鴨川シーワールド&誕生寺
5月11日(日)−12日(月)


野島崎灯台と岩礁
5月の連休明け、神田明神が始まり、今週は三社祭り。
京都では葵祭りが、平安時代さながらに繰り広がれる。。
これから、日本全国津々浦々、夏祭りが繰り広げられる。
それなのに、如何したことか?
陽気は愚図つき、気温はぐっと下がる今日この頃。
おまけに、小笠原沖には、季節外れの台風2号まで発生している。
そんな折、私たちは房総の鴨川へ出かけた。

何時もは、夫婦仲良くフルムーンの旅。
しかし、今回は私の一番下の娘を招待した。
朝一番、首都高から湾岸線、
川崎浮島ジャンクション、そして、アクアラインへ。
「海ほたる」に到着した頃は、すでに空は明るく、どんよりとした厚い雲。
「海ほたる」の駐車場は、さすがに空いていた。
売店やレストランはまだ閉店していた。
だが、4Fのコンビ二だけは、昼時のように、明かるい。
エスカレーターで5Fへ。
一軒だけ、レストランが開いていた。

アシカのパフォーマンス
ママはまだ食欲もなく、ドリンクバーで済ます。
私は佐世保バーガーを。
娘はラーメンを食べる。
窓越しの席に座り、東京湾を眺めなる。
空は薄墨ながしたような、
重い雲が垂れ込こめ、雨はしとどに降っている。

海は鈍い灰青色。
波はやや高く、吹く風にあおられ尖っている。
今日の旅、雨は覚悟しなければならないだろう。
天気予報によれば、明日も期待はできない。

暫く休息のあと、雨の降り続けるアクアラインを進む。
晴れていれば、朝の陽光とともに、東京湾はきらきら黄金に輝く。
海を二つに切り裂きながら、アクアラインをまっすぐに進む。
彼方、横浜辺り、屹立したビル群が、朝もやに煙る。

車のフロントガラスには、雨が弾ける。
やがて、木更津金田インターに到着。
高速道を降り、国道127号で館山へ向かった。
この道で、館山に向かうのも10ヶ月ぶりだ。
宿泊した館山の海辺のホテルも快適だった。

水族館の動物たち
君津、富津、金谷、保田、富浦。
「道の駅」で軽く休息。
そして、右手に、雨に霞む内房の海を見やりながら、
少し遠回りしながら、洲崎灯台へ。
遠く右手に、白亜の灯台が、海に突き出た岬の高台に見える。
雨の1日、晴れていれば出かけるところだが、眺めるだけで通過。
はるか太平洋に面する、フラワーラインは優美だ。

晴れていれば、街道沿い、
初夏の花々で、鮮やかに彩られているのだが。
館山を過ぎ、野島崎灯台を見やりながら、さらに進むと、
海岸沿いに、眺望の良い公園があった。
駐車場に車を置き、傘を差して外へ。
太平洋に突き出る岬に、野島崎灯台が灰白色に浮かぶ。

雨の房総、雨風で肌寒い。
フラワーラインをさらに進み、内房から外房へ。
景色が一転、景色は勇壮で雄大、まさに、男の海だ。
遥か永劫、太平洋の荒波に抉り取られた岸壁。
大波に洗われ、波浪は千路の飛沫。
千倉には、出航できない、沢山の漁船が停泊していた。

フラワーラインをさらに北上。
和田辺り、防砂林に囲まれた真っ直ぐな道を進み、
R128外房黒潮ラインへ。
江見、太海、そして、目的地の鴨川へ到着した。
宿泊するホテルの駐車場に車を入れる。
フロントに荷物を預け、
鴨川シーワールド・2日間出入り自由のパスポートを貰う。

入場券だけでも、1人2800円。
それが、ホテルの宿泊料に付いているのだからありがたい。
ホテルに隣接した、鴨川シーワールドへ。
12時前のお昼時、昼食を摂ることにした。
しかし、めぼしいレストランもなく、鴨川市内へ食べに行くことに。
だが、予想に反して、市内は閑散とした寂びれた風情。
日曜日だと言うのに、シャッターが下り、閉ざされた店々。

