「小さな旅&日記」
秩父札所二十八番橋立堂


2008.8.16
一昨日、秩父に来て、今日は東京へ帰る。
その帰り道、柴原温泉郷を抜け、国道140号から、影森方面へ左折。
歌手のアルフィーの桜井さんの実家、食料雑貨の桜井商店の前を通り、
秩父鉄道の武州日野、武州中川を過ぎ、浦山口から、右へ折れて、
一路、秩父札所二十八番橋立堂、通称橋立観音堂へ向かう。
里山の道中、今日も好天、3時に頃到着した。

観音様へ向かう、狭い一本道。
入り口に有料の駐車場。
だが、無料の駐車場が、この下り坂の狭い道の先にあるらしい。
半信半疑で進む。
道はすれ違うことも出来ないほどに狭い。
200メートルほど先に進むと、無料の駐車場があった。
少し待っていると、車が一台出たので、そこに車を停めた。

昔の農家を改造したような、土間が土で剥き出しの、
古風な手打ち蕎麦のお店があった。
その先にも、2軒の食事と休み処があった。
すでに、ここは境内。
右手には、急峻な階段があり、切り立った垂直65メートルの
白い奇岩に抱かれて、橋立観音堂が見える。
だが、まずは、橋立鍾乳洞の見学をすることにする。
前回は30年位前に来た。
その時は、残念なことに、工事中で、見学が出来なかった。

今回はぜひにと思い、やって来た。
入館料を200円を払い中へ。
受付のお婆ちゃんは愛想なく、
ただ、お金と引き換えに、見学券を差し出す。
下りの狭い道を、少し進むと、鍾乳洞の入り口があった。
狭く、薄暗い入り口を入り、裸の白熱球の灯る、
細い階段を下りると、ひんやりと冷気が漂う。

ごつごつした低い天井、頭を下げて、
気をつけて進まないと、頭を岩にぶつける。
染み出た地下水で、少しぬかるむ通路に、足を取られそうになる。
古来より、堂内を西から入って、東へ抜ける、鍾乳洞の胎内巡り。
鍾乳石や石柱、石筍には、七福神の名前が付けてある。

とにかく、狭く、険しい道のり。
二日酔いなら、かなりしんどい行程だ。
身体を折り曲げ、突き出た岩をぬうように、
身体を捻り、薄暗く、湿った通路を進む。
時には、80度くらいある鉄の階段を上る。
私達の他にも、若い見学の人たち。
予想外の険しさに、喘いでいるいる人さえいる。

鍾乳洞というよりは、どちらかと言えば、険しい洞窟探検。
浜松の鍾乳洞のような壮麗さや、地底宮を思わす流麗な世界とは程遠い。
かつて、修験者の奥の院というのもむべなるかな。
掘り進められた、冷気漂う岩場の修験者の道だ。

くねりくねり、おっかなびっくり、腰を屈め、
頭を垂れ、身体を捻りの堂内140メートル。
難行苦行の20分が終わった。
遠くから、明るく響く人の声がする。
そして、階段を登れば、外光が差し込んきた。
ほっとしながら外へ出ると、蝉の泣き声が、耳に飛び込む。
出口から狭い道を下ると、先ほど入った門に辿り着き、境内へ出る。
そのすぐ左に、急峻な階段が構えていた。

磨り減って、ところどころ欠けたり、傾いた階段を上る。
まだまだ強い日差しを浴びて、途中、背中から汗が噴出して来た。
やっと上りきると、けっして、煌びやかではないが、
上品な佇まいの江戸中期建立、弘法大師ゆかり、朱塗りの観音堂があった。
本尊は秩父札所で唯一の馬頭観音。
日本全国観音霊場でも二つしか存在しない、珍しい観音様だ。

お賽銭を投げ入れ、鰐口を綱で鳴らし、
お堂の中に鎮座する、観音様に手を合わせる。
観音堂の裏手に回り、聳え立つ大岸壁。
垂直に切り立った絶壁は勇壮。
観音堂の光背のようにそそり立つ。
狭い境内に戻れば、伝説の白馬の銅像。
そして、彼方には、生い茂る木々が、陽光を浴びて、緑も鮮やかに耀く。