るとすぐの広い売店は、ごった返していた。
中に入れば、大勢の見物客がいた。

今日は絶好の花見日和。
中空には太陽が昇り、木々や花々を、鮮やかに照りつけている。
小高い丘の、細い花の散策道。

藤の花やらツツジの花の匂いに誘われながら、
行き交う人たちは、満面に笑みをたたえている。
藤棚からは、柔らかな薄紫の藤花が垂れ落ち、

ツツジの花は朱色、黄色、白に咲き誇る。
何処からかそよぐ風。
甘く妖しい匂いが、観る者たちを包む。

やがて、遠くに池が見え、その奥に、一面の薄紫の藤花が霞む。
ぶらりぶらり、人の流れにまかせながら進めば、
そこには滝のように、絢爛と藤花が枝垂れていた。

無数に伸びた枝々から、妖艶な匂いが垂れこめる。
此の世のものとは思えぬほど、彼岸の優麗な匂いを醸す。
1996年2月、現在地の迫間町に移植されたものだ。

日本の女性樹医1号塚本こなみによって、現在地に、日本で初めて、移植に成功した。
樹齢約140年、枝の広がりは517平方メートル(500畳の広さ)、
「炭素埋設世界一(260t)」を誇る大藤である。

大藤の前には、たくさんの老若男女。
空から垂れ落ちる藤花の薄紫の霖雨の下、
藤花の饗宴に酔いしれている。
たった1本の古木から、これほどまでに枝を広げる古木の生命力。

脈動する生命力は勿論だが、その命を守り続ける人との芸術作品と言えるだろう。
古木を囲む柵。
その回りには、長く深く張った根を護るための、木の道が付けられている。

大勢の見物客が押し寄せれば、地中の藤の根は踏みしめられ悲鳴をあげる。
観る側にも、自然の草木に対する思いやりとモラルがある。
だから、柵の中には、決して入ってはいけないのだ。

藤の花の幻想の中、酔うようにさらに、花々に誘われながら進めば、
木々の若緑が、池の湖面に影を映していた。
昼下がりの強い日差しを浴びて、満開にツツジが華やいでいた。

麗かな初夏を思わせる春日に誘われてさらに進む。
遠くには、小高くなだらかな丘が、幾色にも緑をたたえていた。
すると、正面に、白藤のトンネルが見えた。

そして、その手前に、軽食コーナーがあった。
ここで、ごくごくと生ビールでもとは思ったが、すでに2時半を回っていた。
これから、東京へ帰って仕事がある。

諦めて、白い椅子に座って、藤色のソフトクリームを食べた。
色は藤色の紫色だが、味はラベンダーの香りに近かった。
まだまだ強い陽光を浴びながらの、ソフトクリームは美味しく沁みた。

すでに、フラワーパークに来て、2時間は経過している。
煌く花々に見とれ、感動しているうちに、2時間も歩き続けていたのだ。
ソフトクリームの甘露が、身体を漲らせてくれる。

そしてさらに、ぶらりと先に進むと、樹齢140年の「八重黒f龍」があった。
葡萄の房のように、こんもりと盛り上がり、紫の色も濃い。
強い陽光に映し出され、さらに紫の陰翳を深くしていた。

香りは甘やかに、馥郁たる匂いを強く漂わす。
妖艶で情熱的とでも言える匂いが、辺り一面を包みこむ。
観る者は紫の花園に酔いしれる。

あちらこちらで、記念写真を撮る人たち。
そして、日本一の八重藤に、時には感動と驚嘆の声さえ聞こえる。
車椅子を押す人や、杖をつくお年寄りも多かった。

お花見は日本の文化なのだろう。
花を愛でる心は、平和にして初めて生まれるもの。
最近は、花の咲く処に、溢れるほどの人々が、押し寄せている。

さらに進むと、栃木県指定天然記念物、白藤のトンネルがあった。
まだまだ、藤花は3分咲きか、花房も短く、花穂は開ききっていない。
だが、80メートルのトンネルを進めば、微かに甘く柔らかい匂いが流れ来る。

満開になれば、さぞや花のトンネルには、切ないほどに甘く、繊細な香気に溢れ、
ゴージャスな純白のシルクロードとなるのだろう。
その時は、さらに花房は垂れ下がり、花回廊は純白の花園になる。

白藤のトンネルをあとにして、畳200畳、
樹齢130年の藤の古木「野田九尺藤・大藤」へ向かった。
遥か正面の奥一面に、陽光に照らされ、藤棚の薄紫が耀く。

空の青、遠くにはツツジ花の朱色、木々の緑との鮮やかなコントラスト。
近づくに従い、藤の匂いが、微風に乗って漂い来る。
棚の下に来れば、陶然とするほどに、匂いが舞い揺れる。

長く垂れ落ちる花々の紫のシャワー。
何時までも、この紫の桃源郷に浸っていたくなる。
微かに洩れる陽光が、地面や散策道に斑模様を描く。

えも言えぬ柔らかな香水か香木のような匂いは、心に深く安らぎを与えてくれる。
匂いたつ藤花の余韻に浸りながら、名残も深く後にする。
やがて、色とりどりに咲き匂う花壇が、池に浮かぶ。

遠くには、先ほどの大藤が、薄墨に滲むような薄紫に広がる。
池の中に敷かれた散策道を進むと、黄花藤の80メートルのトンネルがあった。
まだまだ開花には程遠く、黄色も鮮やかに、華麗に咲き誇る姿は幻に終わった。

そして、最終のコース、印象派の画家クロード・モネの、
フランスはジヴェルニーの「水の庭」を模した「モネの池」へ出た。
モネは日本の浮世絵をこよなく愛した。

モネの部屋の中には、たくさんの浮世絵師たち、
喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重が飾られていたと言う。
その浮世絵には、池を渡る太鼓橋も描かれていた。

太鼓橋をを上り眺めれば、「モネの庭」には、睡蓮の緑濃い葉が浮かんでいた。
水面には木々の影が映り、きらきらと昼下がりの陽光を反射していた。
すでに時間は午後3時半、足利フラワーパーク散策は終わった。