少し諦めかけていた時、純和風の割烹食堂があった。
広い駐車場には、そこそこに車が停まっていた。
がっしりとした玄関を開けると、店内は広かった。
靴をげた箱に仕舞い、ぴかぴかに磨かれた板間の客席へ。
サービス係のおねーさんの案内で、奥のテーブルへ。
店は観光客で混雑していた。

ママは店の名前を冠した「藤よしご膳」。
娘は、うどんとねぎとろ丼と天ぷらのセット。
私は、房総名物のなめろーと生ビール。
やがて、料理が運ばれてきた。

かき揚げ、合鴨と筍のステーキ、鶏肉と季節の野菜の炊き合わせ。
鰹の刺身、佃煮、香のもの、ご飯と味噌汁。
そして、デザートにイチゴのアイスクリーム。
〆て2100円。
かき揚げは見た目以上に、さくりとあがり、さっぱりしている。
観光地の料理屋、最近は何処も美味しくなっている。
田味噌味のなめろーもたっぷり。
私はさらに、生ビールを頼み、地酒「腰古井 」の燗酒をいただく。

ゆったりと食事の時を過ごし、会計をして外へ。
雨は少し小降りになっていたが、相変わらずの雨模様。
もと来た道を戻り、鴨川シーワールドへ。
ホテルのロビーを抜けて中へ。
アシカのパフォーマンスが始まっていた。

女性スタッフの自由自在の合図に従い、
愛嬌の溢れるパフォーマンスが繰り広げられる。
軽快な音楽に合わせて、リズミカルに演技する姿が愛くるしい。
やがて、30分ほどで演技が終わった。

シャチのパフォーマンス
次のパフォーマンスまで時間がある。
水族館へでかけた。
様々な動物たちが、大きなガラス窓の向こうに見える。
ペンギン、アシカ、アザラシ、シャチ、ベルーガ、セイウチ。
こちらを向いて、ガラスに顔を押し付け、
まん丸なあどけない黒い瞳で、こちらを見るアザラシ。

どでかい身体で、悠然と泳ぐセイウチ。
長く伸びた髭は貫禄充分だ。
マンモスのように発達した、長くて太い牙。
意外にスマートで、想像以上に敏捷なトド。
様々な海の生物が、拡大画面のように、目の前を泳ぐ。

やがて、シャチのパフォーマンスが始まる。
オーシャン・スタジアムまでは、そこそこの距離があった。
すでにスタジアムの観覧席は、見物客で一杯だった。
最上部の端の席に座ると、パフォーマンスは始まった。
大きなシャチが3頭、プール狭しと泳いでいる。
プールの向こうには、雨に煙る外房の海が広がる。
観覧席には、冷たい風が吹き渡る。

巨大なシャチが、スタッフの合図とともに、パフォーマンス始めた。
女性スタッフがプールに飛び込む。
かなりの深さを潜った時、
シャチがスタッフを鼻先に乗せ、一気に競りあがってきた。
そして、巨大なシャチの顔が現れる。
その時、鼻先に乗った女性は、
両手を真っ直ぐに伸ばし、笑顔いっぱいに、空中へジャンプする。

大胆で華麗な演技に、観客たちは万来の拍手を送る。
次々に、他の男女のスタッフが、
シャチたちと優雅にして、豪放なパフォーマンスを繰り広げる。
野生の生物たち、訓練・調教をすれば、これだけの演技をする。
そのために、途方もない時間と、限りない愛情を注ぐ。

とてつもない時間、果てしなく続く訓練。
動物たちにとっても、過酷で厳しい時間だろう。
しかし、その根底には、人間の注ぐ大きくて深い愛情がある。
動物でも、注がれる無限の愛情は心で分かるのだ。
場内にはロマンティックな曲が流れる。
動物と人の美しい協奏曲。
流れるように、優美に、そして豪快にパフォーマンスは終わった。

やがて、次の会場で、イルカのパフォーマンスが始まる。
軽快なリズムに乗って、4頭のイルカたちのパフォーマンス。
踊ったり、飛び跳ねたり、ジャンプ一閃の輪潜り。
愛くるしいイルカ達のパフォーマンス。
こんなにも人懐こいイルカたち。

外国人がイルカを特別視する気持ちも、分かるような気もする。
しかし、長い日本の歴史の中で育まれた文化。
人と動物との深い歴史的な関係がある。
そこを理解せずに、動物愛護という側面だけで、
イルカの捕獲を非難することには、
大きな問題も孕んでいるのではないだろうか。

すでに、時間は3時。
ホテルのフロントへ行き、予定のチェックイン。
部屋は4階。
一面のガラス窓の向こうには、外房の海が広がる。
いまだ垂れ込めた灰色の雲。
浜には、鈍いエメラルド色の波が押し寄せ、浜辺を白波で洗う。
鴨川シーワールド、25年ぶりの訪問は、思いのほか楽しかった。
昔ながらの観光スポットやレジャーランド、なかなか侮れない。

無事に今日の旅は終わった。
部屋で、まずはビールを飲む。
暫くして、温泉へ。
地下1階にあった。
広い風呂場には、すでに先客が2人いた。
身体を洗い風呂に浸かる。
いっぱいに広がるガラス窓。
見える庭の木々も、雨に濡れて若葉が萌える。
脚を伸ばし、ざぶりと頭から湯をかぶる。
房総の旅、身体の滓を洗い流してくれる。

6時から夕食が始まる。
海の幸、里の幸、和食、洋食、中華満載のバイキング。
ママと娘と私たちは、生ビールで乾杯をした。
すでに、陽は落ち始め、食事処も賑やかになった。
たっぷりの食事を摂り、部屋へ戻ると、すでに、陽は完全に落ちていた。
夕闇の中、海上には島が浮かび、
海岸沿いに立ち並ぶホテルの灯が輝いている。
鴨川の地酒「純米吟醸原酒・寿萬亀」を飲みながら、
オーシャンビューを楽しむ。

ベルーガのパフォーマンス
漆黒の海。
悠久の時の流れ、押し寄せる波。
海岸線に輝く街の灯は、耽美な煌き。
寄せては返す波浪は、他界への誘いか。
ほろ酔い気分、果てしなく、脈絡もなく、ふくらむ想像が愉しい。
今日一日、小雨交じりの曇天。
ゆったりと、房総の初夏、旅情を楽しむ。

翌朝、6時に目覚める。
曙光が輝き、黎明を期待したいところだが、やはり、空は暗く重たい。
広大な海も輝きを失っている。
タオルを肩に、廊下を歩けば、空気はひんやりとしている。
昨日と入れ替わった男湯と女湯。
大浴場に入れば、すでに、昨日同様、先客が2名いた。
家にいれば、今ごろはまだ熟睡の時間。
旅先では、不思議と早起きだ。

風呂を出て一休みすると、朝食の8時。
どんよりとした雲。
鈍いエメラルド色の海を眺めながら、たっぷりと食事をする。
昔ならば、飲みすぎで、食欲減退。
折角の旅館の料理、名ばかりの朝食だった。

イルカのパフォーマンス
最近は、少し、学習能力がついたのか、
程ほどの酒で愉しめるようになった。
おかげで、朝食が美味い。
やはり、人生、足るを知らなければいけない。
人間の欲望には際限がない。
程々で満足をすることがおおいに肝要。
物事の味わいと滋味を、充分に咀嚼して、愉しむ事が必要だろう。

食事の後チェックアウトを済まし、
フロントに荷物を預け、鴨川シーワールドへ。
9時半から、ベルーガのパフォーマンスが始まる。
会場のマリンシアターは、一番奥にあった。
まだまだ、鴨川シーワールドは閑散としていた。
売店も殺風景な佇まい。
陽も差さない海辺、微かに渡る潮風も冷ややか。
会場に入ると、驚いたことに、すでに大勢の見物客がいた。

どうやら、中国か台湾からの観光団のようだ。
賑やかに、中国語が館内に響く。
水槽の中には、真っ白な巨体のイルカの仲間、ベルーガがいる。
北海に住むからなのだろうか、白熊のように白い。
やがて、スタッフの指示で、様々な演技を始めた。
スタッフは笑顔いっぱい。
鴨川シーワールド独特の話し振りで、芸の説明をする。

鯨の仲間、イルカ族たちは、独特のエコロケーション(反響定位)能力を持つ。
頭部から音波を出し、
反射波を捕らえて周囲の状況を判断する、様々な識別能力を持つ。
スタッフが三角や四角の札を見せると、正確に識別する。
やがて、スタッフの一人が潜水服姿で登場した。
まるで小人のようで、ベルーガの巨躯が引き立つ。
やがて、20分ほどでパフォーマンスは終わった。

マリンシアターを出て、
昨日見たシャチのパフォーマンスが始まるオーシャンスタジアムへ。
観光団とともにスタジアムへぞろぞろと歩く。
スタジアムには、すでに、かなりの見物客がいた。
空いている席に座る。
さらに、旅行会社の旗を持った、
添乗員に導かれた観光客で、スタジアムは埋まってきた。

旗には中国語やハングル文字が書かれていた。
パフォーマンスの開始時間は昨日見た時と同じ。
スタッフも同じで、昨日とまったく同じパフォーマンスが始まった。
展開を知っている我々、
パフォーマンスの流れが分かるので、それもまた楽しい。
そして、パフォーマンスは予定通り終わった。

セイウチ
いよいよ、鴨川シーワールドに別れを告げて、
天津小港・小湊山・誕生寺へ向かった。
国道を北上して、1時間ほどで誕生寺に到着した。
そして、ぐ隣接した、天津小港港から遊覧船に乗り鯛の浦へ。
船着場で少し時間待ちのあと乗船。

ホテルの玄関
すると、小さな遊覧船は、すぐに出航した。
波は思いのほかかなり高く、船は大きく揺れる。
天津小港の街は遠ざかり、
小高い山々は雨に濡れ、山々に木々は若葉色。
やがて、沖合いの岩礁に、小さな朱色の鳥居が見える。
土地の漁師たちが尊崇する神さまが宿る赤鳥居の弁天様だ。

鯛の浦
そして、さらに進んだところで、船は止まった。
船室の窓を引き開け、すぐ下の海を見れば、
無数の鯛が群がるように泳いでいる。
日蓮上人がこの地で誕生した時、
この海の鯛が、輝くほどに飛び跳ね群れ泳いだ。
その時以来、土地の漁師たちは、ここの鯛を取ることを止めた。
鯛は日蓮上人の化身。
やがて、鯛の群棲する鯛の浦は聖地となり、群泳する鯛は崇敬を集めた。

遊覧船の船内
大正11年3月、国の天然記念物に指定された。
そして、停止していたエンジン音が復活。
沖合いを後に、港へ向かう。
未だ空に陽が照ることは叶わず、海は暗いエメラルド色で、風は冷たい。
20分ほどの鯛の浦めぐりを終え港へ到着。
船着場を出て、2分ほどで誕生寺最古建造物・仁王門 へ。

月曜日の昼時、山内には人はまばらだった。
さほど広くない山内の石の参道を進み、大きな香炉にお線香を焚く。
そして、本堂へ。
木の階段を上り、お賽銭をあげ手を合わせる。
本堂の隅、熟年の男女が二人、
折りたたみ椅子に座り、瞑目しながらお経をあげていた。
日蓮宗の熱心な信者なのだろう。

誕生寺の仁王門
やがて、遠くで、団扇太鼓を打ち鳴らす音が山内に響き渡る。
目をやれば、経文の刷り込まれた、
白い行衣に襷をかけた一団がこちらに向かって来る。
太鼓の音はかなり激しく迫力がある。
先導する僧侶、後方を守る僧侶。
脇に位置する僧侶達が太鼓を激しく打ち鳴らす。

誕生寺の本堂
やがて、本堂の階段前で停まった。
すると、本堂から、誕生寺の執事長が登場して挨拶を始めた。
まずは、丁重な労いの言葉。
そして、今日5月12日が日蓮宗にとって、大切な日であることを語り始めた。
私達が訪ねた日は、日蓮上人が12歳の時、
出家得度のため、清澄山へ修行に旅立った日だったのだ。
その日に、我々が誕生寺をお参りしたのも何かの縁か。
神妙に、執事長のお言葉に聞き入る。

20分ほどで、執事長の挨拶が終わり、一団も宿舎の方へ。
我々も、参道を戻り山門を潜り、駐車場へ。
途中、門前の売店のお婆ちゃんに捕まり、土産物を買わされてしまった。
80過ぎのお婆ちゃん、仕事への熱意が伝わる。
些細な買い物、応えてあげたら、気持ちがよかった。
「ありがとうございました」と言った時の、お婆ちゃんの笑顔が素敵だった。
鴨川、誕生時、房総の旅は終わった。